ボルボC30 グラフィックカー(FF/5AT)【試乗記】
外見は「?」、中身は「○」 2008.08.15 試乗記 ボルボC30 グラフィックカー(FF/5AT)試乗会の帰り際、ボルボ・カーズ・ジャパン広報部の人と目を合わせることができず、逃げるように試乗会会場を立ち去った。それはなぜかと言いますと……。
反響次第で日本へも導入
レインボー、水玉、蝶々にタータンチェック……。試乗会会場には個性的なカラーリングが施されたボルボC30が6台並んでいて、すわ限定カラー登場かと思えばさにあらず。
これは「C30グラフィックカー」と呼ばれる仕様で、ボルボC30のボディにオリジナル柄の粘着性フィルムを貼ったもの。本国スウェーデンのディーラーが本年4月に発売したものが好評だったのを受け、日本でもとりあえず6台を製作したのだという。本国では20種類のデザインを用意し、センタースタックやインテリアとの組み合わせで、1万2314通りのコーディネイトが可能とのこと。日本で製作した6種類は、本国の20種類のデザインの中から「日本のユーザーにあいそうなもの」を選んだとの由。
「日本でも売るのですか?」という問いに対する答えは、「みなさんに見ていただき、その反響によっては日本導入も考えたい」。では、その反響やいかに?
3M製のフィルムはなかなか巧妙にできていて、遠目にはオリジナル塗装のように見える。ただしドアやボンネットを開けると“地肌”の色はまんま残っているため、オリジナルペイントとフィルムの色が違うことがバレバレ。大らかなスウェーデンのみなさんはそんな些細なことは気にしないのかもしれないけれど、自分は小さなことにこだわるタイプなので「むむむ」と思った。
このフィルムは2年間の保証付きで、製造元の3Mは3年程度なら使用に耐えると豪語しているとか。デザインに飽きたら剥がすことも可能で、フィルムを貼っておくことでボディの保護にもなるという。ちなみに、フィルムの材料費は15万円、工賃は20〜25万円、丸一日で完成するという。
見られて「ドキドキ」、走って「ホッ」
ビジュアル的に一番インパクトがありそうな、黄色いボディに紺色のチェックが描かれたモデルに試乗する。ベースとなっているのは、2.4リッターのNA5気筒エンジンを積む「C30 2.4i SE」。
外観こそド派手だけれど、乗り込んでしまえばチェック柄は見えない。滑らかな曲線を描くウッドのセンタースタックやたっぷりとしたサイズの掛け心地抜群のシートなど、見ても触っても上品でセンスがいいC30のインテリアに感心する。C30(というか、最近のボルボ)のインテリアを特徴づけるセンタースタックはアルミに限ると思っていたけれど、ウッドもなかなかいい味が出ていると思った。
通りに出て信号待ちをしていると、周囲からじろじろ見られて自分が“色物”に乗っていることを意識させられる。見られているとドキドキするけれど、走り出してスピードを上げると気持ちは落ち着く。C30は小柄なサイズに似合わない、落ち着いたフィーリングが持ち味なのだ。
C30の乗り心地は、「硬い」と「しっかりしている」の中間ぐらい。市街地で乗っていると、不快ではないけれど割と路面からのコツコツを拾うタイプだ。けれど、スピードを上げるとアラ不思議、穏やかで信頼できるマナーの持ち主に変身する。コンパクトなボディでありながら、ハイスピードで長距離を移動するような場面でドライバーはリラックスさせてくれるのだ。
2.4リッターのエンジンと5ATを組み合わせたパワートレインも、滑らかかつキメ細かいセッティングが施されている。ステアリングホイールを握っていると、ドライバーは穏やかな心持ちになる。ついでに書けば、チョイ乗りした230psのターボユニット搭載の好戦的なT-5よりも、素朴な雰囲気のNAモデルのほうが数段“らしい”と思った。
ミルクティーの美味しい飲み方
C30はボルボのラインナップで最小のモデルであるけれど、ロイヤルミルクティーのように優しくて滋味深い味わいは大型モデルと共通だ。むしろ、ボディが小さいことでボルボの魅力がぎゅっと凝縮されている感すらある。昨年の秋に日本へ導入されたC30、久しぶりに乗ってみると、カッコもドライブフィールも好感が持てる佳作だった。
けれども、クルマから降りると凄いカラーリングが目に飛び込んでくる。デザイン先進国のスウェーデンでウケているのだからこれがカッコいいんだ、と思い込もうとしたけれど、無理でした。アイディアとしては面白いけれど、自分のクルマだったら……。
だから、「反響次第では日本への導入も考える」と言う広報の人と目を合わせないように、試乗会会場を後にした。自分、気が小さいものであの時は面と向かって言えませんでしたが、ここに書きます。
多分、日本ではウケないと思います。
