トヨタ・マークX ジオ240G(FF/CVT)【短評(後編)】
ジオの正体 2007.11.08 試乗記 トヨタ・マークX ジオ240G(FF/CVT)……350万8900円
“サルーンズ・フューチャー”を標榜する、ユニークな6シーター「マークX ジオ」。ミドルネームに込められたメーカーの意図は、何なのか? 『webCG』の近藤と関が試乗した。
やっぱりミニバン?
(前編からのつづき)
コ:インパネとドアの内張りは波紋型で個性的。新しさを出そうとしてるな。
せ:ドアの取っ手は、「アリオン」と共通デザインですね。素材は「樹脂×ヘアライン加工」だけ。保守的なウッドやメタルは意識的に避けられました。
コ:電源オンで全部のメーターが踊ってみせるのは、高性能バイクさながらの嬉しいデモや。ブルーの色づかいもなかなか綺麗。いい感じ。
せ:でも、よく見りゃフォントは「デカ字」っぽい。ミドルエイジへの気遣いはシッカリ、です。
コ:着座位置は結構高くて、「やっぱりミニバン」て思うとこやね。シフトレバーの生え方も、ミニバン的。
せ:実際、楽ではあります。ミニバン慣れしたユーザーには、なおさら安心感があるでしょう。
コ:エンジンも、頼もしい。ベースグレードが2.4リッターとは、ずいぶん拡大したもんやね。
せ:同じエンジンの「ヴァンガード」は170psなのですが、ジオは163ps。床が低めだから、排気管の取り回しでロスしています。
コ:「ブレイド」や「ヴァンガード」と同じ心臓か。プラットフォームも同じやった。
せ:さらに3.5リッター280psのV6もありますが、実際の売れ筋はこの2.4で、全体の8割を占めるとか。駆動方式でみれば、FFが9割。残りが雪国向けのヨンクです。
意外な発見
コ:クルマの質を語るなら、肝心なんは乗り心地。目玉のキャプテンシート、2列目の乗り心地はどうよ?
せ:エスティマやヴァンガードほどではないですが、下げきったときの足先は十分。かけ心地とも満足できます。
コ:滑りやすい革シート仕様やけど、キャプテンシートならではのサポートに助けられるな。
せ:ただ、横のゆとりで見れば、100%ベターじゃない。ベンチ型のほうがくつろげるというひともいるでしょう。
コ:「ハンドバッグ隣に置きたいわぁ!」言うオバチャン、必ずいてる。だから、ベンチシート仕様も用意されてると……。
せ:意外だったのは、非常用だと思っていた3列目。1時間くらいの移動なら、十分イケる乗り心地ですよ。リアタイヤに近いけど、荒れたワインディングですら気持ち悪くはなりません。
コ:つま先がかなり前下がりやから、足首が伸びてツラいけどな。
せ:フル乗車すると2列目のポジションは一番前。2-3列目とも、ひざのスペースはほとんどなくなります。が、かけ心地はいい。
コ:実は2列目、飛ばしてる時は、その「一番前」がベストポジション。車体の中心に近いからか、クルマの動きに対するフィーリングが穏やか。膝はスレスレやけど、一番酔いにくいポジションに違いない。
せ:なんか、皮肉だなぁ……
コ:2列目のキャプテンシートは、高速で下げて、峠で引く。これがオススメ。
新・オトコの真ん中
せ:荷室は仕切り板が取れるし、主張通りの七変化。でも、「ご自由にどうぞ」といわれると、使い方に困ってしまうのが現実で……
コ:まぁ通常は4座か6座、どっちかで固定やね。ジマンの仕切り板も付けっぱなしか仕舞いっぱなしかになるんやろうけど。
せ:場合によっては、「セダン固定」もアリ!?
コ:実際、これが近未来のセダン像なんかもしれんよ。ミニバン花盛りの時代、セダンをどう進化させていくのか? ジオはある意味、「探り」やないかな。
せ:2007年の「カー・オブ・ザ・イヤー」獲得に向けて、トヨタが一押しするモデルでもあります。もしもこれがイケルとなったら、チマタにはジオの大きいのや小さいのが溢れたり……
コ:そうなる可能性、大やね。「クラウン・ジオ」に「カローラ・ジオ」……。で、ジオには、マークと雰囲気以外に「マークX」なところあったんか?
せ:「乗員に対するおもてなし感」でしょう。イルミネーション、夜の繁華街を流しているときなんか、ウットリしますよ。
コ:もてなしを享受する対象が違うねんな。マークXは、ドライバー。ジオは、ドライバー以外に奉仕する。ジオのヒトは「家族思い」や。
せ:それだって、立派に「オトコの真ん中」です。
コ:見た目はもうちょっとがんばってほしいな。
せ:マークXと同じ6灯ヘッドランプやバンパーインエグゾーストにしたらいいのに。クリームレザーとウッドが捨てがたいなぁ。ぜったいイルミに合いますよ。
コ:うーん……やっぱり「ブレイド・ジオ」じゃ、あかんかったんか?
