アウディA3スポーツバック 1.4TFSI(FF/7AT)/2.0TFSIクワトロ(4WD/6AT)【試乗速報】
進化は見た目以上 2008.10.10 試乗記 アウディA3スポーツバック 1.4TFSI(FF/7AT)/2.0TFSIクワトロ(4WD/6AT) ……366.0万円/510.0万円存在感の増したフロントマスクもさることながら、エンジンとトランスミッションが改められより進化した「A3スポーツバック」。2種類のエンジンの走りと乗り心地を試す。
すべて「直噴ターボ+Sトロニック」化
ヘッドライトにLEDポジショニングランプを内蔵したり、テールランプに光ファイバーを利用するなどして、確かに、新しさをアピールはするものの、全体的にはマイナーチェンジ前のイメージを受け継いでいる最新の「A3スポーツバック」。マイチェン前モデルのオーナーもひと安心いうところだろうが、見た目とは裏腹に、中身の変更は意外に大きい。
その最たるものが新しいパワートレインだ。マイナーチェンジを境に、全グレードともエンジンは直噴ターボのTFSIに、トランスミッションはツインクラッチタイプのSトロニックに変更されているのだ。
ラインアップは、1.4リッターエンジンを搭載する「1.4TFSI」と1.8リッターの「1.8TFSI」、そして、2リッターの「2.0TFSIクワトロ」の3モデル。このうち、1.4TFSIと1.8TFSIには、高効率・軽量コンパクトな7段Sトロニックが組み合わされる。一方、2.0TFSIクワトロはこれまでと同じ6段Sトロニックを搭載しながら、4WDシステムを手に入れたことで、最上級モデルに生まれ変わっている。
エンジンとトランスミッションがこれだけ変われば、ビッグマイナーと呼んでも差し支えないだろう。さらに新しいA3スポーツバックでは、「TTシリーズ」に搭載される電子制御ダンピングシステム「アウディ マグネティックライド」をオプションとして設定したり、クワトロに用いるハルデックスカップリングを最新の第4世代にアップグレードするなど、注目すべき点は目白押し。そんなA3スポーツバックのなかから、1.4TFSIと2.0TFSIクワトロの2台を試乗会でチェックすることができた。
拡大
|
拡大
|
|
プレミアムなエコ・コンパクト
まずは1.4TFSIを試す。1.4リッターの直噴ターボにSトロニックの組み合わせは、事実上「フォルクスワーゲン・ゴルフTSIトレンドライン」と同じ燃費自慢のパワートレインだ。これを搭載する1.4TFSIは、300万円を切るエントリーモデルという位置づけ。しかしそこはさすがアウディ、廉価版という感じは全然しない。
もともとインテリアの質感が高いうえに、レザーステアリングやオートエアコンが備わるし、足もとにもアルミホイールがおごられるなど、上位グレードに引けを取らない装備内容を誇るからだ。
|
走らせた印象も、これまでの「アトラクション」グレード以上に“豪華”だ。マイチェン前の1.6リッターがやや頼りなかったのとは打って変わり、1.4TFSIエンジンは低回転でも自然吸気の2リッター級の余裕があり、7段Sトロニックと組み合わされて、発進、変速ともにスムーズ。街なかでも実に扱いやすい。
4000rpmを超えたあたりからは徐々に勢いが衰えてくるものの、あまり高回転まで引っ張らず、高めのギアを使うようにすれば、加速に不満は感じない。
さすがと思わされたのがA3スポーツバックの静粛性。以前、VWゴルフTSIトレンドラインを試乗したとき、ギアボックスが放つガチャガチャという音が気になったのだが、A3スポーツバックではそのあたりがうまく封じ込められていた。もともとA3スポーツバックのほうが遮音がいいのか、それともエントリーグレードといえども遮音材をケチらなかったのか理由はわからないが、カタログだけではわからない上質さがこのクルマにはあったのだ。
|
乗り心地は、205/55R16のP7が多少バタつくことはあるものの、サスペンションの動きはしなやかで、実に快適。高速の直進性やフラット感も申し分ない。ワインディングロードではノーズの軽さが軽快感につながっている。燃費も走りも質感もバランスよく手に入れた1.4TFSIは、プレミアム“エコ”コンパクトと呼びたいモデルである。
クワトロはよりスポーティに
カタログから姿を消した「3.2クワトロ」に代わり、A3スポーツバックの最上級モデルに昇格したのが「2.0TFSIクワトロ」だ。
エンジンはマイナーチェンジ前と基本的には変わらないが、28.6kgmの最大トルクをこれまでより100rpm低い1700rpmから発揮できるようになったのが細かな違い。しかし、一番の関心は、マイナーチェンジでFFからフルタイム4WDのクワトロに変わったことだ。これまでの「3.2クワトロSライン」(495万円)より56万円も安く手に入るようになったのだから!
