日産GT-R Premium edition(4WD/2ペダル6MT)【短評(後編)】
アイドルに留まるな(後編) 2008.01.26 試乗記 日産GT-R Premium edition(4WD/2ペダル6MT)……834万7500円
日産が放つスーパーカー、「GT-R」に公道試乗。新型の特徴たる電子装備やトランスミッションの仕上がりを検証する。
特筆すべきトランスミッション
(前編からのつづき)
マルチファンクションディスプレイはGT-Rらしい面白い装置だ。これが初期の額面通りに使えれば、もっと有効活用できる。
たとえば各ギア毎の燃費計、現状では単に上位ギアポジションの方が燃費がいい、という固定表示だけに過ぎないが、登り坂で6速に入れて1000rpm で走るよりも(トルクがあるので走れてしまう)、4速や5速に入れてもっと回転を上げて使う方が、却って燃費がいいことは良く知られる。そんなギアと負荷の関係が動体表示されれば更にいい。現状ではそこまで想定されていない。
GT-Rは数字から予測するより大きなクルマだ。太いタイヤを履くことから、実際の切れ角も限られ、Uターンする時などの回転半径の大きさは相当なものだ。このフル転舵で微速で切り返すようなとき、メカ式のLSDは結構強烈に回転差補正を拒むから、ちょっと勾配があるときなどは特に、ツインクラッチのミートに過酷で、時にプーンと焼ける臭いを発することがある。それでもクラッチの耐久性は十分に高いから、磨耗に対する心配などはないそうだ。
このツインクラッチ(フォルクスワーゲンのDSGタイプ)のセミATは、オートで使う通常の変速はまったくスムーズで、トルコン式ATに慣れた人でも違和感は感じないだろう。マニュアルにした場合、クラッチの繋がりのレスポンスを上げることもできる。6000、7000rpmといったサーキット走行などでの高回転域では、その差を確実に享受できるが、3000rpm 以下で使う実用域ではそれほどの差はない。
この手のものは常時どこかと繋がっていて、変速時のクラッチミートでどちらかを選ぶような記述もあるが、アップする方向で待つかダウンする方向で待つかで異なる。通常はアップする方向で待つのでレスポンスは早いが、ダウンする場合には一旦抜いてから下げるので少し遅れるし、回転合わせでもロスタイムは発生する。だからどちらかといえば、ダウン時のレスポンスの方が待ち時間は長い。
まだ成長する余地がある
ともあれGT-Rは、すべてのレスポンスが素早く、それは先のマルチファンクションディスプレイの横G/縦Gの表示であれ、タコメーターの指示レスポンスであれ、実際のメカ動作よりもモニター表示のほうが遅れるほどだ。
実際に乗る前から、期待値がこれほど大きかったクルマも珍しい。それは先代までのGT-Rの実力から推して当然とも思われる。正直な感想としては、よくも悪くも人気先行の超アイドル車であり、開発期間の短さゆえか、前述のように期待に足りない部分も少し散見される。今後の成長に期待したい。
この新しい開発スタッフによる「日産GT-R」とは別に、これまでのGT-Rを開発してきた人達が、さらに伝統を磨いて「スカイラインGT-R」を作ったとしたら、スカイライン・クーペのできがいいだけに、スタイリングも含めもっと洗練されたクルマに仕上がったに違いない。
新人の育成も企業にとっては大事かもしれないが、クルマを判りかけてきたベテランの仕事による技術の積み重ねの方が、ユーザーにとっての福音は大きいように思う。そんな「スカイラインGT-R」にも乗ってみたかったナー、というのが個人的な本音である。
(文=笹目二朗/写真=峰昌宏)

笹目 二朗
-
BMW X1 sDrive20iオリジナル(FF/7AT)【試乗記】 2026.9.2 BMWのコンパクトSUV「X1」に新グレードの「オリジナル」が登場。走りの楽しさをはじめとしたBMWらしさをキープしつつ、装備の厳選によって価格抑制を図った新たなエントリーグレードだ。都市部におけるドライバビリティーとユーザービリティーをリポートする。
-
