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【スペック】C300アバンギャルドS:全長×全幅×全高=4630×1770×1430mm/ホイールベース=2760mm/車重=1590kg/駆動方式=FR/3リッターV6DOHC24バルブ(231ps/6000rpm、30.6kgm/2500-5000rpm)価格=664万円(テスト車=688万2000円/ガラススライディングルーフ=16万8000円/メタリックペイント=7万4000円)

メルセデス・ベンツC300アバンギャルドS(FR/7AT)【試乗記】

イメージとメルセデス 2007.10.24 試乗記 河村 康彦 メルセデス・ベンツC300アバンギャルドS(FR/7AT)
……688万2000円
ドイツのサーキットでメルセデスの不人気さを目の当たりにしたリポーターは、サーキットでの試乗会に不安を覚えたのだが……。Cクラスでその走りを試す。
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サーキットは似合わない?

先日、とある用事があってニュルブルクリンクのサーキットへでかけてきた。
1周およそ21km。その苛酷さにおいて他に例をみない、サーキットというより「アイフェルの丘陵地帯の起伏をそのまま利用して生まれた“頑丈なガードレール完備のワインディング・ロード”」とでも表現した方がよさそうな、ツトに有名なこのコース。レースやらメーカーのテストやらで占有使用が行われていない限り、誰もが気軽に“観光道路”として走行が可能なこともまたよく知られている。

そうはいっても、一周19ユーロなりという料金を支払ってここを走ろうというからには、やはり訪れるドライバーはいかにも気合いの入った“走り屋”が多い。と同時に、そんなパブリック走行時間帯にコースインしようというクルマたちをしばらく眺めていると、フとあることに気がつく。そこには――AMG仕様を含め――メルセデスの姿がほとんど見られないのだ。

走り屋の聖地ニュルを訪れるクルマのなかで、圧倒的な人気を見せるのは常にBMW車。それに続くのがポルシェの各車。アウトバーン上であれほどたくさん走っているメルセデスやアウディは、ここではトンと人気がないのである。

いささか前置きが長くなったが、そんなニュル不人気ブランド(?)の代表格でもあるメルセデスがリリースした「Cクラス」の国内プレス試乗会は、何の因果かサーキットで行われた。世界で多くの人が待望していたメルセデス・ベンツの新しい作品。それは、サーキットには不釣り合いな存在なのであろうか?

C300アバンギャルドSは、本革シートが標準装備となる。
C300アバンギャルドSは、本革シートが標準装備となる。 拡大
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残念な部分

……と、そんなちょっとネガティブなイメージは、ツインリンクもてぎロードコースのピットロードを飛び出し、直角右コーナーが連続する1、2コーナーをひとつの孤に見たててクリアした時点でたちまち霧散してしまった。

3リッターの排気量から最高231psを生み出すV6エンジンは、こうして周囲が開けた風景のなかで乗ると格別にパワフルというほどの印象ではない。が、それでも1570kgという重量に対しての余裕はもちろん十二分。組み合わされるATが、変速時のステップ比が小さい7段仕様ということもあり、加速Gの連続感もなかなかだ。

ただし右側が「+」、左側が「−」とレイアウトされたシフトパドルは、ステアリングホイールと共に回転してしまうのが、サーキット走行では玉にキズ。コーナーの大きさと各ギアの上限速度の関係から、ステアリングを大きく切り込んだ状態でシフト操作を余儀なくされると、場合によっては左右が反転位置となり極めて扱いづらいシーンがあるのだ。

写真は、アバンギャルドのファブリック内装。
写真は、アバンギャルドのファブリック内装。 拡大

メルセデス・ベンツC300アバンギャルドS(FR/7AT)【試乗記】の画像 拡大

ブレーキに感心

日本仕様のC300は、スポーツサスペンションを標準採用する日本独自の「アバンギャンドS」グレードのみ。標準サスを用いるC200系に比べると、コーナー・ターンイン時のロールの小ささは明白で、実は一般道ではヒョコヒョコとした上下Gが気になるこの脚も、フラットな完全舗装が施されたレースコースといったシーンにはうってつけだ。

驚いたのはブレーキで、標準仕様より大型のキャリパーとドリルド・ベンチレーテッドディスクがおごられ、剛性感に富んだペダルタッチを味わわせてくれる。ブレーキに特に厳しいこのコースでサーキット・スピードでの走行を続けても――途中で踏力が多少増加はするものの――最後まで制動力を失うことはなかった。
そもそも、ラインオフの状態そのままで、1試乗40分間、ロードコースで自由に走らせる、そんな試乗会の設定自体が、自らの商品に相当の自信がなければできないことだろう。

というわけで、ニュルにやってくる走り屋たちには人気のないメルセデスも、サーキットでの走りを苦手としているわけではないのだ。それでは、圧倒的に多く姿を目にするBMWとメルセデスの違いは、一体どこに? 何に起因するのか? そうした無形の存在こそが、それぞれのメーカーが長い時間を費やして構築してきた、“ブランドイメージ”というものにほかならないのであろう。

(文=河村康彦/写真=高橋信宏)

河村 康彦

河村 康彦

フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。

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