さっそく走らせてみると、2000rpm以下でもトルク豊かな2.0TFSIエンジンのおかげで、動き出しにもっさりした印象はなく、FF時代に比べて70kgの重量増も気にならない。それどころか、発進時には多少後ろから押される感じもあって、早くもクワトロの恩恵が見られるのだ。
走り出せば、強力なトルクが持続するエンジン特性のおかげで、どこからでも加速が可能。しかも、フルタイム4WDらしく、ドライ路面ならパワーを持て余すこともない。1.4TFSIと違い、トップエンドまで気持ちよく吹け上がるのも2.0TFSIの魅力である。
そんなスポーツ系モデルをワインディングロードに持ち込めば、締め上げられたサスペンションがロールやピッチングを抑え込み、ベーシックモデルとは一線を画する軽快さを示す。出口が見えたところでアクセルを踏み込むと、やはりここでも後輪が押し出す感覚をともないながら、コーナーを駆け抜けていく。というわけで、FFの時代よりもさらにスポーティさに磨きがかかった2.0TFSIクワトロなのである。
いまや日本で販売されるアウディの4台に1台がこのクルマというほど、高い人気を誇るA3スポーツバックは、マイナーチェンジによりさらに魅力的に進化を遂げ、これからもアウディのエントリーモデルとして大きく貢献するのは確実のようだ。
(文=生方聡/写真=峰昌宏)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
-
アウディSQ5スポーツバック(4WD/7AT)【試乗記】 2025.11.8 新型「アウディSQ5スポーツバック」に試乗。最高出力367PSのアウディの「S」と聞くと思わず身構えてしまうものだが、この新たなSUVクーペにその心配は無用だ。時に速く、時に優しく。ドライバーの意思に忠実に反応するその様子は、まるで長年連れ添ってきた相棒かのように感じられた。
-
MINIジョンクーパーワークスE(FWD)【試乗記】 2025.11.7 現行MINIの電気自動車モデルのなかでも、最強の動力性能を誇る「MINIジョンクーパーワークス(JCW)E」に試乗。ジャジャ馬なパワートレインとガッチガチの乗り味を併せ持つ電動のJCWは、往年のクラシックMiniを思い起こさせる一台となっていた。
-
プジョー2008 GTハイブリッド(FF/6AT)【試乗記】 2025.11.5 「プジョー2008」にマイルドハイブリッドの「GTハイブリッド」が登場。グループ内で広く使われる最新の電動パワートレインが搭載されているのだが、「う~む」と首をかしげざるを得ない部分も少々……。360km余りをドライブした印象をお届けする。
-
2025ワークスチューニンググループ合同試乗会(後編:無限/TRD編)【試乗記】 2025.11.4 メーカー系チューナーのNISMO、STI、TRD、無限が、合同で試乗会を開催! 彼らの持ち込んだマシンのなかから、無限の手が加わった「ホンダ・プレリュード」と「シビック タイプR」、TRDの手になる「トヨタ86」「ハイラックス」等の走りをリポートする。
-
スズキ・アルト ラパン ハイブリッドX(FF/CVT)【試乗記】 2025.11.3 スズキの「アルト ラパン」がマイナーチェンジ。新しいフロントマスクでかわいらしさに磨きがかかっただけでなく、なんとパワーユニットも刷新しているというから見逃せない。上位グレード「ハイブリッドX」の仕上がりをリポートする。
-
NEW
ボンネットの開け方は、なぜ車種によって違うのか?
2025.11.11あの多田哲哉のクルマQ&Aクルマのエンジンルームを覆うボンネットの開け方は、車種によってさまざま。自動車業界で統一されていないという点について、エンジニアはどう思うのか? 元トヨタの多田哲哉さんに聞いてみた。 -
NEW
ボルボEX30クロスカントリー ウルトラ ツインモーター パフォーマンス(4WD)【試乗記】
2025.11.11試乗記ボルボの小型電気自動車(BEV)「EX30」にファン待望の「クロスカントリー」が登場。車高を上げてSUVっぽいデザインにという手法自体はおなじみながら、小さなボディーに大パワーを秘めているのがBEVならではのポイントといえるだろう。果たしてその乗り味は? -
メルセデス・ベンツGLB200d 4MATICアーバンスターズ(4WD/8AT)【試乗記】
2025.11.10試乗記2020年に上陸したメルセデス・ベンツの3列シート7人乗りSUV「GLB」も、いよいよモデルライフの最終章に。ディーゼル車の「GLB200d 4MATIC」に追加設定された新グレード「アーバンスターズ」に試乗し、その仕上がりと熟成の走りを確かめた。 -
軽規格でFR!? 次の「ダイハツ・コペン」について今わかっていること
2025.11.10デイリーコラムダイハツがジャパンモビリティショー2025で、次期「コペン」の方向性を示すコンセプトカー「K-OPEN」を公開した。そのデザインや仕様は定まったのか? 開発者の談話を交えつつ、新しいコペンの姿を浮き彫りにしてみよう。 -
ホンダ・シビック タイプRレーシングブラックパッケージ(後編)
2025.11.9ミスター・スバル 辰己英治の目利きあの辰己英治氏が、“FF世界最速”の称号を持つ「ホンダ・シビック タイプR」に試乗。ライバルとしのぎを削り、トップに輝くためのクルマづくりで重要なこととは? ハイパフォーマンスカーの開発やモータースポーツに携わってきたミスター・スバルが語る。 -
アウディSQ5スポーツバック(4WD/7AT)【試乗記】
2025.11.8試乗記新型「アウディSQ5スポーツバック」に試乗。最高出力367PSのアウディの「S」と聞くと思わず身構えてしまうものだが、この新たなSUVクーペにその心配は無用だ。時に速く、時に優しく。ドライバーの意思に忠実に反応するその様子は、まるで長年連れ添ってきた相棒かのように感じられた。






























