アウディA6 2.8 FSIクワトロ(4WD/6AT)【ブリーフテスト】
アウディA6 2.8 FSIクワトロ(4WD/6AT) 2007.11.01 試乗記 ……763.0万円総合評価……★★★★
アウディのミドルサルーン「A6」に新型の2.8リッターV6直噴エンジンモデルが追加された。新たにバルブコントロール技術を搭載した新エンジンモデルの走りを試す。
アウディのなせる業
従来の日本での「A6」のラインナップは「2.4」「3.2FSIクワトロ」「4.2FSIクワトロ」の3モデル。そこにさらに「2.8FSIクワトロ」が加わると、ちょっと煩雑すぎるのではという気がする。
しかし、それにはちゃんと理由がある。これまで「A4クワトロ」のオーナーがA6にステップアップしようとしても、2.4リッターは前輪駆動ということで対象にならず、かと言って3.2FSIクワトロでは価格差がありすぎ、結局は断念して他のブランドに流れてしまうということが多々あったのだという。
前輪駆動のアウディがダメなわけではないが、クワトロを味わってしまうと前輪駆動には戻れないというのは理解できる話だ。
2.8FSIクワトロは、まさにそういうユーザーの受け皿となることが期待されている。好調とは言い難いA6の販売を加速させるには、まずアウディの良さを知る人にステップアップしてもらおうというわけである。
しかしこのA6 2.8FSIクワトロ、話をそれだけで済ませてしまうのは惜しいクルマだ。そのエンジンは単なる3.2リッターの縮小版ではなく、新機軸アウディバルブリフトシステムを搭載し、各部のフリクションロスの低減を図るなど燃費向上を大きく意識したもの。
カタログ燃費は驚くほどのものではないが、特に高速道路を中心に走らせた時の経済性の高さは相当なものだ。
しかも、緻密で上質、そしてスポーティな回転フィーリングも素晴らしく気持ちがよい。画期的な新技術を使っているわけではないが、確固たる設計ポリシーや高い生産技術がなければ実現できないこの仕上がりは、まさに「技術による先進」を謳うアウディらしさを表現するものと言えるはずである。
初期のモデルでは難のあった操縦性や乗り心地の面でも進化の度合いは顕著な2.8FSIクワトロ。少なくとも現在A6の購入を考えている人にとってベストな選択となり得る1台であることは断言する。
アウディジャパンには、最初に記したような価格の話だけでなく、ぜひその本質的な部分の奥深い魅力こそを世間に強くアピールしてもらいたいと切に願う。そうしてブランド力を高めていってこそ、販売向上も望めるに違いない。