ま、フィルムのデザインを自分の好みにできるのであれば、可能性はあるのかもしれない。とはいえ、美味しいロイヤルミルクティーはケバケバしい容器よりも、シンプルなボーンチャイナで飲んだほうがおいしいような気がするのだ。
(文=サトータケシ/写真=荒川正幸)
拡大
|
|

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
-
日産エクストレイルNISMOアドバンストパッケージe-4ORCE(4WD)【試乗記】 2025.12.3 「日産エクストレイル」に追加設定された「NISMO」は、専用のアイテムでコーディネートしたスポーティーな内外装と、レース由来の技術を用いて磨きをかけたホットな走りがセリングポイント。モータースポーツ直系ブランドが手がけた走りの印象を報告する。
-
アウディA6アバントe-tronパフォーマンス(RWD)【試乗記】 2025.12.2 「アウディA6アバントe-tron」は最新の電気自動車専用プラットフォームに大容量の駆動用バッテリーを搭載し、700km超の航続可能距離をうたう新時代のステーションワゴンだ。300km余りをドライブし、最新の充電設備を利用した印象をリポートする。
-
ドゥカティXディアベルV4(6MT)【レビュー】 2025.12.1 ドゥカティから新型クルーザー「XディアベルV4」が登場。スーパースポーツ由来のV4エンジンを得たボローニャの“悪魔(DIAVEL)”は、いかなるマシンに仕上がっているのか? スポーティーで優雅でフレンドリーな、多面的な魅力をリポートする。
-
ランボルギーニ・テメラリオ(4WD/8AT)【試乗記】 2025.11.29 「ランボルギーニ・テメラリオ」に試乗。建て付けとしては「ウラカン」の後継ということになるが、アクセルを踏み込んでみれば、そういう枠組みを大きく超えた存在であることが即座に分かる。ランボルギーニが切り開いた未来は、これまで誰も見たことのない世界だ。
-
アルピーヌA110アニバーサリー/A110 GTS/A110 R70【試乗記】 2025.11.27 ライトウェイトスポーツカーの金字塔である「アルピーヌA110」の生産終了が発表された。残された時間が短ければ、台数(生産枠)も少ない。記事を読み終えた方は、金策に走るなり、奥方を説き伏せるなりと、速やかに行動していただければ幸いである。
-
NEW
トヨタ・アクアZ(FF/CVT)【試乗記】
2025.12.6試乗記マイナーチェンジした「トヨタ・アクア」はフロントデザインがガラリと変わり、“小さなプリウス風”に生まれ変わった。機能や装備面も強化され、まさにトヨタらしいかゆいところに手が届く進化を遂げている。最上級グレード「Z」の仕上がりをリポートする。 -
NEW
レクサスLFAコンセプト
2025.12.5画像・写真トヨタ自動車が、BEVスポーツカーの新たなコンセプトモデル「レクサスLFAコンセプト」を世界初公開。2025年12月5日に開催された発表会での、展示車両の姿を写真で紹介する。 -
NEW
トヨタGR GT/GR GT3
2025.12.5画像・写真2025年12月5日、TOYOTA GAZOO Racingが開発を進める新型スーパースポーツモデル「GR GT」と、同モデルをベースとする競技用マシン「GR GT3」が世界初公開された。発表会場における展示車両の外装・内装を写真で紹介する。 -
バランスドエンジンってなにがスゴいの? ―誤解されがちな手組み&バランスどりの本当のメリット―
2025.12.5デイリーコラムハイパフォーマンスカーやスポーティーな限定車などの資料で時折目にする、「バランスどりされたエンジン」「手組みのエンジン」という文句。しかしアナタは、その利点を理解していますか? 誤解されがちなバランスドエンジンの、本当のメリットを解説する。 -
「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」の会場から
2025.12.4画像・写真ホンダ車用のカスタムパーツ「Modulo(モデューロ)」を手がけるホンダアクセスと、「無限」を展開するM-TECが、ホンダファン向けのイベント「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」を開催。熱気に包まれた会場の様子を写真で紹介する。 -
「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」の会場より
2025.12.4画像・写真ソフト99コーポレーションが、完全招待制のオーナーミーティング「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」を初開催。会場には新旧50台の名車とクルマ愛にあふれたオーナーが集った。イベントの様子を写真で紹介する。









