フォルクスワーゲン・クロスゴルフ(FF/6AT)【ブリーフテスト】
フォルクスワーゲン・クロスゴルフ(FF/6AT) 2008.04.03 試乗記 ……309.0万円総合評価……★★★★
「クロスポロ」に続くクロスシリーズの第2弾となる「クロスゴルフ」が500台の限定で発売された。1.4リッターTSI+DSG搭載のクロスオーバーモデルに試乗した。
いわば、「ゴルフプラス」“プラス”
「ゴルフGT TSI」に始まり、「ゴルフトゥーラン」「ゴルフヴァリアント」「ジェッタ」そしてゴルフのベーシックモデルと、エンジンの“TSI化”が進むフォルクスワーゲンのゴルフシリーズ。でも、何か忘れちゃいませんか? そう、ゴルフの“ハイトワゴン”として登場した「ゴルフプラス」である。
ゴルフよりも上質なインテリアに、使いやすいリアシートやラゲッジスペースなど、その内容はゴルフ以上に魅力的なのだが、ゴルフほどの認知度はないし、7人乗りのトゥーランのように機能でアピールできるわけでもなく、日本ではいまひとつ人気が盛り上がらなかった。そのため、TSIエンジン搭載モデルの導入は見送られ、いまの在庫がなくなったところで販売終了。その代わりといってはなんだが、ゴルフプラスをベースに、SUV風のエクステリアをまとい、TSIエンジンを搭載した「クロスゴルフ」が限定500台で販売されることになったのだ。
クロスシリーズ第1弾の「クロスポロ」同様、FFのまま仕立て上げた、見た目重視のSUV……。そのあまりに安易なコンセプトに、最初はまったく興味が湧かなかった私だが、実際に乗ってみるとこのクロスゴルフ、意外に憎めないキャラクターの持ち主だった。ゴルフプラスの優れたパッケージングをそのまま受け継ぎ、ゴルフプラスに欠けていた個性的なデザインを割と少ないエクストラで手に入れられるのがいい。ゴルフプラス“プラス”くらいの感覚で、手軽にそのスタイルを楽しむなら悪くないと思うし、もう少し本格的なSUVを望むなら、この秋にも導入が見込まれる「ティグアン」を待てばいい話。いずれにせよ、ゴルフプラスの穴を埋めるモデルとしては、なかなかの適任に思えるクロスゴルフである。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2007年12月25日に500台限定で発売した「クロスゴルフ」。2006年8月に発売の「クロスポロ」に続くクロスシリーズの第2弾。
ゴルフプラスをベースに、専用のエクステリアやインテリアパーツを採用することで、クロスオーバー風の外観に仕立てた。前後バンパーがシルバーにペイントされ、ボディカラーは2トーンとなる。
ゴルフ由来のプラットフォームを採用するため、基本性能はゴルフやゴルフプラスに準じるが、専用サスペンションの採用により最低地上高は15mmアップ。雪道などでの走破性向上が図られている。
パワーユニットは、最高出力140ps、最大トルク22.4kgmを発生する1.4リッターTSIエンジンに、DSGを組み合わせる。
(グレード概要)
クロスゴルフの欧州におけるグレード構成は、ガソリン仕様が2グレード、ディーゼル仕様が2グレード。このうち、日本に導入されたのは、ガソリン仕様の上級モデル。試乗車のボディカラーは、限定500台のうち、300台が割り当てられる「アイスシルバーメタリック」。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
インパネは、基本的にゴルフプラスのデザインを踏襲するが、センタークラスターやエアベントの周囲にメタル調のパネルを配したり、ドアトリムをシートと同じ薄いブルーで彩るなど、クロスゴルフならではのインテリアをつくリあげた。メーターパネル自体はゴルフ同様、大きなアナログの速度計と回転計がシンプルに配置された見やすいデザインだ。
前席まわりの収納は豊富で、余裕あるサイズのドアポケットやセンターコンソールなどに加えて、天井にはサングラスなどが収納できるルーフコンソールが4つ並ぶ。
ベースのゴルフプラスに比べると装備も充実。バイキセノンヘッドランプやコーナリングランプが標準で装着されるほか、ルーフレール、アルミのアクセル/ブレーキカバーなどが付いて、「ゴルフプラスGLi」に比べて22万円高という価格は買い得感がある。
(前席)……★★★★
グレーとブルーのツートーンのシートは、大きめのサイドサポートを持つスポーティなデザイン。座り心地がやや硬めなのは気にならなかったが、大柄な人にはサイドサポートが窮屈に思えるかもしれない。シートは、スライド、リクライニング、リフト、そしてランバーサポートを手動で調整するタイプ。ステアリングはチルトに加えて、テレスコピック調整が付くから、好みのポジションがとれるのがいい。シートポジションは高めで見晴らしはいいが、運転席からだと同じ側のAピラーが視界を遮るのが気になった。ステアリングホイールは、レザーにパンチング加工が施され、ステッチがシートと同じブルーになる専用のデザインだ。
