プジョー308(FF/5MT)【海外試乗記】
すべてがスマートに 2007.10.16 試乗記 プジョー308(FF/5MT)2007年9月20日、ヨーロッパで発売された「プジョー308」。プジョーの人気車種「307」の後継となる新型はどう進化したのか。日本発売を前にフランスで試乗した。
ちょっと大きな「207」
日本では「フォルクスワーゲン・ゴルフ」のひとり勝ちになっているヨーロッパ車のCセグメント。しかし現地では「プジョー307」もそれなりの実績を残してきた。2001年のデビュー以来321万台を売ったというから、年間50万台以上を捌いた勘定になる。
さらに307はこのクラスのハッチバックに、「セミトール・アーキテクチャー」、つまり全高1.5m級のボディを提案したパイオニアでもある。このコンセプトはその後ゴルフをはじめいくつかのモデルが採用し、主流になりつつある。だから後継車の「308」も、そのコンセプトを受け継いだ。
そればかりか、プラットフォームもキャリーオーバーである。フロントがマクファーソンストラット、リアがトーションビームのサスペンション形式も同じで、2608mmのホイールベースまで等しい。
しかしスタイリングは一新された。プジョーの本拠地であるソショーに近いコルマールの空港で、初めて出会った308は、「207」そっくりだった。モノスペース風のボリューム感を持っていた307の面影はない。メリハリのあるボディにシェイプアップしている。
ただし実際はサイズアップしていて、全長4276mm、全幅1815mm、全高1498mmという数字は前作より74mm長く、53mm広い。衝突安全性や室内空間拡大が目的だという。スマートに見えるのは、ルーフが12mm低められたことも効いているようだ。
広くなった室内
近年のプジョーの進化の例にもれず、インテリアは上質になった。307より低く座る前席のために、インパネが高くなったように感じるが、逆に傾きの強いウインドスクリーンは気にならない。ヒジまわりで35mm拡大したというとおり、幅の広さも実感する。
プジョーのアイデンティティーになりつつあるパノラミックルーフのおかげで、グラスエリアは4.86m²とクラストップ。東仏アルザスにいるのに、南仏コートダジュールを思わせる爽快な開放感が手に入る。
前席はプジョーらしく、やさしい着座感としっかりしたサポートをあわせもっていた。後席は前席の背もたれ裏をえぐったおかげで、足元が28mm広くなっている。それ以上に好印象だったのは座面の高さと傾斜だ。
最近のハッチバックは、後席の折り畳みを背もたれを倒すだけですませる例が多く、座面が低く平板になりがち。でも308はきっちりダブルフォールディング方式で格納する。それが理想的な後席環境を作り出しているのだ。
日本仕様は1.6ターボのみ
ガソリンエンジンは、207にも積まれているBMWとの共同開発ユニットで、1.4、1.6リッター自然吸気と、1.6リッター直噴ターボがある。2リッターはない。ダウンサイジングである。HDiと呼ばれる直噴ディーゼルターボは、1.6、2リッターが用意される。
このうち1.6HDiにはプジョーとミシュランが共同開発した、転がり抵抗を20%低減する「エナジー・セーバー」タイヤが装着され、1kmあたりのCO2排出量を5g低減する。さらに2010年にはディーゼル・ハイブリッドも登場するという。フランス車だってちゃんとエコに取り組んでいるのである。
日本仕様はガソリン1.6ターボのみで、6段MTと4段ATを用意するというが、今回の試乗車は5段MTだった。150psを発生するエンジンは「207GT」と同じだ。
車重は1327kgとサイズのわりに重くないので、加速は強力。それ以上にターボならではの懐の深さ、つまり回転を上げずともスロットルを開けるだけで速度を上乗せできるのでラクだ。これならATとの相性もいいだろう。
プジョーそのもの
ひと足先に登場した207ではネコ足度が薄れたように感じたが、307のプラットフォームを受け継いだ308は、誰が乗ってもプジョーとわかるしなやかな乗り心地を備えていた。ねじり剛性で10%アップした強靭ボディが、そこに上質さを加えている。速度を上げればフラット感がメインになり、快適快感のクルージングを味わわせてくれる。静粛性も高く、加速時に適度な排気音が届く以外は平和そのものだ。
ハンドリングもまた、プジョーそのものだった。307と同様、ボンネットをアルミ、フロントフェンダーをプラスティックにするなどして前荷重を減らしたおかげで、ノーズの動きはこのクラスとしては軽快。電動油圧式のままとしたパワーステアリングの操舵感もいい。
ワイドになったボディは307で気になった腰高感を消し、コーナーに入ればフロントがふくらむことなく、リアがすべることもなく、切ったとおりに抜けていく。気持ちいいほどニュートラルなハンドリングだ。
わが国では2008年夏前に発売される予定。生まれ故郷で乗った308はまさに、水を得た魚のように生きのいい走りが印象的だった。たぶん、日本の道でも同じ感動が得られるはずだ。
(文=森口将之/写真=プジョー・ジャポン)

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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