第18回:諸君、緊急指令だ!売れ残りトリノ五輪グッズを手に入れよ
2007.11.25 マッキナ あらモーダ!第18回:諸君、緊急指令だ! 売れ残りトリノ五輪グッズを手に入れよ
海洋博のキーホルダー
カー&インダストリアル・デザイナーの奥山清行氏は、1970年大阪万国博に展示された「ピニンファリーナ・モデューロ」を見て、自動車デザインの道を志したという。
ボク自身の少年時代に行なわれたイベントといえば、1975〜76年の沖縄海洋博であった。ある日同級生が、自慢げに来場記念キーホルダーを持ってきた。幼稚園やマンションも経営する、大きなお寺の娘だった。
ボクも、その博覧会の呼び物のひとつだった、富士重工開発による無人運転新交通システムに乗りたくて仕方がなかった。今日の「ゆりかもめ」のさきがけのようなものだったと記憶している。
しかし倹しい生活をしていた我が家にとって、沖縄に行くことなど今の海外旅行以上の行為だったため、やむなく断念。住職の娘のランドセルに揺れるキーホルダーを、羨ましげに眺める日々が続いたのを覚えている。
20年後の自慢アイテム
さてイタリアにおけるここ数年でいちばん大きな国際イベントといえば、2006年2月に行なわれたトリノ冬季オリンピックであろう。それを機会に、地元では初めての地下鉄が開通した。
いっぽうで、五輪を機会に開始された各種工事で、いまだ終わっていないものもあちこちに散見される。たとえば中央駅の機能をひとつ手前の駅に移動させる、という大プロジェクトも始まったものの、まだ終わっていない。
日本人のボクなどは、「なぜ後から着工した大プロジェクトの東京ミッドタウンのほうが、先に完成してしまうのか?」という疑問が浮かぶが、これがイタリア。仕方ない。
五輪には、フィアットグループがさまざまな形でオフィシャルスポンサーやサプライヤーを引き受けた。それにリンクして開幕前には、「フィアット」「アルファ・ロメオ」「ランチア」各車のリアウインドウに、「TORINO2006」の透明ステッカーが貼られて出荷された。直射日光による経年変化でパリパリになるのさえ気をつけていれば、20年くらい後のカーイベントで自慢できるに違いない。
公式ミニカーも製作された。新型「パンダ」と先代「ドゥカート」バンに、トリノ五輪のシンボルマークがプリントされたものだった。
「スノーレッツ」の二の舞に?
しかしながら悲しむべきは、イタリアで1年半以上たった今もそのミニカーが売られていることだ。パンダはどうにか完売したらしいのだが、ドゥカートのほうは今も各地でミニカー屋さんやミュージアムショップの店頭にだぶついているのである。
そもそも雪と氷をかたどった男女のマスコット、「ネーヴェ」と「グリッズ」が可愛くなくて不評、というのは開幕以前から聞いていた話だ。ミニカーも売れ残っているとは、これまた悲しい。
さらに先日、イタリアで最近流行中の巨大アウトレットモールで、トリノ五輪デイパックが3点15ユーロ、10点40ユーロで売られているのを目撃した。円にしてひとつ約650円の投げ売りだ。
だが前述のように海洋博覧会の悔しい思い出を今に引きずるボクである。思わず、こうした五輪グッズを買いあさっておこうかと思ってしまうのだ。缶コーヒーの渡哲也風にいえば、「諸君、緊急指令だ」である。
そんなとき、ふと思い出したのは1985年の筑波科学万博だった。閉幕直前に訪れたボクは、大会マスコット「コスモ星丸」のキーホルダーやシールを、格安になっていたこともあって大量購入した。やがて家に帰って頭を冷やしてみると、こっ恥ずかしくて学校にも持ってゆけず、閉幕後のイベントグッズを知人にあげるのも気が引けて、まったくもって困った。
結局信州の親戚のところに放置してきたのだが、十数年後、今度は長野五輪大会マスコット「スノーレッツ」ぬいぐるみ3体セット贈呈という仕返しを喰らうことになった。トリノ五輪商品も同様の末路を辿るに違いない。
ここで一句。おもしろて、やがて悲しき公式グッズ。
(文=大矢アキオAkio Lorenzo OYA/写真=大矢アキオ、FIAT)

大矢 アキオ
Akio Lorenzo OYA 在イタリアジャーナリスト/コラムニスト。日本の音大でバイオリンを専攻、大学院で芸術学、イタリアの大学院で文化史を修める。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとしてシエナに在住。NHKのイタリア語およびフランス語テキストや、デザイン誌等で執筆活動を展開。NHK『ラジオ深夜便』では、25年間にわたってリポーターを務めあげる。『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり』(コスミック出版)など著書・訳書多数。近著は『シトロエン2CV、DSを手掛けた自動車デザイナー ベルトーニのデザイン活動の軌跡』(三樹書房)。イタリア自動車歴史協会会員。
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