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】 2026.9.1 2020年のデビュー以来、間断なく進化を続けてきたコンパクトスポーツの「トヨタGRヤリス」。一般ユーザーの間ではもちろん、コンペティションの世界でもチューニングのかいわいでも光を放つ一台は、2026年モデルでどう進化したのか? その走りを報告する。
-
アウディQ3スポーツバックTFSIクワトロ150kWアドバンスト(4WD)【試乗記】 2026.8.31 フルモデルチェンジした「アウディQ3スポーツバック」に試乗。プラットフォームやパワートレインこそ従来型の改良版ではあるものの、内外装のデザインやインフォテインメント、効率性のすべてにおいて大幅な進化を遂げたという。その仕上がりやいかに。
-
トヨタbZ4XツーリングZ(4WD)【試乗記】 2026.8.29 「トヨタbZ4X」にワゴンのようなロングボディーを持つ「ツーリング」が登場。ただ長くなっただけではなく、今回試した4WDモデルではパワーもアップ。乗り味にも微妙な影響を及ぼしているから見逃せない。経路充電を試しつつ、370km余りをドライブした。
-
BMW 120オリジナル(FF/7AT)【試乗記】 2026.8.25 BMWの主要モデルに新グレードの「オリジナル」が設定された。位置づけとしては新たなエントリーグレードということになるが、BMWらしさを損なうことなく装備を厳選し、価格を抑えたのがポイントだという。「1シリーズ」の「120オリジナル」の仕上がりをリポートする。
-
NEW
北米産の800万円級SUV「トヨタ・ハイランダー」「日産ムラーノ」「ホンダ・パスポート」で一番“買い”なのはどれか?
2026.9.4デイリーコラム特例により国内導入されることになった北米生産のジャパニーズSUVは、3車種ともにサイズと価格帯が接近している。では、そのなかで最も“買い”なのは? それぞれの仕様を見比べてみた。 -
ホンダがコンセプトモデル「アキュラ・ネクセラ ビジョン」を発表 次世代デザインを読み解く
2026.9.3デイリーコラム本田技研工業の米国現地法人アメリカン・ホンダモーターが、アキュラブランドの次世代デザインを示すというコンセプトモデル「ネクセラ ビジョン」を初公開した。バタフライドアを採用するこのスポーツカーは、次世代アキュラの何を表現しているのか。 -
BMW iX3 50 xDrive Mスポーツ(後編)
2026.9.3あの多田哲哉の自動車放談ワインディングロードで新型「BMW iX3」のステアリングを握った多田哲哉さんは、その走りに感心した様子。どんなところが優れているのか、トヨタのエンジニアの視点で語ってもらおう。 -
新型「三菱パジェロ」の外装・内装を写真でチェックする
2026.9.2画像・写真5年間のブランクを経て、三菱のフラッグシップSUV「パジェロ」がついに復活! 「グランドカリスマ -泰然自若-」をコンセプトにデザインされた本格クロスカントリーモデルは、どのような姿をしているのか? 内外装の詳細を、写真で紹介する。 -
復活の決め手はこっくりさん!? 新生「三菱パジェロ」誕生の経緯とその狙い
2026.9.2デイリーコラム5年間の沈黙を経て、ついに登場した新型「三菱パジェロ」。スリーダイヤモンドが誇る荒野のフラッグシップは、いかにして復活を遂げたのか? 開発の経緯や内外装デザインの詳細、パワートレインに見るクルマの“狙い”をリポートする。 -
第127回:新型BMW X5(後編) ―迷走するBMW 結局アナタは“ノイエクラッセ”でなにがしたかったの?―
2026.9.2カーデザイン曼荼羅その姿が明らかとなるや、賛否両論を巻き起こしている新型「BMW X5」。このクルマは既存のBMW製SUVとはなにがちがうのか? そもそもBMWは“ノイエクラッセ・デザイン”になにを託していたのか? カーデザインの識者と、迷走するBMWの明日を探った。





























