Mazda3 Sport 2.0 MZR-CD Top(FF/6MT)【海外試乗記】
ますます真っ向勝負の日本車 2007.06.09 試乗記 Mazda3 Sport 2.0 MZR-CD Top(FF/6MT)最新の自社開発ディーゼルユニットを搭載した「マツダ3(日本名:アクセラ」にドイツで試乗。マツダブランドが欧州では根強い人気を持つ理由を探る。
久々自前の新型ディーゼルを搭載!
さーて“ドイツ半移住”中の私、小沢コージであるが、日独往復も数を重ねてくると、さすがに気づいてしまうことがある。それはマツダ車の多さだ。1980年代にいち早くヨーロッパ市場に進出、確固とした地位を築いたことで有名なマツダだが、理由解析は今度エッセイに書く予定のマツダ・ヨーロッパ副社長、前林治郎さんとのインタビューに譲るとして、とにかく街をやたらマツダ車が走ってる。
それは最新型の「マツダ3(アクセラ)」「マツダ6(アテンザ)」もそうだけど、本当に印象的なのはもっと古いマツダ車。なにしろ80年デビューの初代FFファミリアを未だ見かけるんだからして。タマーにだけど。
いくらモノ持ちのいいドイツとはいえ、なぜにここまでマツダ車が定着しているのか? 論より証拠、お借りして乗ってみることにしました。
拝借したのはこの春ン年ぶりに登場したマツダ製2リッター直4ディーゼルターボを搭載したマツダ3だ。
マツダは90年代、ハッキリ言って少々眠っていたので、ヨーロッパ市場で絶対に必要なディーゼルエンジンを自社開発できず、フォードと共同購入したプジョー製1.4&1.6リッター直4ディーゼルで補っていた。
しかし先日、2010年度には世界販売160万台以上、営業利益2000億円以上、営業利益率6%を目指す“マツダ アドバンスメント プラン”という大風呂敷を広げたくらいに好調なので、いよいよディーゼルも内製開始。ヨーロッパで重要なマツダ3にいち早く載せてきたってわけ。
クルマもおろしたてで数100kmキロしか走ってない状態。心してインプレをお届けしますっ!
徹底した実用主義のクルマ
その新開発2リッター直4ディーゼルターボだが、スペック的には最高出力143psを3500rpmで、最大トルク36.7kgmを2000rpmで発生する実用エンジン。特に素早く吹け上がったりはせず、驚くほどスポーティということはない。
しかし、乗れば乗るほどその扱いやすさに気づく。実はこのクルマでフランクフルトからスイスのジュネーブまで、バーゼル経由で往復2000km近くも走ったのだが、6段MTにもかかわらずAT車のように運転できた。
アウトバーンでは6速入れっぱなしでOK。2000rpmからでもターボラグはほとんどなく、十分加速する。3速に入れておけば2000rpmの55km/hから6000rpmの150km/hまでバッチリカバーする。5000rpmからレッドゾーンが始まるが、上まで自然に回ってしまい、その間、妙な遅れやギクシャクは一切なし。ディーゼル特有のガラガラ音もクラッチ切って空ぶかししない限りはほとんど気づかない。
長距離を高速で走るヨーロッパは「ディーゼルしかないよなぁ」と思い知らされる。
運転のしやすさに関しては、ハンドリングも同様。日本においてマツダ車は、デミオにしろアテンザにしろ、極端にクイックな挙動の味付けがされている印象だが、このマツダ3ディーゼルはそうではなく徹底した実用主義が貫かれている。ステアリングを切ったら切ったぶんだけ素直に曲がる。日本仕様のアクセラとは特別ステアリングギア比などは変えていないらしいが、もしや若干落ち着いた味付けがされてるのかもしれない。
しかし、やっぱりこれがアウトバーンでは適当なのだ。なにしろ6速4000rpmで200km/hを突破。がんばって飛ばしてるとアッサリその領域までいっちゃうのだ。これでクイックな挙動をされると困るわけです。
さらに驚くのは乗り心地。最初に乗った時は、特に硬くもなくやわらかくもなく何も感じなかったのだが、150km/h前後で2000km近く走破した後ではとても好印象に。それ相応に疲れるのだが、妙な肩こりなどは残らず、スッキリしてるのだ。
ついでにギリシャ彫刻のような美しいボディデザインのわりに、荷物も立派に積める。実際、今回はスイス時計取材のためにカメラマン3人分の荷物、つまり大型スーツケースを4個も運んだのだが、後席を倒したらアッサリ積めてしまった。こういう便利なところを見ると、つくづくマツダがヨーロッパに溶け込んでいる理由がわかる。向こうの人は小さいクルマでも大きい荷物をガンガン積むからね。
もしやクルマ版“長谷川滋利”?
聞けばマツダ・ヨーロッパは2007年度に前年比6.7%増しの30万1200台を売り、過去15年で最高の成績を収めたという。なかでも5ヵ国では過去最高で、イギリスは前年度2.3%アップのシェア1.8%、ロシアはシェア3.5%、スペインはシェア1%などなど軒並み絶好調で、特にマツダ3とマツダ5(プレマシー)ががんばったんだとか。
そう、まさしくマツダは奇をてらわずにマジメなヨーロッパ市場にあったクルマとして普及してきたのだ。そしてその延長としての新型ディーゼルの搭載なわけ。
このエンジンの特徴は自前になったからこそできたエミッションと動力性能の絶妙な設定にあり、スタッフによればプジョーではできなかったレベルでの“クルマとのマッチング”が計れたという。単純に言うとディーゼルの場合、パワーを出せば排ガスが汚くなり、ガラガラ音を大きくすれば燃費が良くなるいう相関関係にある。そこのところをマツダ3の重量、ボディにあわせて最適化できたというのだ。パワーを出しつつ、燃費もギリギリまでよくできたのである。
実際、ドイツ−スイス間を往復して一番驚いたのが燃費でトータルで15.5km/リッター! ディーゼルとしては破格ではないけど、途中、時々200km/hを突破したことを考えるとなかなかの好燃費だ。
でもまあこれこそヨーロッパ市場に対するガチンコ勝負の証なのであろう。
そして私は思ったのだ。先日乗ったレクサスLSハイブリッドが、日本の誇るハイテクとブランドを兼ね備えた“クルマ版松坂大輔”だとすれば、新ディーゼルを搭載したマツダ3は、“クルマ版長谷川滋利”(もう引退しちゃったけど)みたいなもんだと。松坂みたいな飛び道具はないものの、現地に溶け込んでしっかり大人っぽくマジメに勝負する。こういう日本車があるのも、なかなか頼もしいなと思ったのであった。
(文=小沢コージ/写真=キムラオフィス)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
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