せ:だからそれじゃ、トヨタ店でも売らなきゃいけないんだってば!
(文=webCG近藤俊、関顕也/写真=高橋信宏)

近藤 俊

関 顕也
webCG編集。1973年生まれ。2005年の東京モーターショー開催のときにwebCG編集部入り。車歴は「ホンダ・ビート」「ランチア・デルタHFインテグラーレ」「トライアンフ・ボンネビル」などで、子どもができてからは理想のファミリーカーを求めて迷走中。
-
スズキ・エブリイJリミテッド(MR/CVT)【試乗記】 2025.10.18 「スズキ・エブリイ」にアウトドアテイストをグッと高めた特別仕様車「Jリミテッド」が登場。ボディーカラーとデカールで“フツーの軽バン”ではないことは伝わると思うが、果たしてその内部はどうなっているのだろうか。400km余りをドライブした印象をお届けする。
-
ホンダN-ONE e:L(FWD)【試乗記】 2025.10.17 「N-VAN e:」に続き登場したホンダのフル電動軽自動車「N-ONE e:」。ガソリン車の「N-ONE」をベースにしつつも電気自動車ならではのクリーンなイメージを強調した内外装や、ライバルをしのぐ295kmの一充電走行距離が特徴だ。その走りやいかに。
-
スバル・ソルテラET-HS プロトタイプ(4WD)/ソルテラET-SS プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2025.10.15 スバルとトヨタの協業によって生まれた電気自動車「ソルテラ」と「bZ4X」が、デビューから3年を機に大幅改良。スバル版であるソルテラに試乗し、パワーにドライバビリティー、快適性……と、全方位的に進化したという走りを確かめた。
-
トヨタ・スープラRZ(FR/6MT)【試乗記】 2025.10.14 2019年の熱狂がつい先日のことのようだが、5代目「トヨタ・スープラ」が間もなく生産終了を迎える。寂しさはあるものの、最後の最後まできっちり改良の手を入れ、“完成形”に仕上げて送り出すのが今のトヨタらしいところだ。「RZ」の6段MTモデルを試す。
-
BMW R1300GS(6MT)/F900GS(6MT)【試乗記】 2025.10.13 BMWが擁するビッグオフローダー「R1300GS」と「F900GS」に、本領であるオフロードコースで試乗。豪快なジャンプを繰り返し、テールスライドで土ぼこりを巻き上げ、大型アドベンチャーバイクのパイオニアである、BMWの本気に感じ入った。
-
NEW
2025-2026 Winter webCGタイヤセレクション
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2025-2026 Winterシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。一年を通して履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけ、より進化したスタッドレスタイヤか。最新ラインナップを詳しく紹介する。 -
NEW
進化したオールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2」の走りを体感
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>欧州・北米に続き、ネクセンの最新オールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2(エヌブルー4シーズン2)」が日本にも上陸。進化したその性能は、いかなるものなのか。「ルノー・カングー」に装着したオーナーのロングドライブに同行し、リアルな評価を聞いた。 -
NEW
ウインターライフが変わる・広がる ダンロップ「シンクロウェザー」の真価
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>あらゆる路面にシンクロし、四季を通して高い性能を発揮する、ダンロップのオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」。そのウインター性能はどれほどのものか? 横浜、河口湖、八ヶ岳の3拠点生活を送る自動車ヘビーユーザーが、冬の八ヶ岳でその真価に触れた。 -
NEW
第321回:私の名前を覚えていますか
2025.10.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。24年ぶりに復活したホンダの新型「プレリュード」がリバイバルヒットを飛ばすなか、その陰でひっそりと消えていく2ドアクーペがある。今回はスペシャリティークーペについて、カーマニア的に考察した。 -
NEW
トヨタ車はすべて“この顔”に!? 新定番「ハンマーヘッドデザイン」を考える
2025.10.20デイリーコラム“ハンマーヘッド”と呼ばれる特徴的なフロントデザインのトヨタ車が増えている。どうしてこのカタチが選ばれたのか? いずれはトヨタの全車種がこの顔になってしまうのか? 衝撃を受けた識者が、新たな定番デザインについて語る! -
NEW
BMW 525LiエクスクルーシブMスポーツ(FR/8AT)【試乗記】
2025.10.20試乗記「BMW 525LiエクスクルーシブMスポーツ」と聞いて「ほほう」と思われた方はかなりのカーマニアに違いない。その正体は「5シリーズ セダン」のロングホイールベースモデル。ニッチなこと極まりない商品なのだ。期待と不安の両方を胸にドライブした。