ゴルフプラス同様、フロントシート下には収納トレイが用意され、さらに運転席には収納トレイ下に収納ボックスがつく。助手席は前方に倒すことができるので、同時に後席を倒せば2.4m強の長尺物を載せることも可能だ。
(後席)……★★★★★
高めの天井のおかげでヘッドルームに余裕がある後席。4つ並んだルーフコンソールが後席からは少し目障りだが。
ゴルフと違って、後席に前後160mmのスライドとリクライニング機能が備わるのはとても便利。ぜひふつうのゴルフにも取り入れてほしい。足元は広く、後席を一番前のポジションにしても膝が前席にくっつくことはないし、一番後ろのポジションなら余裕で足が組める。
(荷室)……★★★★
テールゲートを開けると、開口部とほとんど段差のないフロアが現れる。標準状態では奥行きは約70cmで、4240mmの全長を考えると驚くほどの広さではないが、後席のシートバックを倒すだけで広くフラットな空間が生み出せるのは便利なところだ。
荷室のフロア下には7cmほどの空間があり、小物の収納ができるほか、フロアボードそのものを落とし込んで、そのぶん高さを稼ぐことも可能である。
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【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
エンジンは、1.4リッター直噴ガソリンエンジンにスーパーチャージャーとターボのふたつを備えた、いわゆる“ツインチャージャー”のTSI。ご存じのとおりこのTSIには170psと140psのふたつのチューンが用意されるが、クロスゴルフに搭載されるのはマイルドな性格の後者。同じエンジンを積む「ゴルフTSIコンフォートライン」に比べると100kgほど重量がかさむぶん、動き出しはやや緩慢に思える。エンジン回転が1500rpmを超えたあたりからはトルクが湧き出しはじめ、2000rpmを過ぎれば2リッターNAを凌ぐ力強さを見せる。組み合わされる6段DSGもスムーズで素早い動きが小気味好い。高回転域では170psほどのパンチは感じられないが、ふつうに使うかぎり不満はないだろう。
気になるのがエンジン音。アクセルを軽く踏んだ状態で街なかを50-60km/hで走るような場面では、エンジン回転が1500rpmを下回ることが多く、ここから少し加速するときなど、レスポンスが鈍いうえに、音も耳障りなのだ。ただ、従来の2リッターNAに比べると、平均速度の低い都内でも明らかに燃費の向上が見られるから、それと引き換えと思えばガマンもできる。
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(乗り心地+ハンドリング)……★★
FFとはいえ、ゴルフプラスに比べて15mm高い最低地上高は、雪道などを走るうえではそれなりに貢献するはずだ。心配なのは、これにともなう挙動の変化。専用の足まわりとはいえ、さほどハードな味付けではなく、場合によってはゆっくりとしたピッチングが見られたり、コーナリング時にロールが大きめだったりもする。ふだんの動きは落ち着いており、高速走行時のフラット感にも不満はなかった。レーンチェンジでもグラッと横揺れすることはないから、運転していてとくに不安を抱くことはないだろう。
225/45R17サイズのサマータイヤは乗り心地には不利な設定で、スムーズな路面を走るだけならいいが、舗装が悪くなると途端に足元がバタつき、とくに後席では顕著になる。見た目の格好の良さを求めるのもいいが、ゴルフやゴルフプラスが本来持ち合わせている快適さをスポイルしているのは残念。幸い15インチや16インチのタイヤ&ホイールが装着できるので、気になる人はサイズダウンすることをお勧めする。
(写真=峰昌宏)
【テストデータ】
報告者:生方聡
テスト日:2008年2月14日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2008年型
テスト車の走行距離:4539km
タイヤ:(前)225/45R17(後)同じ(いずれも、ミシュラン Pilot PRIMACY)
オプション装備:--
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3):高速道路(7)
テスト距離:325.1km
使用燃料:31リッター
参考燃費:10.49km/リッター

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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