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【スペック】全長×全幅×全高=4470×1770×1340mm/ホイールベース=2700mm/車重=1350kg/駆動方式=FR/水冷式直列654cc×2ローター(235ps/8200rpm、22.0kgm/5500rpm)/価格=294万円(テスト車=327万750円)

マツダRX-8 Type S(FR/6MT)【ブリーフテスト】

マツダRX-8 Type S(FR/6MT) 2008.06.19 試乗記 山田 弘樹 ……327万750円
総合評価……★★★

2008年3月に大がかりなマイナーチェンジをうけ、生まれ変わった「RX-8」。外観のみならず、中身にも大幅に手が入った新型に試乗した。

ほぼフルチェンジ

年々激しくなる車両のサイズアップによって、“クーペスタイルのセダン”というわがまま(?)な発想がまかり通るようになってきた。しかし4シータースポーツカーという呼び名は、コンパクトなロータリーエンジンをフロントに搭載し、後輪を駆動するこのクルマにのみ許される、と思う。そんな唯一無二のパッケージングを持ったRX-8がマイナーチェンジを受け、その走りと質感に磨きをかけた。

人々がクルマに夢を見いだせず、そのほとんどがトランスポーター化するいま、RX-8は初志貫徹して「4シーターでも、スポーツカーは作れるのだ」という難題に挑戦し続けた。そして、しっかり結果を出したと思う。

外観の主な変更箇所は、フロントバンパーのエアインテークの拡大、サイドマーカー一体型のヘッドライトの採用、リアバンパー全面のボディ同色化、マフラーエンドの拡大など。
外観の主な変更箇所は、フロントバンパーのエアインテークの拡大、サイドマーカー一体型のヘッドライトの採用、リアバンパー全面のボディ同色化、マフラーエンドの拡大など。 拡大
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【概要】どんなクルマ?

(シリーズ概要)
2003年に登場したマツダの新世代スポーツ。イメージリーダーであった「RX-7」が生産を終了し、事実上スポーツカーのフラッグシップとなった。ターボチャージャーが取り払われ、後部座席の居住性が拡大され、4ドアという要素が加えられたのは、あまりに燃費の悪かったRX-7時代への反省と、ハードなものを求めなくなってきた市場傾向への対策がリンクした結果だろう。

マイナーチェンジにおける改良点で最もわかりやすいのは、外観だ。フロントバンパーは、エンジンオイル冷却用開口部およびセンター開口部がワイド化(Type-RSは専用デザイン)され、ヘッドライトとサイドマーカーが一体化され“ツリ目顔”となった。フロントフェンダーにあったエアアウトレットは廃止され、リアバンパー全面もボディ同色かつ新意匠となり、5年の歳月ぶん大人びた。

フロントミドに搭載されるエンジンは「RXシリーズ」のアイデンティティであるロータリーユニット。マイナーチェンジで同弁部の軽量化や燃料&オイル供給装置の高効率化、排気システムの見直しなどが行われ、さらに磨きがかかった。

(グレード概要)
ベースグレードは5段MT/電子制御6段AT(アクティブマチック)が選択可能で、エンジンは最高出力215ps/7450rpm、最大トルク22.0kgm/5500rpmの「RENESIS」。「Type-E」は6段ATにこの215ps版エンジンを搭載、メモリー機能と電動スイッチ式前倒機構が付いた電動8ウェイパワーシートを標準装備する。
今回乗った「Type-S」は最高出力が235ps/8200rpm(最大トルクは同じ)に引き上げられたエンジンに6段MTを標準装備、ホイールサイズは225/45R18となる。
走りのモデルである「Type-RS」は、同エンジン/トランスミッションに専用ビルシュタインダンパーと225/40R19ホイールを装着し、シートにはリクライニングタイプのRX-8専用レカロが与えられる。

【車内&荷室空間】乗ってみると?

