第447回:うまくて太らず、しかも儲かる!? 恐るべし“3シリーズ式ダイエット”!
2012.02.19 小沢コージの勢いまかせ!第447回:うまくて太らず、しかも儲かる!?恐るべし“3シリーズ式ダイエット”!
これは“ハイパフォーマンスエコカー”だ!
やられたやられた、まったくもってやられましたよ。そ、新型「BMW 3シリーズ」。というのも、その出来の良さだけでなく、ビジネスのうまさ、レトリックの巧みさにおいてね。
『webCG』読者のみなさまにはいまさらのスポーツセダンも、今回で6代目。最初は中核モデル「328i」のみの発売だけど、なにより驚いたのは、メインディッシュたるエンジンだ。
BMW自慢の“新世代ダウンサイジング系”で、わずか2リッターの直噴直4シングルターボエンジンでありながら、最高出力245psに最大トルク35.6kgmの猛スペックを達成!! これはBMWが同格としている先代の直6モデル「325i」に比べ、パワーで13%、トルクで30%のアップ。しかも、最新の8段ATやアイドリングストップ機構なども組み合わせて、燃費は24%アップの15.6km/リッター! ただし、測定モードは10・15モードですけど。
まぁ、「プリウス」なんかと比べるとアレだが、直接的なライバルと比べるとそのスペックは圧巻で、例えば現行「メルセデス・ベンツCクラス」の、1.8リッター直4ターボを積む上級モデル「C250」が204psで13.8km/リッター、「アウディA4」の「2.0 TFSIクワトロ」が同じく211psに12.0km/リッター(共に10・15モード燃費)と、新型「3シリーズ」の方がパワーは圧倒的に高い上、燃費まで良い。正直、スペックで比べると「3シリーズ」の圧勝。これはもう、“ハイパフォーマンスエコカー”といえる。
「マグロのトロ」の味がある
でね、実は一番驚いたのは、その“お味”。というのも、スペック的には上がってるかもしれないけど、ぶっちゃけ「直6から直4への格下げ」じゃないですか? 欧米はダウンサイジングばやりとはいえ、日本で扱われている「フォルクスワーゲン・ゴルフ」は、今のところ排気量が下がっただけだし、「フィアット500」の2気筒バージョン「マルチエア」にしろ、“実用車の領域”でしょう。
「3シリーズ」みたいな高級車では、数値に出ない味の変化があるはず……って、乗ったら全然悪くないんだわ(笑)。
確かに直6が持っていた「ねっとりとした味」というか、濃厚なテイストはなくなった。だけどそのぶん「カーン!」と爽快に回る味わいを得て、なんちゅうか、一時の「かめばかむほど味が出る」ようなツウな味わいはなくなったけど、よりシンプルでアブラの乗った、「マグロのトロ系」になったっていうか。これはこれでいいかも!? と思わせるモノがある。
最近のBMWエンジンはみんなそうだけど、普通に走る分には、低速からの極太トルクと多段ATのおかげで、2000rpmも回せば十分。そこで燃費を稼ぎ、いざ飛ばす気になれば、7000rpmまで爽快に回して楽しめるという二段構え。今回は燃費性能まで試せなかったけど、いわゆる“エコモード”「ECO PROモード」も選べるようになっている。
ハンドリングも確実に味わいを増していて、妙なクイックさというかスポーティーさを捨て、非常にクルマらしい“古典的な重み”を得た。これは小沢的には、一番の収穫。
ここ最近のBMWは「5シリーズ」にしろ「7シリーズ」にしろ、スポーティーかつソリッドなのはいいけど、やや人工的なテイストがあって、そこがひっかかってた。新型「3シリーズ」には、見事なまでにそれがない。それは、先代モデルに見られた可変ギアレシオをもつ「アクティブステアリング」の設定がないことからも明らか。そういうハイテクはしばらく要らないって感じ。
ビジネスとしても脱帽
さらに言うと、一番やられた感があったのは値段だ。今回の「3シリーズ」は、いきなり570万円スタート! これって旧型「325i」の約20万円増しで、ぶっちゃけほとんど「5シリーズ」並み。
ボディーからエンジンまで新世代になって、リアシートも身長176センチの俺でヒザ前にコブシがふたつ入るくらい広くなって、さらにパワーも燃費も上がってるとはいえ、このデフレ時代にそれはちょっとないんじゃない? って価格設定なのだ。
しかし、これまたウラがある。新型「3シリーズ」の日本仕様車は、排ガス中のNOx排出量を減らし、純粋なガソリンエンジン車としては最高レベルのエコカー減税&エコカー補助金が受けられ、合わせて35万円引き! 実質、約535万円で買えるわけ。これって事実上の“値下げ”なのよ。
よりパワフルで、エコで、室内が広くて、走りの味わい深くなって、ついでにデザインも一新した「3シリーズ」が“安く”買えるんだから、バカ売れは必至!? リーマンショック後のここ数年、他人の目を考えて買い控えていた人も多いだろうし、まず間違いなく売れるはず。
さらに、そのウラで見事に“高級車の法則”を書き換えた功績も大きいと思ってる。というのは、「1シリーズ」はともかく、BMWはやっぱり「大排気量で多気筒なエンジンはエライ!」って図式で長年やってきたわけじゃないですか。お金が取れるメイングレードはやっぱり直6やV8を積んだモデルで、それらには高い価格設定をしてきた。
それが今回、見事に“スペックにお金を払わせる構図”に変化した。この流れはますます進むだろうし、より高級なモデルでも直4がメインになるなど、よりダウンサイジング化は進むだろうと思われる。
新型「3シリーズ」には、さらにクリーンディーゼルやハイブリッドモデルの追加計画もあるが、このダウンサイジングによるエコ&高級化戦略は、ハイブリッドを使って同様の計画を進める日本のトヨタやホンダよりうまく行くように思えるのだ。実際、ハイブリッドカーがたくさん売れているのは日本と北米だけだし、その日本でも高級ハイブリッドは絶対的には多くない。
今後日本ブランドも巻き返してくるとは思うけど、差し当たり、「3シリーズ」の「高級ハイパフォーマンスエコカー作戦」は見事。脱帽って感じですわ。
(文と写真=小沢コージ)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
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