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【スペック】全長×全幅×全高=4515×1745×1475mm/ホイールベース=2700mm/車重=1390kg/駆動方式=FF/1.8リッター直4DOHC16バルブ(99ps/5200rpm、14.5kgm/4000rpm)+交流同期電動機(82ps、21.1kgm)/価格=284万円(テスト車=332万5415円)

トヨタ・プリウス Sツーリングセレクション G's(FF/CVT)【試乗記】

あとはスピード 2012.02.29 試乗記 青木 禎之 トヨタ・プリウス Sツーリングセレクション G's(FF/CVT)
……332万5415円

特別仕立ての内外装や足まわりで、“走りの味”を追求したという「トヨタ・プリウスG's」。試してみての、お味のほどは……?
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メーカー自らイジりました

「最近のクルマは、あっちこっちコンピューターが埋めてあるから、なかなかエンジン、イジれないみたいよ」

−−チューナーの人たちは商売あがったりですね。
「そうでもない。シコシコ、ポート磨いているより、エアロパーツで一発当てた方が、ずっともうかるって……」

そんな会話を“事情通”としたのは、自分が草レースに夢中になっていたころだから、もう10年以上前のこと。時の過ぎ行く速さといったら、驚くばかり。「トヨタ・プリウス Sツーリングセレクション G's」を運転しながら、ちょっと“懐か・寂しい”気分になった。

「プリウス G's」は、その名の通り、GAZOO Racingが手がけたスポーツコンバージョンモデル。自動車メーカー自ら「走り」の味付けをして、「クルマの楽しさ」を提供するという、スペシャルグレードである。若者に限らず、世間のクルマ離れをなんとか押しとどめようと、大トヨタが腰を上げた試みだ。プリウスG'sは、「ノア/ヴォクシー」、「ヴィッツ」に続く、「G SPORTS(通称 G's)」モデル、第3弾となる。

今年の日本カー・オブ・ザ・イヤーに輝く(予想)「トヨタ・アクア」の、プレス試乗会場の一角で、黒いスピンドルグリル風の口を開け、つり上がった目で参加者をにらんでいたのが、「CONTROL AS YOU LIKE 〜意のままに操る喜びを〜」なプリウスG'sだった。トヨタのエンブレムが外された、ツルン!としたノーズがかわいらしい。

「THS」ことトヨタハイブリッドシステム普及の役割を、弟分アクアに任せられて肩の荷が下りたか、プリウスの価格が若干上がった。ベーシックな「L」は205万円から217万円、中堅の「S」は220万円から232万円、上級版「G」が245万円から252万円といった具合。プリウス Sツーリングセレクション G'sのベースとなるSツーリングセレクションは、7万円アップで“素”の「G」と同じ252万円。G’sは、エクストラ32万円で284万円となる。

“クルマの味づくり”を追求するトヨタのプロジェクト「GAZOO Racing」から生まれた「G's」シリーズ。今回の「プリウスG's」は、「ノア/ヴォクシー」「ヴィッツ」に次ぐ第3弾のモデルである。
“クルマの味づくり”を追求するトヨタのプロジェクト「GAZOO Racing」から生まれた「G's」シリーズ。今回の「プリウスG's」は、「ノア/ヴォクシー」「ヴィッツ」に次ぐ第3弾のモデルである。 拡大
専用のパネル類で飾られる、運転席まわりの様子。アルミペダルも特別装備のひとつ。
専用のパネル類で飾られる、運転席まわりの様子。アルミペダルも特別装備のひとつ。 拡大
すべてのシートは、赤ステッチの専用表皮で覆われる(写真はリアシート)。
すべてのシートは、赤ステッチの専用表皮で覆われる(写真はリアシート)。 拡大
サイドからの眺め。専用チューニングサスペンションを備え、車高は通常より15mm低くなる。
サイドからの眺め。専用チューニングサスペンションを備え、車高は通常より15mm低くなる。 拡大
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さすがの元祖ハイブリッド

G'sプリウスは、なかなかすごみが利いたコンバージョンモデルで、前後にG's専用バンパーが装着され、ブラックアウトされたグリル部、黒く縁取りがされたヘッドランプとリアのコンビネーションランプが、表情を引き締める。
車高はグッと下がり、40タイヤを巻いた18インチホイールで足元をキメる。G'sモデル第3弾にして、出色のカッコよさ。ハリウッドの近未来映画に登場しそうな雰囲気だ(たぶん悪役側)。

運転席に座ると、「G's専用スポーティシート」の座り心地のよさに感心する。上半身をしっかりホイールドする形状で、クッションも豊か。やんわり腰があって、オシリが喜ぶ。「普通のプリウスにも、これくらいのシートを装備するべきですよね」との編集部Sさんのコメントを聞きながら、しかし気になるのは、われわれの前に助手席に座った人のこと。「黒基調に赤いステッチ」という定番の演出が施されたスエード調のシート地に、細かく白い羽毛が無数に付いている。プリウス Sツーリングセレクション G'sに乗るときは、ダウンジャケットは着ないほうがいいかもしれない。

たまたま本格普及型ハイブリッドモデル、アクアから乗り換えたこともあって、プリウスの特別さをあらためて認識する。アクアはもちろん、普通のコンパクトカーから乗り換えてもできるだけ違和感がない室内を心がけたのだろうが、3代目となるハイブリッドのイメージリーダーは、いい意味で肩に力が入ったデザインだ。意図的にシンプルなインストゥルメントパネル、有機的なメーターナセル、ダッシュからトンネル部分へかけ渡されたセンターコンソール、凝ったシボ類。アクア発売直前にプリウスを買った人が、「しまった!」と後悔する必要はまったくないだろう。

