アウディA5 3.2FSI クワトロ(4WD/6AT)【ブリーフテスト】
アウディA5 3.2FSI クワトロ(4WD/6AT) 2008.05.09 試乗記 ……791.0万円総合評価……★★★★
アウディにとって11年ぶりの登場となる4シータークーペ「A5」。短いオーバーハングと長いホイールベースが特徴のスタイリッシュモデルに試乗、その実力を試す。
しなやかな乗り心地
前の週にセダンの「A4」に乗り、この「A5」をテストした翌日、ひと足先にインプレッションを公開した「A4アバント」の海外試乗会に出かけた。まさにアウディ三昧の2週間だった。
どれもいいクルマだった。とくに新型はエンジンに対し前輪を前に出した結果、前後の重量配分が理想に近づき、リニアなハンドリングを手にした。さらに、重いノーズを固い足で押さえ込む必要がなくなったおかげで、乗り心地まで別物のようにしなやかになったことが印象的だった。
3つのボディを続けて乗った身としては、A4とは違うクーペならではの特別な演出が、スタイリングのみならずキャビンやドライビングにももう少し欲しいかな、という印象はある。
でもこれは、2台の愛車が両方ともA5と同サイズのクーペという特殊な人間(私のこと)ならではの意見かもしれないし、アウディひさびさの2ドア4座であることも考慮にいれる必要はある。いまはまだ復活したばかり。今後いい具合に成熟していく様子を見ていく楽しみも、このクルマにはあるかもしれない。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2008年2月に発売された「A5」は、アウディのミドルセダン「A4」とシャシーを共有する、クーペモデル。1996年に途絶えた第4世代「A4」に設定されたクーペモデルから、11年ぶりの4シータークーペとなる。同時に高性能版「S5」も発売された。
名のとおり「A4」と「A6」の間に位置するモデルで、ちょうど“A4の全長にA6の全幅”といったディメンションを持つ。プラットフォームは、2008年3月に発売された新型「A4」と同じ。
フロントマスクにはお約束のシングルフレームグリルが備わり、その両脇にLEDのアイシャドーを付けたヘッドライトが配置された。サイドビューでは短いオーバーハングと長いホイールベースが特徴。このロングホイールベースはフロントアクスル(車軸)を前方に移設することで実現したもので、A5の最も注目すべき特徴の一つ。
エンジンは、可変バルブリフトシステムを新たに採用した3.2リッターのV6DOHC FSI(直噴)ユニット(265ps、33.7kgm)。6段のティプトロニックATを介し、クワトロシステムで4輪を駆動する。
(グレード概要)
4シーターのクーペモデルは、テスト車のA5と高性能版S5の2グレード。S5との外観上の違いは、グレーのラジエータグリルや4本出しのエグゾーストエンド、アルミルックのドアミラーハウジングなどで判別ができる
パワステには、速度に応じてアシスト力が変化するサーボトロニックが標準装備。安全面では、前席用の2ステージエアバッグ/サイドエアバッグ、4名分のヘッドエアバッグや、ABS、ESPなどが備わる。
S5には標準設定される、アウディドライブセレクトや、APS(アウディ・パーキング・システム/リアビューカメラ付)、バング&オルフセン サウンドシステムなどはオプションとなる。ハンドル位置は右のみ。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
メーターを囲むリングの形状、助手席側ウッドトリムの有無、ステアリングスポークの数などがA4との違い。最新アウディモードに沿った造形ではあるが、クーペならではの演出は少ない。
精密という言葉を使いたくなる仕上げのよさは、依然第一級。スイッチの触感にまで上質が行き届いている。ただしMMI(マルチメディアインターフェイス)と呼ばれるセンターコンソールのスイッチは、毎度のことながら、最後まで慣れることができなかった。
(前席)……★★★★★
アウディの伝統でクッションはそんなに固くはなく、シートバックのサポートもほどほど。スポーティというよりもラクシャリーという言葉が似合う着座感だ。ドライビングポジションは自由度が大きく、しかもA4よりあきらかに低い位置にセットできる。シートやドアトリムの造形は微妙にA4と違えてある。
(後席)……★★★★
身長170cmの人間が前後に座った場合、ひざの前にはこぶし1個分のすき間が残るが、頭上空間はギリギリ。強く傾いたリアウィンドウを避けるためか、シートバックは立ち気味だが、座面の傾斜角は理想的だった。中央にはエアコンのルーバーだけでなく風量・温度調節スイッチも備え、乗り心地に前席との差がほとんどない。この点はフル4シーターといえる。
(荷室)……★★★★
幅や高さはサイズ相応だが、奥行きはかなりのレベル。この車格のクーペとしては広いほうといえるだろう。リアシートは非対称分割で前に倒し、空間を広げることが可能。しかもトランク側からもキャビン側からも操作できるのは便利だ。こういう部分にまで高水準の仕上げを施すのは他のアウディ同様。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
新たにアウディバルブリフトシステムを装備した3.2リッターV6FSIエンジンはA4と共通。従来型が持っていた緻密で上質な回転感に、厚みや深みを加えたという感触だった。A4セダンとの重量差は40kgにしかすぎないので、加速の違いは体感できない。トルクコンバーターを用いた6段ATは、発進がやや唐突な以外はスムーズそのもの。高級感ではデュアルクラッチ方式のSトロニックを確実に凌ぐ。一糸乱れぬ歯車の動きでその力を4輪に伝えるクワトロシステムを含め、官能性は薄いけれど、それ以上に機械としての精度の高さが印象に残る。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★★
重量配分の適正化がもたらした快適な乗り心地は、新型A4/A5の最大のトピック。245/40R18という幅広扁平タイヤを履くとは思えない平和な印象だ。車速に応じてギア比を変えるダイナミックステアリングは、意識していないと変化が察知できないほど自然。3つのモードを持つ「アウディドライブセレクト」は、コンフォートではステアリングやダンピングがおだやかに、ダイナミックではスロットル、AT、ステアリングがレスポンシブになる。オートはその中間だが、個人的にはコンフォートが心地よかった。ホイールベースが2750mmと長いので、ダイナミックにしても鋭い挙動が得られるわけではない。それならコンフォートを選んで高水準なロードホールディングと前後のグリップバランスのよさを味わいつつ、エレガントに走ったほうがお似合いだと思った。
(写真=峰昌宏)
【テストデータ】
報告者:森口将之
テスト日:2008年4月10日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2008年型
テスト車の走行距離:7095km
タイヤ:(前)245/40R18(後)同じ(いずれも、POTENZA RE050A)
オプション装備:APS(14.0万円)/アウディドライブセレクト(32.0万円)/S-lineパッケージ(35.0万円)/バング&オルフセン サウンドシステム(15.0万円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4):高速道路(5):山岳路(1)
テスト距離:335.8km
使用燃料:41.33リッター
参考燃費:8.12km/リッター

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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