(インパネ+装備)……★★
インパネ上部に備わっていたリトラクタブル式のナビが、中央へ移動した。これによって前期型のアイコンであったラウンド形状のパネルが、ハザードスイッチにのみ面影を残すだけとなった。前期型に長く乗っていた身としては少し寂しい気がしたが、それでも別段大勢に影響がないところが余計に悲しい。

iPodの使用を考慮してだろうAUXジャックが追加されたり、Bluetooth対応のハンズフリーフォン機能が付いたりと細かい部分で着実に磨きをかけている。ただしピアノブラック調にまとめられたプラスチックパネル部や、インパネソフトラバーの色調は非常にコンサバティブ。外観がプレミアム路線を狙って派手さを増した割には、よく言えばストイック、意地悪く言えばつまらない。「4シーターだけどスポーツカーなんだ」というオーナーのプライドを満足させるためには、もう少し外観の要素をイメージさせる工夫が必要だろう。だって中からは、新しくなった顔などは一切見えないのだから。

(前席)……★★
前期モデルが登場したとき、技術者の方はシートにかなり自信を持っていた。しかし僕は、そのシートに対して不満を持っていたからそれを素直に述べたら、「そうですか?」と困惑の表情を浮かべていた……。そんなことを思い出した。なぜかといえば、今回のシートはそのネガティブを消し去っていたから。具体的には、背面のラウンド形状が適切になって、背圧が減ったのだ。前作は「ヘタること」を前提としてそうした、という考え方もあるが、最初から乗り心地が良いにこしたことはない。そのシートから伸ばした手は自然にステアリングを握り、足はABCペダルを踏み込むことができる。この「気合いの入りすぎないナチュラルさ」が、生まれ変わったRX-8全般に共通するテーマに思える。

(後席)……★★★★
センタートンネルで剛性を稼ぐRX-8にとって、後部座席の居住性についてあまり言及するのは酷なことだとだろう。というよりも、このスポーツカールックで、この走りを見いだしながら、よくぞスペースを確保してくれました、というのが正解に近い。だから「スポーツカーとしての走り(ひいては乗り心地の良さ)を見いだすためには、このセンタートンネルが必要なんだよ」とダンナは奥さんにしっかり説明してあげるべきだ。

とはいえスペース自体も、それほど狭くはない。問題はリアウインドウが狭く囲まれ感が強いことと、完全セパレート形状のシートによる身動きの自由度が少ないことなのだ。このRX-8を選ぶ世代(実際街で見かけると年季の入ったベテランドライバーが多いが、本来はまだ子供が小さいご夫婦がターゲットだと思う)を乗せたとき、座面が深くセンタートンネルの高い後部座席での身動きは、通常の4シーターよりも限定される。だから隣に座る子供の世話をしようしたときには窮屈で仕方ない。でも、これを我慢してでもダンナが喜ぶスポーツカーに乗ることは、人生に彩りが添えられて良いことだと思う。あとは、フロントシートが折りたためて、その背面がテーブルになったりしたら、奥さんも喜ぶのではないだろうか。

(荷室)……★★★
オーバーハングが短いRX-8にとって、4ドアセダン並みのトランク容量は望めない。センターピラーレスボディで話題をさらった(その割には乗降性が良いと思えない。むしろ純粋な4ドアの方が良かったと思う)だけに、剛性確保のためハッチバック式にすることもできない。それでも290リッターというトランク容量は、小さすぎて使い物にならない、というサイズではない。パーソナルカーとして乗るなら必要充分以上、家族でも小旅行程度ならこなせるはずだ。スポーツカーとして見たならば、十分に合格点だ。

【ドライブフィール】運転すると?

(エンジン+トランスミッション)……★★★★
ロータリーエンジンのドライバビリティを磨き続けることは、マツダの使命というかもはや“ライフワーク”だ。そしてRX-8に限らず、ロータリーエンジン搭載車はマイナーチェンジする度に、乗りやすさが確実に向上している。ただし報道をみると「低速トルクの細さが気になる」と書かれていることが多い。果たして今回はどうなのか? というと、ようやくその範疇から抜けられたのではないかと思う。