G'sプリウスのインテリアは、そんな生来もつスペシャル感をさらに加速させた印象だ。随所にカーボン調パネルを配し、「赤」の差し色をアクセントに、トータルコーディネートされている。赤いG's専用スタートボタンを押すと「READY」と液晶ディスプレイに表示され……、ココは普通のプリウスと変わりない。

ノーマルとの違いを最も印象付けるのが、フロント周りのデザイン。専用のフロントバンパーやランプ類が与えられる。
ノーマルとの違いを最も印象付けるのが、フロント周りのデザイン。専用のフロントバンパーやランプ類が与えられる。 拡大
前席には、ご覧の「G's専用スポーティシート」がおごられる。
前席には、ご覧の「G's専用スポーティシート」がおごられる。 拡大
センターコンソールのアップ。カーボン調のパネルや赤いスタートボタンが個性を主張する。
センターコンソールのアップ。カーボン調のパネルや赤いスタートボタンが個性を主張する。 拡大
荷室などは、ノーマル「プリウス」と共通。フロアボードの下にも予備の収納スペースを備える。
荷室などは、ノーマル「プリウス」と共通。フロアボードの下にも予備の収納スペースを備える。 拡大

動力性能にも華を

G'sプリウスがメーカー直販のチューンモデルらしいのは、ボディー各部が強化されていること。フロント下部やセンターから後部にかけて補強材が入り、サイドロッカーには溶接のスポット増しが施される。レースカーのように。さらにノーマル「ツーリングセレクション」より1インチアップの18インチを履きこなすべく、車高約15mmダウンの専用サスペンションがおごられる。

クルマの性格に配慮してか、乗り心地は見かけほどハードではない。「乗り心地を損なうことなく、ステアリング操作に対する素早い反応と性格な挙動を実現」という開発意図その通りだろう。また、強化されたボディーと足まわりから生まれるしっかりしたハンドリングは、運転者の安心感を含め、高速巡航時の快適性をアップしてくれるはずだ。

戯れに編集部のプリウスと信号グランプリを試みたところ、鋭い目つきのG'sプリウス、必死に追いすがるノーマルプリウスをあっさり振り切って……という場面は現れず、2台仲良く並んで全力加速を続けた。峠やサーキット(!?)ではいざ知らず、普通の街乗りで、動力面での違いは、まず出ない。メーカー直販チューンドカーの安心な面であり、ツマラナイところだ。

プリウスG'sのステアリングホイールを握りながら夢想した。THSはそのままで、エンジン、もしくはモーターの出力を上げたらどうなるのか?
燃費には目をつぶるとして、動力性能をアップする手はないものか?
プリウスは、普通のクルマ以上にコンピューター制御の網が張り巡らされたクルマだから、たちまち破綻してしまうか……。

いっそのことハイブリッドシステムを捨て、例えばTRD由来のターボを備えた動力系を移植したら……と、しょうもないことを考えたところで思いついた。例えば「TRDプリウス」(←勝手に名付けました)。強力なモーターを備えたピュアEVにしてしまうのが、一番“らしい”チューンかも。やたらと静かで、でも、ドライブシャフトがねじ切れんばかりの加速を見せる電動プリウス!
誰かつくってくれないものだろうか。

(文=青木禎之/写真=高橋信宏)

専用ホイールのサイズは、ノーマル「プリウス」で最も大きい17インチを上回る、18インチ。レッドライン仕様は、オプション扱いとなる。
専用ホイールのサイズは、ノーマル「プリウス」で最も大きい17インチを上回る、18インチ。レッドライン仕様は、オプション扱いとなる。 拡大
溶接スポットや床下の補強材が追加される「プリウスG's」。ボディー剛性を高めることで、サスペンションやタイヤの性能をフルに引き出すという。
溶接スポットや床下の補強材が追加される「プリウスG's」。ボディー剛性を高めることで、サスペンションやタイヤの性能をフルに引き出すという。 拡大
手付かずのパワーユニット。1.8リッターのガソリンエンジンに電気モーターが組み合わされる。
手付かずのパワーユニット。1.8リッターのガソリンエンジンに電気モーターが組み合わされる。 拡大
ボディーカラーは、テスト車の有料色「ホワイトパールクリスタルシャイン」のほか、「スーパーホワイトII」「シルバーメタリック」「ブラック」「レッドマイカメタリック」「ボルドーマイカメタリック」を含めた全6色が用意される。
【テスト車のオプション装備】
ボディカラー(ホワイトパールクリスタルシャイン=3万1500円/G's専用アルミホイール(レッドライン仕様)=2万8350円/G's専用ボディストライプ=1万7850円/G's専用スカッフイルミネーション=3万1500円/VICSビーコンユニット=1万7850円/車両通信接続ケーブル=1050円/マルチビューバックガイドモニター=2万9400円/プレミアムナビG-BOOKmxモデル=26万6700円/ETC=3万4965円/G's専用フロアマット=2万6250円
ボディーカラーは、テスト車の有料色「ホワイトパールクリスタルシャイン」のほか、「スーパーホワイトII」「シルバーメタリック」「ブラック」「レッドマイカメタリック」「ボルドーマイカメタリック」を含めた全6色が用意される。

【テスト車のオプション装備】
ボディカラー(ホワイトパールクリスタルシャイン=3万1500円/G's専用アルミホイール(レッドライン仕様)=2万8350円/G's専用ボディストライプ=1万7850円/G's専用スカッフイルミネーション=3万1500円/VICSビーコンユニット=1万7850円/車両通信接続ケーブル=1050円/マルチビューバックガイドモニター=2万9400円/プレミアムナビG-BOOKmxモデル=26万6700円/ETC=3万4965円/G's専用フロアマット=2万6250円 拡大
青木 禎之

青木 禎之

15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。

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