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【スペック】全長×全幅×全高=4397×1892×1340mm/ホイールベース=2646mm/車重=1585kg/駆動方式=FR/4.7リッターV8DOHC32バルブ(450ps/7000rpm、470Nm/4750rpm)/価格=2259万円(WS)

アルファ・ロメオ8Cコンペティツィオーネ(FR/2ペダル6MT)【海外試乗記(前編)】

快感中枢を刺激する(前編) 2008.02.11 試乗記 加藤 哲也 アルファ・ロメオ8Cコンペティツィオーネ(FR/2ペダル6MT)
……2259万円(車両本体価格)

アルファ・ロメオが久々に生んだリアルスポーツカー「8Cコンペティツィオーネ」。ステアリングを握る機会を得た『NAVI』加藤哲也が、アルファ好きの聖地、バロッコからリポート!
『NAVI』2007年12月号から転載。
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やっぱり血が濃い

祖父の代からアルファに勤めるというテストドライバー氏は、僕を助手席に乗せ、まずはブリッピングを何度か繰り返した。何より先に、そのエグゾーストノートを楽しめ、というのである。ファン、ファンという情熱的な音が辺りに鳴り響く。むろん2シーターのコクピットをも満たす。

なんという快音なんだろう!

「自分でも何てラッキーなんだって思うよ。だってこんなにサウンドの素晴らしい、本物のスポーツカーの開発に携われたんだから。いつかはこの8Cみたいなクルマを作りたいって、ずっと思い続けてきたんだ」

こういう“血の濃い”人々が、世代を越え、アルファの血脈を絶やさず、現代まで引き継いできたのだな、と思うと胸が熱くなる。

サルーンであれ、コンパクト・ハッチバックであれ、由緒正しきアルファのブランドマークがつく限り、その製品は常にスポーティーな香りを漂わせてきた。経営危機に瀕しても、あるいは本社機能がミラノからトリノに移ろうと、ただその一点だけは変わらなかった。いや変わりようがなかったのだろう。

しかし何故かアルファは“IL MOSTRO”と呼ばれた2代目SZ(ES30)以降、本格的なスポーツカーを長く作らなかった。いや巨大なFIATグループの中にあって、フェラーリやマセラーティとの明確な差別化を図るために、作りたくても作れなかったといった方が正しいのかもしれない。

そんなFIATグループの戦略に異議を唱え改革を迫ったのは、世界中のアルファ・ロメオ信奉家、スポーツカーマニアたちだった。単なるショーカーでしかなかった8Cコンペティツィオーネ。しかしそのクラシックなスタイリングを持つスポーツカーはたちまち評判を呼び、賞賛の声を集めた。それが巨大メーカーの重い腰を遂に上げさせたといっていい。

ソプラノの音質

かつてモータースポーツを席巻し、偉大なスポーツカーブランドとして君臨したアルファ・ロメオ。彼らにとって本来必要であるべきアイコン的存在のハイパフォーマンス・スポーツカーの開発が、遂に決まったのである。そして間もなく、生産が始まる段階にまで到達した。

V8 4.7リッターユニットは、その調べが扇情的なだけでなく、まるでレーシングカーのような鋭利なレスポンスを持つことが、助手席から見ていてもよくわかる。スロットルに即応する吹け上がりの鋭さも、あるいは回転落ちの速さも、まるでフライホイールの存在を感じさせないほどだ。ソプラノの音質は澄み渡り、しかもフェラーリほど騒々しくはなく、抑制が効いていることも好ましい。そう、ちょうどイヤープラグをして余分な騒音を遮断したような感覚なのだ。

