メルセデス・ベンツML320ブルーテック(4WD/7AT)【海外試乗記】
「ディーゼルにしては」とは言わない 2008.07.16 試乗記 メルセデス・ベンツML320ブルーテック(4WD/7AT)フェイスリフトとともに、クリーンディーゼル搭載モデルをラインナップに加えた「メルセデス・ベンツMクラス」の試乗会が北米で行われた。最大のトピックである尿素水を使った新技術「ブルーテック」を中心に新しいMクラスを紹介する。
乗用車で初めての技術
メルセデス・ベンツが、アメリカ市場でMクラス、GLクラス、そしてRクラスに超低排出ガス・ディーゼルを搭載する「ブルーテック」の販売を開始するというニュースは、我々日本のユーザーにとっても無視できない話題だ。なにしろ、2009年より全米50州で施行される排ガス規制「Tier2 Bin5」は、やはり来年施行の日本の「ポスト新長期」排ガス規制と並ぶ、非常に厳しい規制値をもつ。つまり全米50州で販売できるブルーテックモデルは、ここ日本にも大規模な改良なく導入できる可能性が高いのだ。
ディーゼル車にもガソリン車とまったく変わらないクリーン性を求める「Tier2 Bin5」をクリアするために、ML/G/R320ブルーテックが採用したのは、AdBlue(アドブルー)と呼ばれる尿素水によってディーゼルエンジンにとって最後にして最大の問題である排ガス中のNOxを処理する、ブルーテック・フェイズ2と呼ばれる技術である。一般に、2トン超級の大型車でポスト新長期規制をクリアするにはこれは必須と言われており、すでに商用車ではポピュラーな技術だが、乗用車への採用は初めてとなる。
AdBlueの消費量は、走行100kmにつき0.1リッター程度。タンクは約28リッターの容量を備えており、単純計算で2万8千kmごとの補充が必要となる。AdBlueが底をつくと排ガスのクリーン性が落ちるため、走行は制限される。北米仕様では規制により、最初は警告灯がつき、それ以降は距離10マイル以上の走行回数がカウントされ、20回でエンジンがかからなくなる。しかし大抵は2万8千kmの間、整備も点検もしないということはないだろうから、ほとんど問題はないだろう。日本でもAdBlue使用のクリーンディーゼルには、同様の車両規則が適用されそうだ。
静けさと滑らかさ
エンジン本体は、E320CDIに搭載されているV型6気筒3リッター直噴ディーゼルターボがベース。ただしブルーテック化にともなって、ピストン形状を変更し、圧縮比を17.7から16.5まで下げ、EGR(排ガス再導入)を増加し、インジェクター、ターボチャージャーなどを変更している。スペックは最高出力210ps/3400rpm、最大トルク55.1kgm/1600〜2400rpm。トランスミッションは7G-TRONICのみが組み合わされる。
その走りで印象的だったのは静けさと滑らかさだ。アクセルを踏み込むと力強いトルクを発生し、2トンを超える車体を軽々加速させるそのパワーユニットは、そのまま回転を高めていっても静粛性が抜群に高く、しかも伸びやかに加速していく。低速トルクの充実ぶりに、たとえばML350などと比べて明らかにアクセル開度が小さくて済むのも、そのひとつの要因だろう。「ディーゼルにしては……」というエクスキューズ付きではなく、純粋な意味でとても上質な乗り味に仕立てられている。
気持ちよいクルマに進化
ブルーテック搭載を機に、Mクラス自体、内外装の意匠変更などの小改良が行なわれたのだが、こうやって目に見える部分以外の進化こそ、実は著しいものがある。
エンジンの静粛性だけでなく、ロードノイズの進入も少なくなっており、乗り心地もしなやかさとフラット感がともに向上。ハンドリングは、普段は落ち着いているのにステアリング操作に対する応答性も決して悪くないという具合だ。登場当初から現行Mクラスの乗り味には一目置いているつもりだったが、正直言って、それがさらにここまで気持ち良いクルマに進化するとは思わなかった。
そんなわけで、新型Mクラス自体も楽しみではあるのだが、期待はやはりブルーテックだ。クリーン性も走りも文句なく、しかも燃費は200km以上におよぶ一般道での試乗で、ガロンあたり26.1マイル=リッターあたり約11.1kmという少食ぶりを見せつけてくれた。年頭にメルセデス・ベンツ日本のハンス・テンペル社長は、このML320ブルーテックの年内導入を目指すと発言している。現在軽油価格がガソリンを上回っているアメリカより、ここ日本でこそ、その真価は発揮されるはず。早期の販売開始を是非とも期待したい。
(文=島下泰久/写真=メルセデス・ベンツ日本)

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
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