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【スペック】全長×全幅×全高=4660×1815×1415mm/ホイールベース=2730mm/車重=1690kg/駆動方式=FR/5リッターV8DOHC32バルブ(423ps/6600rpm、51.5kgm/5200rpm)価格=766.0万円

レクサスIS F(FR/8AT)【試乗記】

レクサスの挑戦 2007.10.30 試乗記 青木 禎之 レクサスIS F(FR/8AT)

レクサスから「IS」ベースのスポーティセダン「IS F」がデビューした。5リッターV8エンジンを搭載するニューモデルにサーキットで試乗した。
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アグレッシブな外観

「レクサスIS F」は、いうまでもなくトヨタの「M3」である。スポーティセダンのベンチマーク「BMW3シリーズ」に照準を合わせた「ISシリーズ」のハイフォーマンス版で、“M”を掲げるミュンヘンに対抗して、三河のメーカーはFujiを意味する“F”を使うことにした。もちろん、富士スピードウェイを暗示する。

M3は、日本にはクーペボディしか輸入されないが、ご存じの通り本国には4枚ドアがある。最新世代の“M”が直6を捨てV8を採用したのに倣って、極東の“F”もV6に替えV8を搭載した。レクサスは、LS600hで「新しい高級セダンの行き方」を示したのだから、ぜひスポーティセダンでも……と思わないでもないが、資本主義社会の市場がそれほど甘い場所でないことをレクサス、もとい! トヨタは重々承知している。だからこそ世界一の生産台数をほこるようになったわけで、4リッターのM3に対抗して、5リッターをブツけるというミもフタもないことができるのも、ひとつの強さだろう。ハイパフォーマンス・ハイブリッドは「もうすこし待て」ということ……、と期待したい。

IS Fのボディサイズは、全長×全幅×全高=4660(+85)×1815(+20)×1415(−15)mm(カッコ内はIS比)。エアインテークを広くとり大型化したフロントバンパー、大排気量エンジンを示唆する盛り上がったボンネット。フロントフェンダー後部にはエアアウトレットが設けられ、サイドスカートが付き、リアにはこれまた専用にデザインされたリアパンパー。グッとアグレッシブな外観になったV8 ISの極めつけは、八の字型になった4本出しのマフラーエンドである。わかりやすい。
2730mmのホイールベースは通常のISと変わらないが、足もとには、ひとまわりも、ふたまわりもスポーティな、前225/40R19、後255/35R19の大径ホイール&扁平タイヤが履かれる。

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ユニークなパワートレイン

IS Fスペシャルの5リッター「2UR-GSE」ユニットは、シリンダーに直接燃料を吹くダイレクトインジェクションと、従来通りのポート噴射を併用した「D4-S」エンジンで、423ps/6600rpmの最高出力、51.5kgm/5200rpmの最大トルクを発生する。
フォーカム、4バルブのヘッドメカニズムは、ヤマハが開発を手がけた。カムを下から支えるハウジングとシリンダーヘッドが一体化構造となり、剛性が増した。吸気側可変バルブタイミング機構搭載。吸気には通常のプライマリーポートに加え、3600rpm以上で開くセカンダリーポートが加わった。もちろん吸排気系全体にファインチューニングが施された。
IS Fのパワーソースで特徴的なのは、サーキット走行を想定していること。コーナリング時の横Gに対応するため、オイルの潤滑はスカベンジングポンプを使って強制的に行われ、燃料タンクはサブタンク構造が採られる。水冷式のオイルクーラーまで与えられた。

トランスミッションは、LS460用の8段ATをIS F用にモディファイしたもの。トルコン式ATのロックアップ機構を、あたかも2ペダル式MTのクラッチ(実際、クラッチなわけだが)として扱うユニークなトランスミッションで、「その手があったか!」と感心した人も多かったんじゃないでしょうか。
やはりスポーツ走行時の対策として、空冷式のATFクーラーが備わり、ATフルードの噴き出しには、延長されたブリーザーチューブとブリーザータンクの追加で対応する。

