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【スペック】ワゴンRスティングレーTS(右):全長×全幅×全高=3395×1475×1675mm/ホイールベース=2400mm/車重=880kg/駆動方式=FF/0.66リッター直3DOHC 12バルブターボ(64ps/6000rpm、9.7kgm/3000rpm)/価格=155万4000円(テスト車=161万7000円/ESP=6万3000円)

スズキ・ワゴンR FXリミテッド(FF/CVT)/スティングレーTS(FF/CVT)【試乗速報(前編)】

大きな存在(前編) 2008.10.20 試乗記 島下 泰久 スズキ・ワゴンR FXリミテッド(FF/CVT)/スティングレーTS(FF/CVT)
……118万1250円/161万7000円

日本で最も売れているクルマ「ワゴンR」。膨大なユーザーを抱えるこのクルマの、フルモデルチェンジの狙いはなにか? そしてそれは果たせたのか? 2つのグレードに乗って確かめた。
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機能重視は変わらない

いつにも増して鼻息荒く見える開発陣の話によれば、軽自動車の王者たる「スズキ・ワゴンR」の新型が目指したのは、端的に言えば「道具」から「乗用車」への進化を果たすことだという。特に重視されたのは、クオリティアップと快適性の向上だ。

基本となるフォルムは大きくは変わっていない。シルエットだけでワゴンRだと認識することは難しくはないはずだ。しかし、よくよく見てみると、シンプル志向だった先代とは一転、そのスタイリングは細部まで凝ったもので、ディテールも単純に継承された部分は少ない。たとえばサイドビュー。6ライトは踏襲されていない。これはホイールベースが40mm伸び、そのぶん前後ドアを大きくできたから。この一例を見てもわかるように、表面的にそれらしく見せることより、あくまで機能を重視する姿勢にこそワゴンRらしさを込めているわけだ。しかしそれをきっちりワゴンRに見せ、しかも乗用車的な雰囲気を強めるというのはたやすい話ではなかったはず。デザイナーにとっては、難しくも腕の振るいがいのある仕事だったに違いない。

しかし、先代後期に登場し、そのまま「RR」グレードに代わるスポーティ版に位置づけられた「スティングレー」に関しては、正直評価は複雑だ。何しろワゴンRのアイデンティティである縦型ヘッドランプをあっさり捨ててしまったのだから。先代のスティングレーは、「ワゴンRはイヤだ」という人にアピールできたからというが………逆にそれゆえに買わなかった人の声も聞いてみたいところではある。

 
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「スティングレー」のインパネ。
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本気を感じた

そんなモヤモヤ感はあるものの、たしかにどこを見ても、つくりに“いいモノ感”が漂っていることは間違いない。しかも、見映えだけでなく使い勝手もよく練られている。

たとえば前席シートはスライド量が増加し、位置調整がさらに容易に。前述したホイールベースの延長は、具体的には後輪を隅に追いやることで実現されており、その分、室内長は105mmも拡大している。それを活かして、大型化された後席を一番後ろまでスライドさせれば広い足元スペースの確保が可能。フロアをフラット化し、低めたステップとの段差がほぼ解消されたことと併せて、乗降性と快適性を高めている。

一方、シートを最前位置まで出せば、従来同等の荷室容量を稼ぎ出すこともできる。目を見張ったのは、その際にフロアとシートの隙間を埋めるためのフロアボードに、しっかり剛性が確保されていたこと。失礼な言い方ではあるが、こういうところまでケチらずつくられているところに、スズキの本気を感じた。

いよいよスティングレーに乗り込み、ステアリングホイールを握る。
と、これまた仕立ては上々のインストゥルメントパネルが、やや圧迫感を与えるのが気になる。中央上面がこんもりと盛り上がっているのが一番の原因。ウォークスルーを実現するためセンター部分の嵩が増して、しかもインパネシフト化でオーディオユニットなどを高い位置に置かなければならなかったからというが、小柄な方にとっては視界にも影響するだろうし、なにより心理的にちょっと重たく思えた。

「FXリミテッド」の前席。「スティングレー」に採用されるチルトステアリング、シートリフターは付かない。
「FXリミテッド」の前席。「スティングレー」に採用されるチルトステアリング、シートリフターは付かない。 拡大
「FXリミテッド」の後席。
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ロール感が欲しい

しかしながら走りのクオリティは間違いなく向上している。最高出力64psのターボエンジンに組み合わされたCVTは、低中速域ではCVT特有のエンジン回転だけ先に上昇していく感じが抑えられていて、違和感なく、軽快な走りを可能にしている。一方、全開に近い加速の際にはCVTの特性をフルに活用。効率良くパフォーマンスを引き出すことができる。

贅沢にも採用されたパドルスイッチを使えば、疑似シーケンシャルモードも使用可能。まあ、これは雰囲気だけでレスポンスもさほど速くなく、機能的な意味はあまりない。Dレンジのままでもパドルは有効で、一定時間でDレンジに復帰する機能が備わるだけに、積極的にエンジンブレーキを使いたい時には重宝するかもしれない。

ステアリングは驚くほどレスポンスが良い。それでいて車体がグラッと急に傾くことなく、しっかりそれに追従して曲がっていくことができる。ただし、ちょっとやり過ぎという気もしなくはない。これまたスズキとしては異例の専用開発タイヤを奢ったことで気合いが入ったのかもしれないが、ウェット路面まで含めたドライバビリティを考えると、もう少しロール感を残しても良かったのではないだろうか。それは終始小刻みな上下動を伝える乗り心地を改善する意味でもだ。

続いてハンドルを握った、おそらくは一番の売れ筋であろうグレード「FXリミテッド」については、後編でお伝えする。
(後編へ続く)

(文=島下泰久/写真=荒川正幸)

 
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スティングレーTSの0.66リッター直3ターボエンジン。
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島下 泰久

島下 泰久

モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。

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