ジャガーXFシリーズ【試乗速報】
新時代の幕開け 2008.04.25 試乗記 ジャガーXFシリーズ「XF」は、ジャガーが満を持して送り込む新世代ミドサイズサルーンだ。Sタイプの単なる後継車ではないことは、運転席に乗り込めばすぐにわかる。
伝統のしがらみを断ち切った
「ジャガーXF」は、これまでの「Sタイプ」の後継車というだけでなく、新しい次元への跳躍を試みるジャガーの意欲作でもある。ジャガーと言えば、初代「XJ」サルーンや「Eタイプ」のイメージがあまりにも強く、なかなかそこから抜け出すのが難しいようにも見える。伝統=クラシック風なもの、というしがらみを断ち切るには英断も必要だろう。今度のXFには、4ドアクーペ的なスタイリングの中に、その決意を見ることができる。
搭載されるエンジンは3種。243psの3リッターV6、304psの4.2リッターV8、そしてスーパーチャージャーでチュ−ンした426psの4.2リッターV8と、ほぼこれまでのユニットを踏襲する。サスペンションも前ダブルウィッシュボ−ン/後マルチリンクと形式は以前と同じであるが、チューンはXF専用、強いて言えばXKに近い。価格の一例をあげると、「3.0ラグジュアリー」が650万円。「4.2プレミアム・ラグジャリー」が870万円。「SV8」が995万円。XJとラップさせることにより、どちらかが兄で片方は弟という上下関係ではなく、毛色の違う従兄弟同志の関係を造りだそうとしているようにも感じられる。
最大の関心事であるボディは、ジャガーであることが一目で判る雰囲気を保ちながら、空力的で流麗なルーフラインを採る斬新な外観に一変。材質はXJのようにアルミではなくスチールであることもトピック。全長は5mを若干切るものの、幅は1875mmと広い。FRという伝統的レイアウトは、居住空間を脅かすことも事実。ゆえにそこも踏まえて室内幅もしっかり確保されているし、デザイン的にもスッキリと広さを強調する。その上で独自の高級感の演出もけっして忘れてはいない。
激変したインテリア
ジャガーを象徴するラジエターグリルは、外枠に凝らず格子は縦でも横でもなく、斜めの餅網風という単純ではあるが、シンプルな中にもジャガーらしい風格と品を備えている。
室内を広々と見せているのは、ギアセレクター部分の飛び出しをなくし、センターコンソールをフラットにして、シンプルかつ未来的に仕上げているからだ。スターターボタンを押すと、少しだけせりあがるダイヤルがあり、ギアポジションの選択はこのダイヤルを回すことにより、「P」「R」「N」「D」「S」に切り替えられる。あとはステアリングホイール裏に備わるパドル操作で、プラス・マイナスすることにより、積極的にシフトすることも可能だ。ZF製6ATはダウン時には空吹かしして回転合わせまで行うため、スムーズな変速が約束される。
もうひとつ、視覚的な邪魔物になりがちなサイドブレーキは、レバーではなく、使いにくい足踏み式でもなく、フラットで小型の電気スイッチを採用している。この手のものは他社にも例はあるが、それらは問題がないわけでもない。なぜならばオン/オフだけに使うものと勘違いしたり、緊急時の補助ブレーキとしての役割を考えていない例もあるからだ。ジャガーのそれは走行中でも操作可能で、引き上げ続ければレバー式に準じた手動ブレーキとして、加減したり反復使用することも可能。
乗り味に残るジャガーらしさ
サスペンションはジャガーのエンブレムが示すネコ科の動物らしく、4脚がしなやかにストロークして接地性を助け、ボディを常時フラットな姿勢に保つ。少しずつ硬くなってきてはいるけれども、英国の道で育った車ゆえに凸凹には強く、サスペンションの基本はストロークすることにある、という精神を忘れてはいない。
XJサルーンとの最大の違いである、アルミと鉄の違いについては、当然というかやはりそれなりに感触は異なる。ボディ慣性は大きく、コーナーでの向きが変わる瞬間とか、ブレーキングを終えてもなお残る前進感とか、動きの方向が変わる瞬間的な挙動においては、これだけ大きなクルマになると鈍な部分もでてくる。しかし乗り心地の面で、フラットさを保つという意味では、鉄の重さが味方することもある。個人的な好みを言わせてもらうならば、鉄よりはアルミの方が良かったと思うが、XFもボンネットなどはアルミだから、トランクやドアなど、表皮のパーツが今後アルミ化される可能性も皆無ではないと思われる。
ともあれ、新しいXFはターゲットユーザーがより若い人であり、これまでの化石的石頭のような古臭い因習にはとらわれない。現代の基準をもってライバルと比較するならば、このスタイリングもインテリアデザインも走りっぷりも含め、スポーツサルーンとしての、新しい価値感をもって素直に迎えいれられるのではないだろうか。
(文=笹目二朗/写真=高橋信宏)

笹目 二朗
-