電子制御のありがたさ

プレス試乗会は「レクサスIS F」名付けの親(?)富士スピードウェイで行われた。あいにくの雨。完全なウェット路面である。

IS Fのインテリアは、派手なホワイト内装と黒内装の2種類。リアシートは独立した2座タイプとなり、つまりIS Fは4人乗りとなる。
サイドサポートの張り出したシート、電圧と油温計が追加されたメーター、革巻きステアリングホイールとシフトノブ、そしてシルバー基調のパネル類と、スポーティな演出がここかしこにちりばめられるが、それでも運転席に座るとスパルタンというよりラグジュアリー寄り。14スピーカーが配されたマークレビンソンのオーディオまで奢られる。

が、ひとたびエンジンをかければ、野太い排気音がスペシャルなISであることを主張する。

注目の8段「SPDS」ATは、当たり前ながらスムーズで、これまた当たり前ながら普通にクリープする。
用心しつつ、DレンジかつノーマルのVDIM(電子車両制御装置)のままレースコースを走り始めると、さすがに介入頻度が高い。カーブのたび、ときには直線の加速時にも断続的に制動力が働く。
そこで「F-スポーツトータルコントロールスイッチ」を「Sport」にすると、VDIM、スロットル特性、シフトタイミングがアグレッシブになり、ステアリングのアシスト量が減らされる。ダイレクト感が増す。雨のサーキットにはありがたいモードで、コーナーごとに適度にタイヤをスライドさせ、「あわや!?」と心臓が口から飛び出しそうになる手前で、ちゃんとブレーキをかけて姿勢を整えてくれる。リポーターは、何度、VDIMに助けられたことか!

400psとサーキット

富士スピードウェイのホームストレートを、水しぶきをあげながらIS Fが疾走する。

LS600hと同じ94.0×89.5mmのボア×ストロークをもつ4968ユニットは、排気量に違わぬ豊かなトルクを提供し、1690kgのボディをグイグイと加速させる。
ただ、フォーカム8気筒は律儀にメーター通り6800rpmでレブに当たる。6500で警告音が鳴りシフトアップが促される。贅沢を言うと、−−8000超のM3を比較に出すまでもなく−−「もう一息ののび」が欲しいところだ。

シフターを横に移すと「M」モードになる。ギアが自動で変わらなくなる。最近では、かなりのスポーツモデルでもAUTOモードで走ったほうがタイムを出しやすく、メーカー側もそれを推奨するむきがあるが、IS FはパドルまたはATセレクターを操作してギアを変えるしかない。
「敢えて“叩いて”ほしい」と、レクサスの担当エンジニア氏。スポーツする“行為”を尊重したわけで、楽しむためのスポーツセダンとして、ひとつのアプローチではある。
Mモードに入ると、トルクコンバーターが活かされるのはロウからセカンドの間だけ。65km/h、110km/h、160km/hと各ギアがカバーして、4速で200km/h手前に達する。ヘアピンの手前、シフトダウンではみごとなブリッピングを入れて、気分を盛り上げる。

ブレーキは、前が6ポッド(!)、後が2ポッドのモノブロック(!!)キャリパー。ブレンボ製。ローターは、360mmと345mmの大径タイプで、併せて雨のサーキットには過剰な装備だ。余裕で速度を殺し続ける。

レクサスIS Fは、ほどほどのドライバーならそれなりに、手練れのプロフェッショナルにかかれば、「これぞ後輪駆動!」のダイナミックな走りを披露できる。400psを超えるスポーツセダンをリリースにあたり、サーキット走行を前提にする。さすがは叩いても石橋を渡らないトヨタのプレミアムブランド。ひとつのロジックが用意されている。

さて、IS FがターゲットにしたBMW M3は、最新モデルで4代目。これから約20年後、4代目のIS Fが出るころには、エンジン排気量と価格に関する彼我の差は逆転しているのだろうか? はたまた、何代も“F”を出し続けることができるのか。レクサスの挑戦は始まったばかりだ。

(文=webCGアオキ/写真=田村弥)

青木 禎之

青木 禎之

15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。

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