ホンダ・フィット L(FF/CVT)/RS(FF/CVT)【試乗記】
ホンダのこだわり 2007.11.19 試乗記 ホンダ・フィット L(FF/CVT)/RS(FF/CVT)……193万2000円/214万2000円
ホンダのコンパクトカー「フィット」が、2代目にバトンタッチ。車体からエンジンまで完全新設計というベストセラーモデルの仕上がり具合は、いかに?
小さなサラブレッド
「ホンダ・フィット」は、登場後6年が経過して予定されたモデルチェンジを敢行した。旧型もモデル末期でありながら最後の月まで月販1万台を維持していたのだから立派なものだ。魅力は未だ衰えずといったところだが、新型も発表1週間で1万台以上の予約を受けるなど、滑り出しは好調と伝えられる。
新型フィットは、「成功車」である先代のコンセプトを継承しながらも、細部にわたって改良されている。4mを切るコンパクトな外寸はそのままに、より室内の居住空間を広げる努力がなされ、実際に乗ってみると室内幅はもとより、リアシートの居住性が大幅に向上していることがすぐわかる。
搭載されるエンジンは1.3リッターと1.5リッターの2種類で、それぞれ100psと120psにチューンされるが、1.3は特に燃料経済性に重きをおき、今回トルコンを付加して変速のスムーズさを大きく向上させたCVTとのみ組み合わされる。
そして1.5はさらなるパフォーマンスを指向している。MTで乗りたいユーザーは少数派ながらも頑として存在するが、彼らがMT仕様を優先的に選ぶとなると、この1.5にしか用意されていない。
こだわりは随所に
エンジンの排気量差は、73mmのボアを共用しストロークを80.0mmと89.4mmにすることで得ている。コンロッドは同じ長さのものを使い、ブロック側の長さを変えている。バルブ駆動系の違いも理由ではあるが、このあたりにホンダらしいこだわりが感じられる。
またCVTにトルクコンバーターを加えて、発進時のスムーズさを実現している例は他にもあるが、ホンダはコンバーターとベルト/プーリーの間にオン/オフ・クラッチを介入させ、ニュートラル時にはベルトを止めておく。このように燃費や騒音対策も、技術的に追求している。
廉価なクラスではあるが、努力は惜しまない。この結果10・15モードで24.0km/リッターの好燃費を実現している。
走り出す前に、フィット最大の特徴であるボディを見てみよう。ディテールの処理で旧モデルの面影は残すものの、120mmも前進させたAピラーを大きく寝かせ、短いノーズにスムーズに繋げている。この全体のフォルムはモノスペース的で、最近の世界的な流れであるMM(マン・マキシマム=メカ・ミニマム)思想を強く追求している。
室内からノーズはまったく見えないが、その絶対値は短いし見切りは低いし、ドア前の三角窓とドアミラーの処理もうまくいっており、視界はとてもよろしい。微細な希望を言えば、ミラーの形状を左右入れ替えて、下を平らに上を丸めた方が足元を見たい時には便利だろう。
|
軽快で楽しめる
まず1.3の方から試す。ちょっとためらいながらトンと繋がった旧型に比べ、これは実に滑らかな発進が可能だ。それも早めにロックアップが働いてトルコンスリップを止めてしまうので、ソリッドにしてスムーズな動きに高級感さえある。
またCVTの特性上変速ショックの類はまったく発生せず、たとえば料金所あとの0-100km/h加速などは、息もつかせぬ強力なGがそのまま長く続く。たとえは巧くないかもしれないが、ローギアのG感覚のまま2速はおろか3速の領域まで繋ぎ目のないまま続く、という感じだ。そして一旦クルージング状態になれば、100km/hは2000rpmに相当し、十分に静粛な移動空間となる。
|
全高は1525mmと旧モデルと同じで、立体駐車場にも駐めることができるが、見た目からも予想されるように重心高もそれなりに高い。
サスペンションは、フロントがマクファーソンストラット、リアはトーションビームであるが、最近のホンダ車はちゃんと普通にロールセンターを高く採るようになり、ロールが不安なこともない。乗り心地はロングホイールベースの恩恵もあり、概ねフラットな姿勢に終始し快適である。
|
リアシートも試してみた。ワンタッチで折り畳める構造は簡単にして効率的であるが、座面をささえる支柱が丸見えで、イカニモ……的に思えたものの、これは足を後ろに曲げても納まるのだし、カカトの後ろに空間があるのは広々感が得られるものだ。トーボードは前端が高い傾斜となっており、センターガスタンクレイアウトの派生効果といえる。
車両重量はFFで1010kgから1030kg程度と軽く、総じて軽快で乗って楽しい種類のクルマである。
1.5の方は、以前はロゴマークの色を青と赤に分けて排気量の識別ができたが、新型はそうした目印はない。1.5専用の「RS」というタイプ名は「レーシングスポーツ」ではなく「ロードセイリング」の略だという。
パワーで20psのアップとなるが、ネームの意味するところに従い過激な性格ではなく、走りに余裕をもたせたという程度。CVT(FF)の場合、1.3に比べるとファイナルが同じで、タイヤサイズは標準で14インチから15インチにアップ。ギアリングも若干アップすることから、元気さを感じるほどではない。むしろ切れ角が少なくなり回転半径は増えるし、23万円の価格差を考慮すると判断は難しい。