まずは件のテストドライバー氏がステアリングを握り、彼の説明を受けながらアルファ乗りにとっての聖地、バロッコのテストコースを1周したが、そのとき思い出したのはフランスを1週間近くに渡って走り回る現代版トゥール・ド・フランス、“TOUR AUTO”に参加したときのことだった。そのとき操縦したのは60年代レーシング・アルファの傑作、ティーポ33/2。パリをスタートする時点では予想外の燃料漏れに悩まされたものの、フュエルポンプを交換してからは絶好調のひと言。2リッターと排気量こそ異なるが、同じV8の奏でるサウンドをイヤープラグ越しに聞く快感とシャープこの上ないレスポンスに、あの時も酔いしれたっけ。

脳の半分を記憶に奪われながら、残りの半分でコースレイアウトやブレーキングポイントを頭に叩きこんでいく。テストドライバーによる模範走行は瞬く間に終わった。ドアを開け、運転席に着く。さぁあの快音を、今度は自分自身の手と足で奏でる順番が巡ってきた。

90度V8 4.7リッターユニットは完全はフロントミドシップ。この低い搭載位置はもちろんドライサンプだからこそ可能となった。圧縮比は11.3だという。
90度V8 4.7リッターユニットは完全はフロントミドシップ。この低い搭載位置はもちろんドライサンプだからこそ可能となった。圧縮比は11.3だという。 拡大
モノコックはもとより、アウタースキンはすべてカーボン製。サスペンションは前後ともスチールのサブフレームにマウントされる。アーム類はマセラーティ・グランスポーツからの流用だが、アライメントを含めセッティングはもちろん専用。(WS)
モノコックはもとより、アウタースキンはすべてカーボン製。サスペンションは前後ともスチールのサブフレームにマウントされる。アーム類はマセラーティ・グランスポーツからの流用だが、アライメントを含めセッティングはもちろん専用。(WS) 拡大

純度の高いアルファ

たしかにそのパワートレーンとドライブトレーンそのものは、03年のフランクフルトショーでヴェールを脱いだオリジナルのショーカーがそうだったように、マセラーティ・グランスポーツからの流用だ。さっきから素晴らしいエグゾーストノートを聞かせてくれている90度V8はボア・ストローク双方を拡大、94×84.5mmによる4.7リッターの排気量を獲得した結果、450ps/7000rpm、47.9kgm/4750rpmにまで増強されたパワーとトルクを発揮しているが、それをファットなリアタイア(ピレリP ZERO)に伝えるグラツィアーノ製6段セミATをデフと共にリアアクスルに配置するトランスアクスル・レイアウトも、4輪ダブルウィッシュボーンのサスペンションも、グランスポ−ツと基本的に同じものだ。

ギアボックスがオート/マニュアルというふたつのモードを持ち、さらにその双方でノーマル/スポーツという2種類のセッティングを選べることも同じである。雪道等、路面のμが極端に低い場面を想定したローフリクションモードも用意されている。

しかしだからといって単なる派生モデルと捉えるのはあまりに早計といえるだろう。同じグループ内の技術的リソースを活用しながら、8Cコンペティツィオーネ・オリジナルのテクノロジーも導入し、非常に純度の高いアルファに仕上がっている。
(後編につづく)

(文=加藤哲也/写真=フィアット・オート・ジャパン、Wolfango Spaccarelli/『NAVI』2007年12月号)

スチール製のフロアパネルとトランスアクスル・レイアウトがわかる。4輪ダブル・ウィッシュボーン・サスペンンションは前後ともサブフレームを介してマウントされるが、過大なコンプライアンスを感じさせないのは流石だ。
スチール製のフロアパネルとトランスアクスル・レイアウトがわかる。4輪ダブル・ウィッシュボーン・サスペンンションは前後ともサブフレームを介してマウントされるが、過大なコンプライアンスを感じさせないのは流石だ。 拡大
オート/マニュアルの基本モードが用意される他、それぞれノーマルとスポーツが選べる。これにローフリクションモードを加え、設定は全5種類。ただし可変ダンパーは備わらない。
オート/マニュアルの基本モードが用意される他、それぞれノーマルとスポーツが選べる。これにローフリクションモードを加え、設定は全5種類。ただし可変ダンパーは備わらない。
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