具体的にはローター重量で約5%、フライホイールで約15%の軽量化を図りレスポンスを向上。オイルシールとサイドシールの間にカットオフシールを新設することで、吸排気ポート間の機密性を向上させた。ジェットエアフューエルミキシングシステムにより理想的な燃料および空気の混合を作成するほか、電磁式メタリングオイルポンプ採用によるオイル消費量の抑制や冷間時の始動性アップも図られた。保温性が優れる二重構造のマニホールドや、高効率触媒を採用することで排出ガスのさらなるクリーン化も追求した(有害物質排出量は13B-REWユニットの約1/10)。

このように、マイチェンとは思えないほどの改良が加えられたロータリーは、やっとイメージ通りのエンジンに仕上がった。吸排気音やエンジンサウンドも気持ちよい。これでマフラー音に彩りが添えられれば、さらに良くなることが目にみえている。
そしてこのピックアップの良さは、6段MTのギアレシオを見直し、最終減速比をローギアード化したことにも起因している。トランスミッションは今回からロードスターにも使われる自社製だというが、シンクロのタッチが絶妙。エンジンの柔軟性と合わせて、シフト操作時のギクシャク感が消え去った。

(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
「普段使いもできて、大人4人がきちんと座れるFR」という、庶民にとっては夢のようなパッケージング。コンパクトなロータリーエンジンを搭載することでスポーツカーらしいカタチを手にしたRX-8。その「欲張り性能」に、初期型では完成度が追いついていない部分があった。ただしそのエポックメイキングな存在ゆえに、細かな不満が許されていた部分があると思う。
マイナーチェンジによって、RX-8は本来の理想へと到達したのだと思う。

具体的な改良点は、ボディ剛性の向上とサスペンションジオメトリーの変更。フロントサスタワーバーはダッシュカウルパネルと締結する台形タイプにし、サスタワーの板厚も1.4mmから1.6mmにアップ。助手席側インパネメンバーは接合強化が図られた。ステアリングマウント部の剛性感も向上している。ほかにもフロントドア開口部のヒンジピラーをスポットウェルボンドで接合強化するなど、ボディは大幅にメスが入れられた。

フロントダブルウィッシュボーンは、レバー比から見直し、実際の車輪稼働量に対して大きくダンパーを動かすことで、乗り心地や応答性を高めた。

リアサスはマルチリンクのリンク長を延長。アッパー・ロングラテラルリンクのハブサポート側取り付け部を7.5mm上方に移動させた。スプリングも床下配置として、ダンパーへの負担やフリクションロスを減らしている。

今回の改良は、ほぼフルモデルチェンジと言える内容だ。そうして得られたハンドリングは、決してダルなフィールではなく、「ジャスト」と言いたくなるロールスピードとナチュラルなコントロール性を手に入れた。ロングホイールベースゆえの居住性確保と、スポーツカーらしい俊敏性との収束ポイントを見つけた、という感じだった。

試乗路はウェットだった。初期型で経験したときと比べると、18インチでは危ういと思えたスタビリティの憶弱さが消えた(RSグレードでは19インチを履きこなすまでに至った)。この完成度を得るのに、約5年という歳月を要したのは少々時間がかかりすぎたようにも思えるが、ベースグレードで260万円、TypeRSでも315万円という価格は、性能を考えると割安だと思う

(写真=菊池貴之)

【テストデータ】

報告者:山田弘樹
テスト日:2008年5月14日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2008年型
テスト車の走行距離:4304km
タイヤ:(前)225/45R18 91W(後)同じ(いずれも、ブリヂストンPOTENZA RE050A)
オプション装備:コンフォートパッケージ(4万2000円)/MAZDA G-BOOK HDDナビゲーションシステム(22万500円)/SRSエアバッグシステム(カーテン&フロントサイド)(6万8250円)
形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1):高速道路(7):山岳路(2)
テスト距離:365.7km
使用燃料:56.09リッター
参考燃費:6.52km/リッター

山田 弘樹

山田 弘樹

ワンメイクレースやスーパー耐久に参戦経験をもつ、実践派のモータージャーナリスト。動力性能や運動性能、およびそれに関連するメカニズムの批評を得意とする。愛車は1995年式「ポルシェ911カレラ」と1986年式の「トヨタ・スプリンター トレノ」(AE86)。

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