とはいえ、今回は試乗車が用意されなかったものの、どうしてもMTで乗りたいユーザーにとってはこのRSの存在は気になるところだ。
(文=笹目二朗/写真=峰昌宏)

笹目 二朗
-
シトロエンC3ハイブリッド マックス(FF/6AT)【試乗記】 2025.10.31 フルモデルチェンジで第4世代に進化したシトロエンのエントリーモデル「C3」が上陸。最新のシトロエンデザインにSUV風味が加わったエクステリアデザインと、マイルドハイブリッドパワートレインの採用がトピックである。その仕上がりやいかに。
-
メルセデス・マイバッハSL680モノグラムシリーズ(4WD/9AT)【海外試乗記】 2025.10.29 メルセデス・ベンツが擁するラグジュアリーブランド、メルセデス・マイバッハのラインナップに、オープン2シーターの「SLモノグラムシリーズ」が登場。ラグジュアリーブランドのドライバーズカーならではの走りと特別感を、イタリアよりリポートする。
-
ルノー・ルーテシア エスプリ アルピーヌ フルハイブリッドE-TECH(FF/4AT+2AT)【試乗記】 2025.10.28 マイナーチェンジでフロントフェイスが大きく変わった「ルーテシア」が上陸。ルノーを代表する欧州Bセグメントの本格フルハイブリッド車は、いかなる進化を遂げたのか。新グレードにして唯一のラインナップとなる「エスプリ アルピーヌ」の仕上がりを報告する。
-
メルセデスAMG S63 Eパフォーマンス(4WD/9AT)【試乗記】 2025.10.27 この妖しいグリーンに包まれた「メルセデスAMG S63 Eパフォーマンス」をご覧いただきたい。実は最新のSクラスではカラーラインナップが一気に拡大。内装でも外装でも赤や青、黄色などが選べるようになっているのだ。浮世離れした世界の居心地を味わってみた。
-
アウディA6スポーツバックe-tronパフォーマンス(RWD)【試乗記】 2025.10.25 アウディの新しい電気自動車(BEV)「A6 e-tron」に試乗。新世代のBEV用プラットフォーム「PPE」を用いたサルーンは、いかなる走りを備えているのか? ハッチバックのRWDモデル「A6スポーツバックe-tronパフォーマンス」で確かめた。
-
NEW
これがおすすめ! 東4ホールの展示:ここが日本の最前線だ【ジャパンモビリティショー2025】
2025.11.1これがおすすめ!「ジャパンモビリティショー2025」でwebCGほったの心を奪ったのは、東4ホールの展示である。ずいぶんおおざっぱな“おすすめ”だが、そこにはホンダとスズキとカワサキという、身近なモビリティーメーカーが切り開く日本の未来が広がっているのだ。 -
NEW
第850回:10年後の未来を見に行こう! 「Tokyo Future Tour 2035」体験記
2025.11.1エディターから一言「ジャパンモビリティショー2025」の会場のなかでも、ひときわ異彩を放っているエリアといえば「Tokyo Future Tour 2035」だ。「2035年の未来を体験できる」という企画展示のなかでもおすすめのコーナーを、技術ジャーナリストの林 愛子氏がリポートする。 -
NEW
2025ワークスチューニンググループ合同試乗会(前編:STI/NISMO編)【試乗記】
2025.11.1試乗記メーカー系チューナーのNISMO、STI、TRD、無限が、合同で試乗会を開催! まずはSTIの用意した「スバルWRX S4」「S210」、次いでNISMOの「ノート オーラNISMO」と2013年型「日産GT-R」に試乗。ベクトルの大きく異なる、両ブランドの最新の取り組みに触れた。 -
小粒でも元気! 排気量の小さな名車特集
2025.11.1日刊!名車列伝自動車の環境性能を高めるべく、パワーユニットの電動化やダウンサイジングが進められています。では、過去にはどんな小排気量モデルがあったでしょうか? 往年の名車をチェックしてみましょう。 -
これがおすすめ! マツダ・ビジョンXコンパクト:未来の「マツダ2」に期待が高まる【ジャパンモビリティショー2025】
2025.10.31これがおすすめ!ジャパンモビリティショー2025でwebCG編集部の櫻井が注目したのは「マツダ・ビジョンXコンパクト」である。単なるコンセプトカーとしてみるのではなく、次期「マツダ2」のプレビューかも? と考えると、大いに期待したくなるのだ。 -
これがおすすめ! ツナグルマ:未来の山車はモーターアシスト付き【ジャパンモビリティショー2025】
2025.10.31これがおすすめ!フリーランサー河村康彦がジャパンモビリティショー2025で注目したのは、6輪車でもはたまたパーソナルモビリティーでもない未来の山車(だし)。なんと、少人数でも引けるモーターアシスト付きの「TSUNAGURUMA(ツナグルマ)」だ。








































