メルセデス・ベンツ C300アバンギャルドS(FR/7AT)【ブリーフテスト】
メルセデス・ベンツ C300アバンギャルドS(FR/7AT) 2008.11.18 試乗記 ……724万9250円総合評価……★★★★
日本発売から1年を迎えた今年7月、さらなるリファインを受けた「Cクラス」。安全装備やスポーティ性を高める装備などの追加された最新モデルに試乗した。
1年目よりも2年目
もし私が「メルセデス・ベンツC300」のオーナーだったとして、この最新版、いわゆる2009年モデルのC300に試乗したら、どれほど悔しい思いをすることか! そのくらい、最新のC300は魅力がアップしていたのだ。
輸入車、特にドイツ車は、マイナーチェンジというほど大規模でなくても、毎年のように細部の仕様を見直してくるのが一般的。エンジンのフィーリングや乗り心地など、カタログではわからない部分があきらかに良くなった、なんてことも多い。1年目よりも2年目、2年目よりも3年目がいいというのが“常識”になっている。
Cクラスも例外ではなく、2年目の「C300アバンギャルドS」は、これまで設定されていなかった「ダイナミックハンドリングパッケージ」が標準になり(「C200コンプレッサー」と「C250」には「アバンギャルドSパッケージ」とセットオプションとして用意)、「ふだん乗るには少し乗り心地が硬いなぁ」と感じていた人にはうれしい知らせとなるに違いない。
もともと性能に不満のないCクラスだけに、このダイナミックハンドリングパッケージはまさに鬼に金棒。できることなら、すべてのモデルで、しかも単独のオプションとして選べるとうれしいのだが……。「それは次のモデルイヤーで!」などといわず、ぜひ、早めの実現をお願いしたい。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
現行3代目「Cクラス」は、本国では2007年1月デビュー。日本では2007年6月に発売された。
1.8リッター直4+スーパーチャージャーを搭載するモデルが「C200コンプレッサー」(184ps)、2.5リッターV6(204ps)を積む「C250」、そして3リッターV6(231ps)を積む「C300」がラインナップ。「C200コンプレッサー」と「C250」には、それぞれ、スリーポインテッドスターをボンネット先端に立たせた「エレガンス」と、グリル内に大きなエンブレムを配したスポーティな「アバンギャルド」が用意される。「C300」は、通常のアバンギャルドよりさらにアグレッシブなAMGデザインのエクステリアをもつ「アバンギャルドS」となる。トランスミッションは、1.8リッターモデルが5段AT、その他は7段ATが組み合わされる。
2008年7月に装備の見直しがされ、安全装備の追加とスポーティ性を高める「ダイナミックハンドリングパッケージ」などが採用された。
(グレード概要)
テスト車「C300アバンギャルドS」は、クラス最上級モデル。今回の追加装備は、「SRSニーバッグ」や急ブレーキ時に後続車の注意を喚起する「アダプティブブレーキライト」、走行状態に応じて照射範囲を変化させる「インテリジェントライトシステム」などが標準装備。また、運転操作をサポートする「パーキングアシストリアビューカメラ」も採用された。
Sパッケージ装着車は、「ダイナミックハンドリングパッケージ」が標準装備され、運転状況や路面状況に応じたセッティング(ダンパー減衰力の電子制御、変速スピードやエンジン特性のスイッチ切替え)ができるようになった。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
旧型とは打って変わり、直線的なデザインが特徴のインテリア。すっきり、整然としたレイアウトには好感が持てるが、ダッシュボードの質感などは、ライバルのアウディに一歩引けを取る印象だ。ベーシックな「C200コンプレッサー」はともかく、700万円弱の上級グレードなら、もう少し気の利いた演出がほしいところ。
メーター部はC300アバンギャルドS専用にシルバーのパネルが施され、スポーティな気分を盛り上げてくれる。センターに速度計とインフォメーションディスプレイ、右に回転計、左には燃料計と水温計を配置。回転計を囲むリングに刻まれる目盛りが、回転計の目盛りと一致しないのが見にくく、気になった。
オーディオやHDDナビゲーションは全グレードに標準装着される。センターコンソールのコマンドコントローラーはとくに慣れを必要としなくても使えて便利。
(前席)……★★★★