日産エクストレイルNISMOアドバンストパッケージe-4ORCE(4WD)【試乗記】 2025.12.3 「日産エクストレイル」に追加設定された「NISMO」は、専用のアイテムでコーディネートしたスポーティーな内外装と、レース由来の技術を用いて磨きをかけたホットな走りがセリングポイント。モータースポーツ直系ブランドが手がけた走りの印象を報告する。
-
アウディA6アバントe-tronパフォーマンス(RWD)【試乗記】 2025.12.2 「アウディA6アバントe-tron」は最新の電気自動車専用プラットフォームに大容量の駆動用バッテリーを搭載し、700km超の航続可能距離をうたう新時代のステーションワゴンだ。300km余りをドライブし、最新の充電設備を利用した印象をリポートする。
-
ドゥカティXディアベルV4(6MT)【レビュー】 2025.12.1 ドゥカティから新型クルーザー「XディアベルV4」が登場。スーパースポーツ由来のV4エンジンを得たボローニャの“悪魔(DIAVEL)”は、いかなるマシンに仕上がっているのか? スポーティーで優雅でフレンドリーな、多面的な魅力をリポートする。
-
ランボルギーニ・テメラリオ(4WD/8AT)【試乗記】 2025.11.29 「ランボルギーニ・テメラリオ」に試乗。建て付けとしては「ウラカン」の後継ということになるが、アクセルを踏み込んでみれば、そういう枠組みを大きく超えた存在であることが即座に分かる。ランボルギーニが切り開いた未来は、これまで誰も見たことのない世界だ。
-
アルピーヌA110アニバーサリー/A110 GTS/A110 R70【試乗記】 2025.11.27 ライトウェイトスポーツカーの金字塔である「アルピーヌA110」の生産終了が発表された。残された時間が短ければ、台数(生産枠)も少ない。記事を読み終えた方は、金策に走るなり、奥方を説き伏せるなりと、速やかに行動していただければ幸いである。
-
NEW
バランスドエンジンってなにがスゴいの? ―誤解されがちな手組み&バランスどりの本当のメリット―
2025.12.5デイリーコラムハイパフォーマンスカーやスポーティーな限定車などの資料で時折目にする、「バランスどりされたエンジン」「手組みのエンジン」という文句。しかしアナタは、その利点を理解していますか? 誤解されがちなバランスドエンジンの、本当のメリットを解説する。 -
NEW
「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」の会場から
2025.12.4画像・写真ホンダ車用のカスタムパーツ「Modulo(モデューロ)」を手がけるホンダアクセスと、「無限」を展開するM-TECが、ホンダファン向けのイベント「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」を開催。熱気に包まれた会場の様子を写真で紹介する。 -
NEW
「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」の会場より
2025.12.4画像・写真ソフト99コーポレーションが、完全招待制のオーナーミーティング「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」を初開催。会場には新旧50台の名車とクルマ愛にあふれたオーナーが集った。イベントの様子を写真で紹介する。 -
NEW
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション/CR-V e:HEV RSブラックエディション ホンダアクセス用品装着車
2025.12.4画像・写真まもなく日本でも発売される新型「ホンダCR-V」を、早くもホンダアクセスがコーディネート。彼らの手になる「Tough Premium(タフプレミアム)」のアクセサリー装着車を、ベースとなった上級グレード「RSブラックエディション」とともに写真で紹介する。 -
NEW
ホンダCR-V e:HEV RS
2025.12.4画像・写真およそ3年ぶりに、日本でも通常販売されることとなった「ホンダCR-V」。6代目となる新型は、より上質かつ堂々としたアッパーミドルクラスのSUVに進化を遂げていた。世界累計販売1500万台を誇る超人気モデルの姿を、写真で紹介する。 -
アウディがF1マシンのカラーリングを初披露 F1参戦の狙いと戦略を探る
2025.12.4デイリーコラム「2030年のタイトル争い」を目標とするアウディが、2026年シーズンを戦うF1マシンのカラーリングを公開した。これまでに発表されたチーム体制やドライバーからその戦力を分析しつつ、あらためてアウディがF1参戦を決めた理由や背景を考えてみた。






























