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第347回:GT-R教の“新”教祖様降臨! 
登場、カルロス・ゴーンを洗脳した男

2007.12.28 小沢コージの勢いまかせ! 小沢 コージ
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第347回:GT-R教の“新”教祖様降臨! 登場、カルロス・ゴーンを洗脳した男

キャラの立ちすぎたエンジニア

ってなわけで、新型「GT-R」のちょい乗りインプレッションはすでにレポートしたとおり。でも、それ以上に面白かったのが、これまた新型“ミスターGT-R”こと水野和敏さんとのトークだ。

彼は新型GT-Rの開発責任者で、日産では珍しくCVEとCPS、つまり商品開発と商品企画で責任が分かれている体制を一本化させた“特例の人”。
名作、初代「プリメーラ」や「スカイライン(R32)」の基本パッケージを作り上げただけでなく、1990年前後にはニスモに出向して日産Cカーによる耐久レース活動のチーム監督まで勤め、デイトナ24時間レースで勝ったり、ルマンに出たり、イマドキ珍しく市販車からレーシングカーまで精通している人なのだ。ウワサでは、あのトップレーサー、鈴木利男さんを育てたとも言われている。

で、すでに雑誌やネットに出まくってるから知ってる人も多いと思うけど、この人のなにがすごいって、その強烈なキャラクターだ。とにかく実際会ってみると、独特の風貌と語り口に圧倒される。まさに理想主義的エンジニアとしてのリクツと、純粋なクルマ好きとしての情熱が、落語家も真っ青の弁舌滑らかな口元から放出されまくり、まさしく“水野ワールド”を形成するのだ。俺が連載中の『ベストカー/愛のクルマバカ列伝』にも躊躇なく出てくれたりするいまどき珍しくキャラの立った(立ちすぎた?)エンジニアでもある。

今回は、最近耳にした「水野さんが開発トップになったのは、得意のホワイトボード講義であのカルロス・ゴーン氏を洗脳したから(!?)」というウワサをたしかめる、またとないチャーンス! ってわけ。

偉大なる教祖様と慣れなれしくしてスイマセン……。
偉大なる教祖様と慣れなれしくしてスイマセン……。 拡大
まさにリクツの塊! 徹底的に日本的に匠のワザを使って合理的に作られた「新型GT-R」!
まさにリクツの塊! 徹底的に日本的に匠のワザを使って合理的に作られた「新型GT-R」! 拡大

「君、GT-Rの開発になったから」

小沢: 早速ですけど、今回水野さんが開発のチーフになったのはどういう経緯なんですか。聞けば、あのゴーンさんを“洗脳”させたからってウワサもあるんですが。もちろん例のホワイトボード講義で(笑)。
水野: いや違うね。それまで直接やりあったことはなくって、俺がゴーンさんにGT-Rを任されたのは突然のことだったの。たしか2002年に「フェアレディZ」の開発と「FX45」の開発が終わって、別の人に「GT-Rもやってくれるかい?」って打診されて一度断ったことがある。前の2台とは同じ文脈でできないってね。
小沢: ふむふむ。
水野: それでその年はたまたま先行開発をやってる人がいたんで、一緒にドイツのニュルブルクリンクで「アウディA8」のアルミボディとかBMWとかを乗り比べてた。そしたら担当重役から国際電話がかかってきて「GT-Rの開発になったから」って突然言われたのよ。

小沢: ゴーンさんとは?
水野: その後日本に帰ってゴーンさんと会ったのが初。しかも会っていきなり「俺が“ミスターGT-Rに任命したから”って」言いつつギュッと両手を握られてね。そこまでやられたら受けるっきゃないでしょう。日本人的には(笑)。
小沢: しかし、いきなりですねぇ。ホントにそれまでゴーンさんと直接会ったことはなかった?
水野: なかった。Zをやった時にどこかで話ぐらい聞いてくれてはいただろうけどね。
小沢: ウワサは聞いてたんですか。
水野: 兆候はあったよ。その年の12月にいきなりフランスのサスメーカーの人がいきなり僕に会いに来たし、当時の開発担当のパトリック・ペラタ副社長にプレゼンに行けとも言われたしね。

試乗会の後の夜の懇談会で。なにごともこの方がしゃべらないと始まらない!
試乗会の後の夜の懇談会で。なにごともこの方がしゃべらないと始まらない! 拡大
実はその後カラオケに。「俺の話を聞け〜」のタイガー&ドラゴンを歌ったら妙にウケました(笑)。
実はその後カラオケに。「俺の話を聞け〜」のタイガー&ドラゴンを歌ったら妙にウケました(笑)。 拡大

本当のパワープレゼンテーション

(ここで突然広報マン登場)
――実は昔、とある役員から「水野さんが元々ゴーンさんの心に刺さっていた」って話を聞いたことがあります。最初は1998年、ルノーが日産と提携しようと調査していたころで、当時、初代プリメーラのパッケージとXVL、つまり今のスカイラインのFMプラットフォームを見て、ルノー側が「赤字の会社なのにこんなことやってたのか?」って驚いたらしい。それと同時に、それを両方やった水野さんにも注目した。
それから2001年のV35スカイラインのプレゼンの時にも、ゴーンは「あれが本当のパワープレゼンテーションだ」って感動してたらしいんですよ。「原稿のあるプレゼンは受けたくない」って。
小沢: それってやっぱりホワイトボード入り?
―― もちろん(笑)
小沢: なんだ。やっぱりゴーンさんも洗脳させてたんじゃないですか。
水野: いやそれは僕も知らなかった。ただ、その後もゴーンさんは役員会を吹っ飛ばして俺と3、4人で毎月ミーティングしたんだけどね。
小沢: やっぱりそうか。ゴーンさんも俺と同じく水野節にハマったクチなんですね。リクツっぽくって熱いトークに(笑)。
水野: (苦笑)

ってなわけで、まさしく“新GT-R教”の教祖様に就任した水野さん。その熱さと芯の通ったトークはたまりませんよ。マジ、結構そこらじゅうでしゃべってるみたいだから一度聞いてみるといいと思います。好きな人は絶対ハマるから。苦手な人はわかんないけど……って当たり前か(笑)。

(文と写真=小沢コージ)

これが伝説のホワイトボード説法!!
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小沢 コージ

小沢 コージ

神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』

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