BMW550iツーリング(FR/6AT)【試乗記】
変わらぬダイナミズム 2007.12.06 試乗記 BMW550iツーリング(FR/6AT)……1023万円(車両本体価格)
“M”を除けば最上位グレードとなる「550iツーリング」。『CG』高平高輝がマイナーチェンジ後の変更点と走行性能を検証した。
『CAR GRAPHIC』2007年10月号から転載。
フラつかない
ジョイスティックのようなATレバーの感触を確かめながら表通りに出て加速した途端、ブブブブブッとステアリングホイールが震えた。エッ、走り出していきなりパンク? ランフラットなのに? と慌てたが、どうも様子が違う。後で確認してみると、やはりこの550iツーリングには一部の日本車と同じようなレーン・ディパーチャー・ウォーニング(車線逸脱警告システム)なるものが装備されていた。BMWはこれ見よがしの表示をしないので目に付きにくいが、どうやら新しい5シリーズは電子装備満載らしい。
M5を含めた5シリーズ・セダン/ツーリングの全モデルがいわゆるビッグマイナーチェンジを受けて6月末に国内発売された。マイナーチェンジの主眼は装備の拡充と使い勝手の向上で、エクステリアの変更点は多くない。ヘッドライトがクリアガラスになって切れ長の“鷹の目”がより強調されたこととエアインテーク周辺の形状が若干変更されたこと、リアのコンビネーションライトにもクリアレンズが採用され、ウィンカーがLED式に変更されたことぐらいだ。
![]() |
BMW流の譲歩
インテリアではやはりゲームのコントローラーのような斬新な形状のATセレクターが目立つ。左側に倒せばスポーツモード、そこから前後に動かしてマニュアルセレクト可能という設定は従来どおりだが、もはやゲートが切ってあるわけではなく、手を離すと常に中立に戻る純粋な電気スイッチで、パーキングレンジは頂部にあるボタンを押して選択する。また自慢のiDriveも改良されている。センターコンソール下部には新たに8個のプログラマブルボタンが並び、それぞれによく使う機能を割り当てられるという。たとえばナビの目的地をセットしたり、ラジオの交通情報を予め割り当てておけばワンタッチで望む機能を呼び出せる。交通情報を聞く時でも、いくつもの階層を掘っていかなければならないiDriveの操作性を改善したというわけだが、それでもボタン自体には数字が振ってあるだけで、割り当てた機能が軽く触れるとディスプレイ下部に表示されるという手法は、いかにも見た目の煩雑さを嫌うBMWらしいこだわりだ。
他にも今回からアダプティブ・ヘッドライトやコンフォート・アクセス(スマートキー機能)が全車に標準装備となり、さらにこの550iツーリングでは電動パノラマ・ガラスサンルーフやヘッドアップ・ディスプレイなどもスタンダード。オプションとしては冒頭のレーン・ディパーチャー・ウォーニング(10万円)、ナイトビジョン(27万5000円)、オートマチック・テールゲート(10万8000円)、そしてMスポーツ・パッケージ(21万5000円)などが盛り込まれており、1023万円の本体価格にオプション装備を加えた総額は1108万円に上る。もちろんM5(1360万円)を除けばシリーズ中のトップモデルである。
飛ばすと輝く
550iツーリングには本来、アクティブ・スタビライザーがロールを制御するダイナミック・ドライブも標準装備されるのだが、ノーマル比車高が15mm低くなるスポーツサスペンションや245/40R18タイアなどで構成されるMスポーツ・パッケージを装着した場合は同システムを選ぶことはできない。それもあってこの車は街中ではやはり硬さのほうが目立ったが、高速道路に乗ってスピードを上げると途端に角が取れ、文句のない乗り心地となる。
これ見よがしなリアスポイラーなどなくても、スピードが増せば増すほど吸いつくように走る安心感、快適さは一度経験すると忘れられなくなること請け合いだ。この点が依然として日本車のプレミアムセダン/ワゴンとの最大の違いかもしれない。いかに安全・快適装備を充実させようとダイナミックな性能が第一、自分たちのスイートスポットがどこにあるかを嫌らしいほど熟知しているBMWは、相変わらず独自の車線の真ん中を少しもぶれずに突っ走っている。
(文=高平高輝/写真=小林俊樹・ARGOS/『CAR GRAPHIC』2007年10月号)

高平 高輝
-
スズキ・エブリイJリミテッド(MR/CVT)【試乗記】 2025.10.18 「スズキ・エブリイ」にアウトドアテイストをグッと高めた特別仕様車「Jリミテッド」が登場。ボディーカラーとデカールで“フツーの軽バン”ではないことは伝わると思うが、果たしてその内部はどうなっているのだろうか。400km余りをドライブした印象をお届けする。
-