上級グレードだけに本革のメモリー付きパワーシートを標準装着。しかもアバンギャルドS仕様ということで、スポーツシートに格上げである。サイドサポートが大きめで、脇のあたりをしっかりと支える印象だが、とくに窮屈な感じはなかった。
ステアリングホイールにはパドルシフトが付き、センターコンソールのスイッチでマニュアルモードを選ぶとパドル操作が作動する。オートマチックモードでもパドルを操作すればシフトレンジ(ギアの上限)を変更できるので、一時的にレンジを変えたいときには便利だ。ステアリングコラムは電動でチルト&テレスコピック調整が可能で、適切なドライビングポジションが得られる。
(後席)……★★★
前席の座面が上がっていればいいが、一番下のポジションだと、後席乗員の爪先がシート下に入らない。後席にゲストを招き入れるときには注意が必要だ。前席座面を上げてもらえば、自然な位置に足を置くことができるし、膝のまわりも余裕は十分。頭上のスペースも申し分ない。乗り心地は、多少上下の動きが気になるものの、おおむね快適である。
(荷室)……★★★★
導入時にはなかったが、1年目の途中から分割可倒式リアシートのオプションがカタログに記されるようになった(それまでは“カタログ非掲載オプション”だった)。試乗車にも装着されていたが、いざというときのことを考えると、オーダーしておきたいオプションである。これにより、2m弱の長尺物を積み込むことが可能になるのだ。一方、後席を起こしたままの状態でも、奥行き100cm、幅100-120cm、高さ45cmのスペースはまずまずの広さを誇る。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
C300に搭載されるのは3リッターのV6エンジン。C250と比較して、27ps、5.6kgmアップの231ps、30.6kgmを誇る。それでいて、車両重量は20kgの増加に過ぎない。C250でも余裕があるだけに、さらに高性能なC300は、2000rpm以下の低回転からさらに豊かなトルクを発生し、スムーズさにも文句はない。7段ATのおかげか、排気量やパワーのわりに、燃費が悪くないのもうれしい点だ。
このV6エンジン、回しても楽しく、とくに3500rpm付近から5000rpmあたりまでの盛り上がりが印象的で、適度に聞こえてくるサウンドも心地よかった。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
導入直後にC300アバンギャルドSに試乗したときには、引き締まった足まわりがワインディングロードなどでは好ましい反面、一般道ではやや硬めで、もう少ししなやかだったらいいのに……という印象だった。ところが、「ダイナミックハンドリングパッケージ」を手に入れた最新のC300アバンギャルドSは、そのときの印象がウソのように、しなやかな乗り心地を手に入れていたのだ。
もちろんこれは電子制御ダンピングシステムによるところが大きく、ノーマルとスポーツの2モードのうち、ノーマルを選択しておけば、快適さを重視するよう適宜ダンパーの減衰力を変えてくれるのだ。
一方のスポーツはハード寄りのプログラムで、ワインディングロードでは、最低地上高の低さとも相まってロール方向の安定感を高め、オン・ザ・レールのコーナリングを実現する。ただ、高速道路では、ノーマルではややソフトで、スポーツだと周期の短いピッチングが目立ち始めるので、その中間の設定がほしいところだ。それにしても、スポーティなサスペンションとタイヤ(前225/45R17、後245/40R17)を採用するC300アバンギャルドSをふだん快適に使えるというのは喜ばしいことだ。
(写真=峰昌宏)
【テストデータ】
報告者:生方聡
テスト日:2008年10月7日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2008年型
テスト車の走行距離:1966km
タイヤ:(前)225/45R17(後)245/40R17(いずれも、コンチネンタル スポーツコンタクト3)
オプション装備:ガラス・スライディングルーフ=19万4250円/分割式可倒シート=3万5000円
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:高速道路(7):山岳路(3)
テスト距離:291.3km
使用燃料:34リッター
参考燃費:8.56km/リッター

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
-
