フォードSUVフルラインナップ試乗会【試乗記】
乗れるうちに乗っておけ! 2008.08.07 試乗記 フォード・エクスプローラーV8エディバウアー(4WD/6AT)/エクスプローラー・スポーツトラックXLT(4WD/5AT)/エスケープXLT(4WD/4AT)……531万4900円/403万8600円/259万9350円
ガソリン高を理由に苦戦が伝えられる北米の大型SUV。しかし、そのクルマ本来の持ち味を忘れちゃいないか? 得意のオフロードコースで魅力を探ってみた。
開き直ってるわけじゃない
ビッグ3の日本法人は、どこも腹をくくったビジネスを展開している。その姿勢はまるで「じゃ、路上を走るクルマが燃費自慢のいい子ちゃんばかりになってもいいんですか?」と言わんばかり。そう言われたら我々としても「それはちょっと寂しいかも……」と答えざるを得ない。
彼らは日本でベストセラーを目指すつもりはない。数は少なくとも、いつの世も必ず存在する需要にしっかり応えていこうとしているのだ。だからこそ、このご時世にもかかわらず、大きなボディを大排気量で動かすモデルを選んで輸入する。
その戦略を最も明確に打ち出すのがフォード・ジャパンだ。同社は昨年だったか「フォーカス」や「フィエスタ」といったヨーロッパ製モデルの輸入をやめた。代わりに「エクスプローラー」「エクスプローラー・スポーツトラック」「エスケープ」というSUVの3モデルと「マスタング」に絞って輸入する。
一見、開き直りにも見えるこの戦略は、フォーカスやフィエスタには日欧のガチンコライバルがひしめき合うが、V8を積むわりに安価なエクスプローラーやマスタングには競合車種が少ないという、実は周到な計算によるものだ。
そのフォード・ジャパンが、SUV3モデルの試乗会を伊豆のオフロードコースで開いた。コース設定は、あたかも「あなたのクルマでこんなところ走れますか?」とでも言いたげ。その挑発的な提案に、ここはひとつ思い切りのっかって、まずはエスケープでコースインした。
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ハッタリなしの走破性
現行エスケープは台湾で生産されるアジア市場専用モデルで、アメリカ本国仕様とは世代が異なる。試乗したのは2.3リッター直4を積むXLT。基本設計を日本のマツダと共同開発しただけあって、ハンドルが右というだけの日本仕様ではなく、自然なドライビングポジションを得られる。
通常はFFで走り、前輪のスリップを感知すると後輪にもトルクを配分するオンデマンド4WDシステムを採用する。コース途中に設けられた結構な凹凸を難なく……とは言わないが、なんとか走破した。
こう書くと悪路走破性にネガティブな印象を抱くかもしれないが、この日のコースはより本格的な悪路走破性を持つエクスプローラーに合わせた設定。そもそも二輪駆動車なら足を踏み入れる気にもならない難度だったということを書き添えておきたい。
エスケープもよいが、この日の本命はエクスプローラーとエクスプローラー・スポーツトラック。最初に試乗した4.6リッターV8を積むエクスプローラー・エディバウアーは、エンジンをかけた瞬間に車内がかすかにブルッと震え、その直後からシュルシュル……とV8独特のアイドリング音を響かせる。これぞアメリカンSUVと一瞬ニヤけたが、ガソリン価格を考えてすぐに出発した。
エクスプローラーはいまやSUVでも珍しいフレームシャシーを採用する。モノコックだと乗り心地がよくて、フレームだと悪いという乗り心地に関する一般論があるが、それはあくまで一般論で、エクスプローラーには当てはまらない。むしろフレームだろうがチューニング次第で、オンロードの乗り心地をここまでよくできるという見本だ。
悪路では四輪独立のサスペンションがしっかり伸縮し、どのタイヤもおいそれとはトラクションを失わない。世の中には“悪路に強いSUV”と“悪路に強そうに見えるSUV”があるが、エクスプローラーは間違いなく前者だ。
使い切るよろこび
次に4リッターV6で試乗したスポーツトラックは、文字通りピックアップ・トラックだ。日本でもさすがにもう小型トラックと聞いて荷台にガラス戸を傾けて積む工務店のダットラを想像する人は減ったと思うが、トラックを普段乗りに使う文化が浸透していない日本(ていうか、そんなのアメリカだけだけど)では、下手な1000万円級輸入車よりも注目を集めるアイテムとなる。
加えて、ベースはエクスプローラーだから乗り心地は快適。もちろん、無理なく5人乗車が可能だ。
エクスプローラーと同じ本格的な4WDシステムを備えるが、ホイールベースが3mを超えるため、この日のようなモーグルコースには適していない。にもかかわらず、助手席のインストラクターは大きなこぶを乗り越えろと促す。
「いいんですか? 底をこすっちゃいますよ」と私。「いいんです。こするのはカバーですから」とインストラクター。
それならと、ギギギッと擦れる音を立てながらこぶを超えた。楽しい。バンパーは少しなら当ててもよいもの、アンダーカバーはこすってもよいものという、我々が忘れかけた“クルマを使い切る喜び”に包まれた。
わざわざピックアップを買うのだから、移動するだけじゃなく、クルマを最大限使い倒して楽しむべきなのだ。広大なベッド部分に遊び道具を満載すもよし、キャンピングカーを引っ張るもよし。車両価格398万円を高くするのも安くするのも使い方次第だと感じた。
“いい子”にはいつでもなれる
とはいえ――。
フォード3兄弟を楽しんだ数日後、米国内での日本車8社の今年7月の販売シェアがビッグ3を初めて上まわったという報道があった。アメリカでさえもが“いい子ちゃん”に乗り換え始めているのは紛れもない現実だ。
我々はこの先いつまで、いくらかの余計なコストをかける代わりに、移動の機能プラスアルファの楽しさを備えたクルマに乗ることができるのか。アメリカンSUVに興味をもて! とは言わない。ただ少しでも興味があるのなら、まだあるうちに乗っちゃうってのもありだとは思う。ま、こんな楽しい世界、そう簡単になくなるとは思わないが。
(文=NAVI塩見智/写真=郡大二郎)
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塩見 智
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