トヨタ・マークX ジオ350G(FF/6AT)/240G(FF/CVT)【試乗速報】
二兎を追うもの 2007.10.12 試乗記 トヨタ・マークX ジオ350G(FF/6AT)/240G(FF/CVT)……427万1850円/345万9550円
「4+Free」という新たなコンセプトにより誕生した「マークX ジオ」。そのユーティリティと走りを検証する。
たとえるなら、カフェバー
トヨタが「ホンダ・オデッセイ」対抗モデルを出すという噂だったから、てっきりソックリなのかと思った。過去にそういう事例があったわけだし。でも姿を見せた「マークX ジオ」は別物だった。「マークX」を名乗るものの縦置きエンジン後輪駆動ではなく、横置きエンジン前輪駆動ベースの3列シートというのはオデッセイに近いが、実物は見た目からして違う。
そのスタイリングを見ると、前後のライトがボディの端にあり、ドアは長い。そしてミニバンにありがちなリアの重さはない。ブレイドをふくらませた感じもするし、SUVの車高を低めたようにも見える。
キャビンに入ると、まずはワインカラーのシートやトリムに目を奪われる。そこに淡いブルーのメーターやエアコンのダイヤル、ドアトリムのクロームのS字カーブなどをちりばめた空間は、カフェバーっぽい。カフェバーとしたのは、天井の大型間接照明が蛍光色の白色LEDだからでもある。建築の世界では白熱色照明がいまのトレンドであり、こちらはひと昔前の演出という雰囲気がするのだ。
「年に1度」の3列目
上級グレードでは2列目がセパレートシートの6人乗りなのもジオの特徴。スライドをいちばん後ろにすれば、身長170cmの自分が前後に座ったとき、ひざの前には30cm近い余裕がある。でも座面が平らなのでカラダの収まりが悪い。前席のようなハイトアジャスターがあればリラックスできそうだ。シート間のコンソールボックスは、リッドを前に開けるとテーブルになる。カフェバーなのに実用性にもこだわるのが日本的だ。
3列目は、2列目を前にスライドしないと足が入らない。しかも座面は短く、床は高く、幅は最小限で、背もたれは低い。このあたりはライバル(?)のオデッセイと思想がかなり違う。折り畳みでは、背もたれを倒すと同時に座面が引っ込むが、戻すときは座面と背もたれを別々に動かさなければならない。
ジオは4シーターが正装で、3列目は年に1〜2回使えばいいという考え方なのだろう。それを強調するのが、畳んだときにラゲッジスペースを覆うトノカバー。前半分がハードボードになっていて、2列目シートとの一体感を強調するグラフィックまで入り、セダンっぽさをアピールしているからだ。
ところが実際はシートとボードの間に明確なすき間が存在するし、ボードの脱着はしにくく、後半のブラインドは収納時にシートベルトに引っかかってしまい、最後のベロの固定も裏側を見ないとむずかしい。多くのユーザーが床下にしまいっぱなしにしそうだ。
多用途性こそネック
ジオのエンジンは2.4リッター4気筒と3.5リッターV6で、このクラスのトヨタ車ではおなじみのラインナップだ。
車重は1.6トン前後なので、加速は2.4でも不満なし。吹け上がりはなめらかで、エンジン音は適度に抑えられていて、上まで回してもガサついたりしない。CVTの変速マナーにクセはなく、マニュアルシフトはスパッと決まるし、パドルのタッチは上質だ。
3.5リッターは6気筒のなめらかさ以上に、力強さと快音が持ち味。6段マニュアルモードつきATを含めて、スポーティな走りが欲しい人に向く。
ボディの剛性感はほどほどのレベル。サスペンションストロークは短い感触で、路面の悪いところではショックを直接伝えがちだ。とくに2.4でその印象が強い。よってグレードにより16インチと18インチが用意されるホイールは、16インチのほうがいい。乗り心地がまろやかになる一方で、ハンドリングに不満は抱かないからだ。
コーナーでは外側のサスペンションが底づきしがちになるが、グリップは前後ともに安定していて、安心してペースを上げていける。
とくにノーズの軽い2.4は動きが素直。それでいて2780mmのロングホイールベースのために、身のこなしはゆったりしていて、長距離をリラックスして過ごせそうだ。
つまり、走りについては、ボディやサスペンションの基礎体力を高めてほしい希望はあるものの、大きな不満はない。
それよりも、「独立4座」を提案しながら3列シートなど多用途性も追求したがために、使いにくいトノカバーなどの欠点を生み出しているほうが気になった。完全な「独立4座」にすれば、上質感や贅沢感がさらに高まるはずだ。
(文=森口将之/写真=峰昌宏)

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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