メルセデス・ベンツCクラスセダン【海外試乗記】
まんべんなく大きくなった 2007.03.13 試乗記 メルセデス・ベンツCクラスセダン「BMW」「アウディ」へのライバル心むきだしの新しいメルセデス・ベンツCクラス。ジュネーブショーで衆目を集めたニューモデルに、河村康彦がスペインで乗った!
ジュネーブから飛んだ先
たとえ『webCG』で自分が何を言おうが、そんなことでは(もちろん)これっぽっちも影響なし!
日本でも発売と同時に「セールス絶好調!」のニュースが聞かれるのはもはや確実!
そんな憎らしいほどのブランド力を携えて誕生したのが、新しい「メルセデス・ベンツCクラス・セダン」だ。
従来型のデビューは7年前の2000年。今でもそちらのモデルに触れてみれば、完成度はすこぶる高い、見た目上でも古さなど感じさせられない……。
というのは、多くの人の実感とも合致するはず。
個人的にそんな気持ちを携えて、2007年初のヨーロッパでのビッグショー「ジュネーブショー」からチャーター便で飛んだのは、東海岸を地中海に接するスペインはバレンシア。
下手に寒波に出くわせば、ヨーロッパの多くの地域ではまだ雪の心配が残るこの季節。様々な国際プレス試乗会は、南仏やイタリア、そしてこうしたイベリア半島で開催されるのが常なのである。
3つの顔
というわけで、ジュネーブショーの舞台上でもなかなかカッコよく見えた新しいメルセデス・ベンツCクラス。
もう初夏のエネルギーを感じさせるバレンシア。降り注ぐ太陽の光の下でも、Cクラスは、やはり同様の第一印象を与えてくれた。
前傾したベルトラインとさらに強い前傾姿勢を描くドアハンドル下のキャラクターライン。従来型以上の躍動感を演出する。
さらに、「メルセデス・ベンツSクラス」を彷彿とさせるフェンダーフレアの強い張り出しや、ベルトラインから前方へとつながるフロントフードのサイド見切りラインが、そうした“ダイナミズム”をより一層強化する。
新型のルックスのなかでも、まず、誰もが目を引き付けられそうなのが、大きく異なる2種類のフロントマスク。
「アバンギャルド」「エレガンス」そして「クラシック」。3種類のグレードが用意されるなか、アバンギャルドとそれ以外の2タイプは、異なるデザインのフロントマスクをもつ。遠目にも識別が可能だ。
中央部分でややシャープな折れ線をもつ、メルセデス・ベンツならではの大きなグリル。「アバンギャルド」は、3本の水平ルーバーでダイナミックさを強調。
後者はクロームの縁取りを中央の縦バーで二分割し、そこに細い3本の水平バーを通す、というデザインが基本。
「陸」「海」「空」をあらわす、「スリーポインテッド・スター」は、前者ではグリル内の中央部に置かれ、後者ではフード先端にマスコットとして立てられる。
主張と見識
インテリアは、メルセデス流儀の“安心デザイン”。すなわち各種のスイッチ類やメーター類が「あるべきところにあり、何のレクチャーを受けなくてもすぐに使える」というもの。
それでいながら、ナビゲーション・モニターをセンターパネルの低い位置からダッシュアッパーへと移設し、最新のマルチメディア操作系「COMAND」を設定したりと、決して進化が“停滞”しているわけではない。
「やっぱりメルセデスだな」と感じさせられる、そんな仕上がりのキャビンに乗り込むと、「ショルダー、エルボースペースが40mm拡大」というわりに、実は「あまり広くなっていない……」というのが実感。
しかしこれは練りに練られた戦略である。つまり、ライバルBMWに対する強烈なカウンターパンチなのだ。
新型Cクラスの全幅は1770mmで、“後出し”にも関わらずBMW3シリーズ・セダンより45mmも狭い。
「このクラスは全幅1.8mを超えるべからず!」
そんな主張と見識が、そこには込められているに違いない。
優等生
今回の試乗会に用意されたのは、ディーゼルモデルも含め「6気筒の7段AT仕様」のみ。
世界市場で主流となるはずの4気筒モデルがなかったのは残念だし、BMWがこの期に及んで3シリーズ全車のエンジンを「基本的にリーンバーン直噴化する!」と大胆に発表したのに、新型Cクラスのそれが「基本的に従来型のキャリーオーバー」というのもちょっとインパクトに欠ける気がする。
が、それはそれとして「C280」や「C350」、そしてそれらの「AMGパッケージ付き」など、総勢6台を2日間に亘って食した感想をひと言で表現すれば、
「走りは超絶スバラシイ」
それがぼくの率直なる思い。
しかし、“パーフェクト”という意味ではない。メルセデスの悪しき伝統(!)で、低速時に大きく切り込んだステアリングの戻りが鈍いのは、個人的にはまだちょっと気になる。ステップ比が小さいわりに、ときに大きなシフトショックを伝える7段ATの仕あがりにも首を傾げる部分があった。
けれども、どのモデルに乗ってもあらゆる速度・路面でのボディコントロールのよさは感心できるものだった。200km/hを大きく超える速度でもまるで半分の速度であるかのようなリラックスを味わわせてくれる「安心・安定感」にはやはり脱帽せざるを得ないのだ。
どこかの性能がずば抜けて凄いというのではなく、様々な性能を示すチャートの円形が「まんべんなく大きくなった」というのが、新型Cクラスの走りの実感。
憎らしいほどの優等生。
悔しいけれど、やはりそんな称号を与えざるをえない新型なのである。
(文=河村康彦/写真=ダイムラー・クライスラー日本)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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