ホンダN-ONE e:G(FWD)【試乗記】 2025.12.17 「ホンダN-ONE e:」の一充電走行距離(WLTCモード)は295kmとされている。額面どおりに走れないのは当然ながら、電気自動車にとっては過酷な時期である真冬のロングドライブではどれくらいが目安になるのだろうか。「e:G」グレードの仕上がりとともにリポートする。
-
スバル・クロストレック ツーリング ウィルダネスエディション(4WD/CVT)【試乗記】 2025.12.16 これは、“本気仕様”の日本導入を前にした、観測気球なのか? スバルが数量限定・期間限定で販売した「クロストレック ウィルダネスエディション」に試乗。その強烈なアピアランスと、存外にスマートな走りをリポートする。
-
日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション/ルークスX【試乗記】 2025.12.15 フルモデルチェンジで4代目に進化した日産の軽自動車「ルークス」に試乗。「かどまる四角」をモチーフとしたエクステリアデザインや、リビングルームのような心地よさをうたうインテリアの仕上がり、そして姉妹車「三菱デリカミニ」との違いを確かめた。
-
アストンマーティン・ヴァンテージ ロードスター(FR/8AT)【試乗記】 2025.12.13 「アストンマーティン・ヴァンテージ ロードスター」はマイナーチェンジで4リッターV8エンジンのパワーとトルクが大幅に引き上げられた。これをリア2輪で操るある種の危うさこそが、人々を引き付けてやまないのだろう。初冬のワインディングロードでの印象を報告する。
-
BMW iX3 50 xDrive Mスポーツ(4WD)【海外試乗記】 2025.12.12 「ノイエクラッセ」とはBMWの変革を示す旗印である。その第1弾である新型「iX3」からは、内外装の新しさとともに、乗り味やドライバビリティーさえも刷新しようとしていることが伝わってくる。スペインでドライブした第一報をお届けする。
-
NEW
フォルクスワーゲンTロックTDI 4MOTION Rライン ブラックスタイル(4WD/7AT)【試乗記】
2025.12.20試乗記冬の九州・宮崎で、アップデートされた最新世代のディーゼルターボエンジン「2.0 TDI」を積む「フォルクスワーゲンTロック」に試乗。混雑する市街地やアップダウンの激しい海沿いのワインディングロード、そして高速道路まで、南国の地を巡った走りの印象と燃費を報告する。 -
NEW
失敗できない新型「CX-5」 勝手な心配を全部聞き尽くす!(後編)
2025.12.20小沢コージの勢いまかせ!! リターンズ小沢コージによる新型「マツダCX-5」の開発主査へのインタビュー(後編)。賛否両論のタッチ操作主体のインストゥルメントパネルや気になる価格、「CX-60」との微妙な関係について鋭く切り込みました。 -
NEW
フェラーリ・アマルフィ(FR/8AT)【海外試乗記】
2025.12.19試乗記フェラーリが「グランドツアラーを進化させたスポーツカー」とアピールする、新型FRモデル「アマルフィ」。見た目は先代にあたる「ローマ」とよく似ているが、肝心の中身はどうか? ポルトガルでの初乗りの印象を報告する。 -
NEW
谷口信輝の新車試乗――ポルシェ911カレラT編
2025.12.19webCG Movies「ピュアなドライビングプレジャーが味わえる」とうたわれる「ポルシェ911カレラT」。ワインディングロードで試乗したレーシングドライバー谷口信輝さんは、その走りに何を感じたのか? 動画でリポートします。 -
NEW
ディーゼルは本当になくすんですか? 「CX-60」とかぶりませんか? 新型「CX-5」にまつわる疑問を全部聞く!(前編)
2025.12.19小沢コージの勢いまかせ!! リターンズ「CX-60」に後を任せてフェードアウトが既定路線だったのかは分からないが、ともかく「マツダCX-5」の新型が登場した。ディーゼルなしで大丈夫? CX-60とかぶらない? などの疑問を、小沢コージが開発スタッフにズケズケとぶつけてきました。 -
EUが2035年のエンジン車禁止を撤回 聞こえてくる「これまでの苦労はいったい何?」
2025.12.19デイリーコラム欧州連合(EU)欧州委員会が、2035年からのEU域内におけるエンジン車の原則販売禁止計画を撤回。EUの完全BEVシフト崩壊の背景には、何があったのか。欧州自動車メーカーの動きや市場の反応を交えて、イタリアから大矢アキオが報告する。





































