シトロエンC4 クーペ2.0VTS(5MT)/セダン2.0エクスクルーシブ(4AT)【試乗記】
懐かしい味の先端 2005.05.12 試乗記 シトロエンC4 クーペ2.0VTS(5MT)/セダン2.0エクスクルーシブ(4AT) かつて「CX」を足に使い“シトロエンシンパ”を自認する自動車ジャーナリストの金子浩久。最新モデルの「C4」シリーズをドライブして、驚き、懐かしみ、感激した。
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“シトロエンシンパ”感激
『webCG』編集部の若手である本諏訪クンには、いまひとつピンと来なかったような「シトロエンC4」
(http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/
000016660.html)だが、長年のファンであり、かつて「CX」と生活を共にしてきた“オヤジ・シトロエンシンパ”としては、C4には随喜の涙を流さんばかりに大歓迎しているのである。
C4には、デビュー時から期待していた。2004年のパリ自動車サロンで大々的に発表されたときには、ブースに何台もディスプレイされたC4に端から乗ったり降りたりしていた。海外のモーターショーには何度も足を運んだが、展示されたニューモデルにこれだけしつこくまとわり付いたことはない。
ほかの何にも似ていないエクステリア、エキセントリックだけど慣れたら使いやすそうなインテリア、ほかのクルマでは見られないカラーコーディネイトと素材遣いなどだけで、“ああ、これで昔のシトロエンが帰ってくるかもしれない”と、僕はひとりほくそ笑んでいたのである。
前衛、狂気、変態
なぜならば、最近の“C”で始まるようになってからのシトロエンは、経営の合理化のためなのだろう、独特の個性を消し去っていたからだ。エンジンやプラットフォームをはじめとする部品の共用化をプジョーと推し進めたというだけでは済まされない“毒消し”が行われている。そう、「C5」や「C3」、「C2」などに乗るたびに、僕はシトロエンの現経営陣を呪っていた。
別に共用化それ自体が悪いわけじゃない。世界には、かなりの部分を共用しているにもかかわらず、お互いの個性とキャラクターをきちんと作り分け、演出し分けることに成功しているクルマがすくなくない。特に、最近ではその傾向が強いとすらいえよう。でも、シトロエンは違った。誰かが、シトロエンという思想とセンスを抹殺しようとしているとしか考えられなかった。
「こんなのだったら、別にシトロエンを選ぶ理由なんてない」
ほかよりちょっと変わっているからシトロエンなのであって、まともで普通のシトロエンなんて、存在自体が矛盾だ。
パリ自動車サロンで見たC4には、以前のシトロエンが持っていた前衛、狂気、変態っぽさのようなものの片鱗が見え隠れしていたのだ。
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ウォーターベッドに身をあずける
シトロエンらしさといえば、肝腎なのは走りっぷりだ。
雨の富士スピードウェイ周辺で最初に乗ったのは、「2.0クーペVTS」。180馬力を発生する2リッター4気筒を搭載するスポーツモデルである。テールゲートのゲートの下半分が透かしガラスになっていてルームミラー越しに外が見えるのは、「ホンダCR-X」や「アルファ・ロメオ・ジュニア・ザガート」と同じアイデアだ。
いかにもトルクが細そうにシュンシュンと回るエンジンを、5段MTを漕ぎながらFSW(これまでの「FISCO」に代わって、こう称するそうですな)周辺のワインディングロードを走る。
といっても、トルクは決して細いわけではない。あまりにも素っ気ないエンジンフィールが頼りなく感じられるだけだ。その証拠に、スピードメーターに眼を落とすと、結構な数字を示している。このスピード感の小ささは、かつての「CX GTi」や「BX GTi」などとソックリだ。加速感覚は希薄だから、威勢よく走った気がしない。ポルシェやBMWと同系統の“スポーティ”を期待すると、気持ちが空振りに終わる。でも、巡航速度を維持することに価値と喜びを見出せる人には、たまらない魅力となるだろう。
シトロエンの真骨頂といえば、ソフトな乗り心地も忘れてはいけない。C4はまるでウォーターベッドに身をあずけたかのような感触だ。コレはハイドロニューマチック・サスペンションであるか否かを問わず、かつてのシトロエンのすべてに備わっていたのだよ、本諏訪クン!
1990年代前半の『NAVI』のどこかに、森慶太さんが初めてコンパクトハッチ「AX」を運転して“ハイドロじゃないのに、ハイドロみたい”な走りっぷりに半ば呆れ、半ば感激しながら試乗記を書いている。
「2CV」だって、ある時代まではグニャーッと猛烈にロールこそすれ、決して路面を離すことのない、超ソフトな乗り心地だった。ハイドロかハイドロじゃないかは関係なく、シトロエンの乗り心地には一貫したものがあったのだ。
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溢れる“シトロエンらしさ”
4ドアの2リッターモデルに乗り換えて走っていると、15年以上昔に乗っていたCXのことを次々と思い出してきた。あのCXは排気量が2.2リッターもあったのに、C4の1.6リッターモデルよりも馬力が小さかったから、すごく遅い。でも、遅くてイヤになることはなかった。ソフトな乗り心地と、敏感で繊細なハンドリングがチャームポイントだった。
C4のメーターパネルはセンターコンソールの中心にある、円盤を半分に切ったようなユニットに収められているが、これなどは位置こそ異なるが形状はCXのそれをセルフサンプリングしたものだ。
数少ない残念な点は、本諏訪クンも指摘している通り、最小回転半径の大きさである。感覚的には、ライバル各車と比較して決して大きいわけではないのだが、都内のどんな路地でも切り返す必要のなかったCXほど驚かせてはくれないのだ。
もうひとつ。黒と濃いグレー、濃い茶色が主体のインテリアがC4のキャラクターに似合っていない。パリ自動車サロンに展示されていた、明るいベージュや薄いグリーンなども設定して欲しかった。
C4は、エクステリアやインテリア、そして走りっぷりなど、あらゆるテイストがシトロエンがシトロエンらしかった頃の延長線上にある。シトロエン好きが乗ったら、ちょっと驚くほど昔の良さを再現したと思えるのではないか。もちろん、C4は現代のクルマだから、まったく同じというわけではないが、C5やC3、C2などとは比べものにならない“シトロエン度”を備えている。ダブルシェブロンを見限りかけていた人に、ぜひ試してもらいたい。
(文=金子浩久/写真=荒川正幸/2005年5月)

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