ホンダN-ONE e:L(FWD)【試乗記】 2025.10.17 「N-VAN e:」に続き登場したホンダのフル電動軽自動車「N-ONE e:」。ガソリン車の「N-ONE」をベースにしつつも電気自動車ならではのクリーンなイメージを強調した内外装や、ライバルをしのぐ295kmの一充電走行距離が特徴だ。その走りやいかに。
-
スバル・ソルテラET-HS プロトタイプ(4WD)/ソルテラET-SS プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2025.10.15 スバルとトヨタの協業によって生まれた電気自動車「ソルテラ」と「bZ4X」が、デビューから3年を機に大幅改良。スバル版であるソルテラに試乗し、パワーにドライバビリティー、快適性……と、全方位的に進化したという走りを確かめた。
-
トヨタ・スープラRZ(FR/6MT)【試乗記】 2025.10.14 2019年の熱狂がつい先日のことのようだが、5代目「トヨタ・スープラ」が間もなく生産終了を迎える。寂しさはあるものの、最後の最後まできっちり改良の手を入れ、“完成形”に仕上げて送り出すのが今のトヨタらしいところだ。「RZ」の6段MTモデルを試す。
-
BMW R1300GS(6MT)/F900GS(6MT)【試乗記】 2025.10.13 BMWが擁するビッグオフローダー「R1300GS」と「F900GS」に、本領であるオフロードコースで試乗。豪快なジャンプを繰り返し、テールスライドで土ぼこりを巻き上げ、大型アドベンチャーバイクのパイオニアである、BMWの本気に感じ入った。
-
NEW
トヨタ・カローラ クロスGRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】
2025.10.21試乗記「トヨタ・カローラ クロス」のマイナーチェンジに合わせて追加設定された、初のスポーティーグレード「GRスポーツ」に試乗。排気量をアップしたハイブリッドパワートレインや強化されたボディー、そして専用セッティングのリアサスが織りなす走りの印象を報告する。 -
NEW
SUVやミニバンに備わるリアワイパーがセダンに少ないのはなぜ?
2025.10.21あの多田哲哉のクルマQ&ASUVやミニバンではリアウィンドウにワイパーが装着されているのが一般的なのに、セダンでの装着例は非常に少ない。その理由は? トヨタでさまざまな車両を開発してきた多田哲哉さんに聞いた。 -
2025-2026 Winter webCGタイヤセレクション
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2025-2026 Winterシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。一年を通して履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけ、より進化したスタッドレスタイヤか。最新ラインナップを詳しく紹介する。 -
進化したオールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2」の走りを体感
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>欧州・北米に続き、ネクセンの最新オールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2(エヌブルー4シーズン2)」が日本にも上陸。進化したその性能は、いかなるものなのか。「ルノー・カングー」に装着したオーナーのロングドライブに同行し、リアルな評価を聞いた。 -
ウインターライフが変わる・広がる ダンロップ「シンクロウェザー」の真価
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>あらゆる路面にシンクロし、四季を通して高い性能を発揮する、ダンロップのオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」。そのウインター性能はどれほどのものか? 横浜、河口湖、八ヶ岳の3拠点生活を送る自動車ヘビーユーザーが、冬の八ヶ岳でその真価に触れた。 -
第321回:私の名前を覚えていますか
2025.10.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。24年ぶりに復活したホンダの新型「プレリュード」がリバイバルヒットを飛ばすなか、その陰でひっそりと消えていく2ドアクーペがある。今回はスペシャリティークーペについて、カーマニア的に考察した。