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【スペック】全長×全幅×全高=4469×1852×1285mm/ホイールベース=2350mm/車重=1440kg/駆動方式=RR/3.6リッター水平対向6DOHC24バルブターボインタークーラー付き(530ps/6500rpm、69.4kgm/2200-4500rpm)(欧州仕様)

ポルシェ911 GT2(RR/6MT)【海外試乗記】

サーキット育ち 2007.11.16 試乗記 河村 康彦 ポルシェ911 GT2(RR/6MT)

2007年9月のフランクフルトショーで発表された「911 GT2」。最高出力530psのパワーに低燃費を謳う新型はどんな走りを見せるのか。ドイツで試乗した。
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ポルシェの巧み

ポルシェの2006〜2007事業年度、すなわち2007年7月末日までの1年間の販売台数と総売上高が、共に史上最高を記録した。ガソリン価格の記録的高騰が続くアメリカでの販売台数は前年度比で1割強のマイナスとなったものの、それを中国やロシアといった“新たな市場”に代表される他の地域での伸びが補った。いまや年間生産台数10万の大台を突破しているのが、ポルシェの現状だ。

シュトゥットガルトの“したたかさ”は ――もちろんハードウェアのでき栄えの凄さもさることながら! ―― スポーツカーの売り方とは何たるか、を知り尽くした賢いマーケティング戦略によるところ極めて大だと思う。要は「高価なスポーツカーを買ってくれる人など、世の中には限られたもの。ならば、そうした“限られたパイ”のなかに居る人の購買心をいかにくすぐってリピーターに育てるか」というまさにこの点を、何とも巧みな手法で突いている。

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最速911

最高速が329km/hで0→1000m加速は20.7秒……という新型「GT2」のスペックを耳にした時、改めてこのブランドのマーケティング能力の高さを感じずには居られなかった。このデータは、“スーパーカー”たる「カレラGT」の値に較べてみればほんの1km/h(!)とコンマ7秒だけのビハインド。一方で、これまで「最速の911」という称号が与えてきた「GT3」との間では、今度は19km/hとコンマ3秒こちらが上回るという関係を持つ。

つまり、“最速のポルシェ”というタイトルはカレラGTの頭上に掲げたままに、微妙なサジ加減(?)によって“最強最速の911”という冠言葉を手中に収めたのが今度のGT2。何が何でも「最速の911が欲しい」というお金持ちのなかには、ようやくガレージに収まったばかりのGT3を、GT2に乗り換えたいと思う人だって現れないとは限らない。そうした需要が回っているからこそ、ポルシェの「業績絶好調!」というニュースが延々と続いているのだ。

フルブースト!

新しいGT2の心臓に火を入れる。左右の太い排気管から吐き出されるサウンドがベースである「ターボ」のそれとはやや異質と感じられるのは、マフラーが「スチールよりも約50%軽量」というチタン製であることも関係していよう。これを含め、吸排気系をメインとしたリファインで「ターボ」用比で50ps増しの、実に530psという最高出力を手に入れたのが、まずは新型GT2の大きな特徴。
なかでもキモとなったのは、“エクスパンションインテークシステム”と呼ばれるもの。最高出力発生ポイント付近での吸気温度を最大20℃ほど低減することでパワーと燃費に効果がもたらすという。特許出願中のアイテムだ。

さて“エクスパンションインテーク”の効果がいかばかりの部分を占めることになるのかは正直定かではないが、とにかく、フルブースト時のGT2の加速力ときたら、それはもうとんでもない強力さだ。ドライ路面上でも1速2速といった低いギアでのフルアクセルでは簡単にホイールスピンをおこしそうになる。
タコメーター上のレッドラインは6800rpmの設定だが、4000rpmも回っていれば完全なフルブースト=パワーゾーンに入る。典型的な高回転・高出力型であるGT3エンジンとはまさに対照的なキャラクターの持ち主といってもいい。
一方で、そんな心臓が意外なる「燃費の良さ」を示すのにもちょっとびっくりした。国際試乗会が開催されたドイツはブレーメン近郊の空いたアウトバーン上で何度となく300km/h付近までの強烈加速を味わいつつも、トータルで320kmほどの距離として設定されたテストルートを終えた試乗車のボードコンピューターの表示は、日本式表記で7.5km/リッター程度をマークしたのだ。

至福のとき

一方、そんな強烈パワーを受け止めるべく強化されたシャシーは、さすがに“PASM”を標準装備としながらも、やはりそれなりにハードな乗り味を提供する。ボディ剛性感がすこぶる高く、振動をたちまち減衰させてしまうのでさほどの不快感は伴わない。それでも「街乗りで使うにはちょっと覚悟が必要かな」というのが個人的な感想だ。
ハンドリング感覚は予想通り正確そのもの。幸か不幸か今回のルートには語るべきワインディングセクションは含まれていなかったが、そうしたシーンでは、腕の立つ人にとってあり余るほどのパワーとこのシュアなハンドリング感覚が、至福のときを味わわせてくれるに違いない。

GT3が“サーキット生まれ”なら、「ターボ」をベースとしたこちらは“サーキット育ち”と言えそうな1台。エンジンの存在感が際立つ前者に対して、比類無き強烈加速力こそが命の後者……と、その走りのキャラクターは大いに異なる。2600万円をオーバーと911シリーズの中でも飛び切り高額なプライスタグも含め、何もかもがまさに「特別な911」と言えるのがこのGT2なのだ。

(文=河村康彦/写真=ポルシェジャパン)

河村 康彦

河村 康彦

フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。

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