第46回:八代亜紀はイタリアにもいるか?
大矢アキオが選ぶ「マイ・デコレーション選手権」
2008.06.21
マッキナ あらモーダ!
第46回:八代亜紀はイタリアにもいるか?大矢アキオが選ぶ「マイ・デコレーション選手権」
静香は今どこに?
日本には長年、芸能人アイテムをクルマに貼る風習がある。
たとえばボクが子供の頃、トラックドライバーの多くは八代亜紀のポスターをキャビンの中に貼っていたものだ。1990年代末には、工藤静香の顔のシルエットステッカーをリアウィンドウに張った自家用車がいたのを覚えている。2年ほど前には、山田優のブロマイドをフロントウィンドウに無数に貼り付けたクルマを都心で目撃した。
そうしたアイテムは、「クルマの買い替え」「アイドルが結婚した」「ドライバーにカノジョができた」等の理由が剥がすタイミングなのだろう。
ボクは、今でも中古車に工藤静香ステッカーが貼られていれば、それなりに珍重されていいと思うのだが、ダメだろうか。
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聖人+セクシー女優
今週は、クルマに施す簡易なデコレーションのお話である。
「デザインの国イタリアで、アイドルのステッカーをクルマにベタベタ貼り付ける習慣なんて、あるはずないゼ」と信じ込んでいるあなた、実はあるんです。
在住12年の筆者が辿り着いた結論として、その起源は「ベスパ・スクーター」に好んで貼られた美女シールと思われる。イタリア戦後広告史としても重要なベスパ・カレンダーを転写したものだ。
一方、ボクの街から出発する長距離バスのドライバーは、少し前までダッシュボードの周囲に美人写真をベタベタと貼り付けていた。それは、イタリアで高知名度のオーストラリア系モデル、メガン・ゲイルの写真である。ただしポスターではない。イメキャラを務めていた彼女が印刷されたボーダフォンの使用済みプリペイドカードを、何枚も両面テープで貼り付けていたのである。それもドライバーはいい親父である。
残念ながら、勤務シフトが1人1車両割り当て制度から、1車両を複数ドライバーで共有する制度に変更されたのを機会に剥がされてしまった。
また、数年前のある調査では、イタリアのトラックドライバーが最も好きなのは、モニカ・ベルッチだということが判明した。イタリアで大型トラックのキャビンには守護聖人がエアスプレーで丹念に描かれていることが多い。しかし一歩入るとソフィア・ローレンの再来といわれる妖艶派女優が祀られているというわけだ。このハイブリッド感覚がイタリア人である。
手作りロッシ
女性系とは別のデコレーションネタとして密かな人気があるのは、イタリアが誇るモトGP選手ヴァレンティーノ・ロッシである。軽いものでは彼の車両ナンバーである「46」を貼るという行為だ。
写真のトラック、ピアッジョ・ポーター(ダイハツ・ハイゼットのピアッジョ版)は近所に来る左官屋さんのものだ。バイクの話をすれば、彼の仕事を妨害できること間違いなしである。
もうひとつの写真は、もっと過激な「マイ・ロッシ」仕様だ。初代「フィアット・パンダ」全周に46番とロッシのニックネーム「THE DOCTOR」を配し、同様に彼のキャッチフレーズである「Che spettacolo!(こりゃ凄いぜ、といった感じの意味)」も忘れていない。
テールゲートに貼られた別のステッカーによれば、地元のチューニング・クラブにも加盟しているようだ。仲間内でさながらお笑い部門といったポジショニングに違いない。
ドイツファン泣かせ
先日は県内で、盾型グリルをイタリア国旗色にしてしまった「アルファ147」を目撃した。タイミング的に、サッカー欧州選手権に合わせたものと思われる。クルマに施すという点で、日本人が日本国旗を貼るよりも遥かに軽いノリでできるところがイタリア国旗の強みであろう。
しかし、今回のデコレーション選手権? のグランプリは、昨夏南ドイツで発見した「ゴルフ3」に贈呈したい。
後部ドアに貼られた大胆な漢字シールである。日本の熱烈ドイツ信仰者やゴルフ・ファンなら泣くであろうセンスが選考理由である。
「丹尼」はダニーと読むので、恐らくオーナーがダニエル君なのだろう。それを見ていて、ご希望の外人名・自動車用ステッカーを漢字で作ってあげるコンサルタント商売が成り立つのではないか? と真面目に考え始めたボクである。
(文と写真=大矢アキオ Akio Lorenzo OYA)
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大矢 アキオ
Akio Lorenzo OYA 在イタリアジャーナリスト/コラムニスト。日本の音大でバイオリンを専攻、大学院で芸術学、イタリアの大学院で文化史を修める。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとしてシエナに在住。NHKのイタリア語およびフランス語テキストや、デザイン誌等で執筆活動を展開。NHK『ラジオ深夜便』では、25年間にわたってリポーターを務めあげる。『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり』(コスミック出版)など著書・訳書多数。近著は『シトロエン2CV、DSを手掛けた自動車デザイナー ベルトーニのデザイン活動の軌跡』(三樹書房)。イタリア自動車歴史協会会員。
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