アウディR8(4WD/2ペダル6MT)【試乗記】
R8は朝青龍だ 2008.02.06 試乗記 アウディR8(4WD/2ペダル6MT)……1924.0万円
アウディにとって久々の専用設計となるスポーツカー「R8」。一般公道で感じられるその個性を、良きライバル「日産GT-R」と比べてみる。
GT-Rより尖った存在
「なんでいまさらR8の記事なの??」と思ったみなさん、ちょっと待ってください!! 確かに2007年秋にニッポン上陸した「アウディR8」の試乗インプレッションは、出尽くした感アリ。けれども、R8を取り巻く環境が変わったのだ。
環境の変化とは、「日産GT-R」の登場。この2台は、「4WD」や「2ペダル」などの最新メカニズムで「毎日使えるスーパーカー」を目指すという、同じようなコンセプトを持っている。同条件で同時に乗る厳密な比較テストは機会を改めるとして、GT-Rがデビューしたこのタイミングで、もう一度R8を考えることにはちょっとした意味があるように思う。
数か月ぶりに対面するR8は、圧倒的なスーパーカーだった。一瞬ギョッとするようなルックス、そして車高の低さは、爽やかな朝の街で一種異様な存在感を放っている。東京で見るGT-Rにもそれなりのインパクトがあるけれど、背中に背負ったV8エンジンが透けて見えることも含めて、R8のアピアランスには老若男女を巻き込むパンチ力がある。
そして運転席に乗り込む瞬間、R8のスーパーカーっぷりを思い知らされる。その車高の低さから、「よっこらしょ」とかけ声をかけたくなるくらい身を屈める必要があるのだ。乗降性に限っていえばGT-Rはフツーのクーペだから、おそらくスカートを履いた女性でも楽々乗り込むことができるだろう。けれど、R8は無理。スカートはおろか、腰を痛めている時なども遠慮したい。操縦性云々ではなくそういう意味で、R8は乗り手を選ぶ。
スポーツカーらしい気持ちよさが味わえる
ただし一旦乗り込み、抜群の掛け心地とホールド性を備えたシートに収まればR8は快適だ。スーパーカーとはいえメーター類の配置は従来のアウディの文法通り、整理整頓されているから操作に迷うようなことはない。ゲーム機みたいな(というかゲームの画面そのものの)GT-Rのマルチインフォメーションディスプレイを見た後には、いかにも伝統的、ヨーロッパ的に映る。
ミドに搭載された4.2リッターのV8に火を入れると、アルミ製スペースフレームを通してエンジンの微振動が伝わる。レーシィー!で気持ちが昂ぶる。アクセルペダルを踏み込んで加速して気づくのは、6段MT「Rトロニック」のコツンコツンという変速ショック。同条件で較べたわけではないので断定はできないけれど、GT-Rのほうが変速ショックが小さく、スムーズ&クイックにシフトしていた。
磨き上げられたV8 NAユニットの回転フィールはシャープで、乾いたエグゾーストノートが快感。路面との接地感を確実に伝えるステアリングフィールも含め、実際にどちらが速いかは別としても、“速く走っている気持ち”になるのはGT-RよりR8のほうだ。GT-Rのターボバンから生まれる爆発的な加速は凄まじいが、何度試してもバーチャルというか現実味が薄く感じられたのだ。このあたりの違いについては、ぜひ直接対決で較べてみたい。
次はガソリンスタンドでDSTのテストだ!
デビュー時、「日常的に使える万能スーパーカー」というR8のコンセプトは、いまいちわかりにくかった。「そんな“丸い四角”みたいな話アリ?」みたいな。けれど、GT-Rと比較して考えると、ブッ飛んだデザインやダイレクトな感触など、R8というクルマの個性がくっきりとする。
それは、朝青龍と白鵬の関係に似ている。朝青龍がひとり勝ちしていた頃のイメージは、「とにかく強い」「バケモン」という曖昧なものだった。けれど、同じモンゴル出身でありながら動きの柔らかい白鵬の台頭によって、抜群のスピード感という朝青龍の特徴が明確になった。
R8とGT-Rの限界域での挙動の違いは、いま書店に並んでいる『NAVI』3月号のDST(ダイナミック・セイフティ・テスト)で明らかになっている。ぜひ、『webCG』ではこの2台の日常的な使い勝手を徹底比較、たとえばガソリンスタンド入り口でのDST(段差で・下を擦らないか・テスト)を実施したいと思うのですが、いかがでしょう。
(文=サトータケシ/写真=高橋信宏)

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
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