クライスラーPTクルーザー リミテッド(4AT)【ブリーフテスト】
クライスラーPTクルーザー リミテッド(4AT) 2003.09.06 試乗記 ……290.0万円 総合評価……★★★★ いまひとつ成功に結びつかないアメリカンコンパクト。そんななか、上手にアメリカらしさを演出したPTクルーザーの評価が高い、モータージャーナリストの森口将之が乗った。
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アメリカンコンパクトのあるべき姿
個人的な意見だが、アメリカ車に日本車やヨーロッパ車のような緻密なパッケージングや仕上げを望むのは、酷なハナシだと思う。あんなに広々とした土地に住んでいたら、頭から「緻密」の2文字が消えてもおかしくはない……はずだ。
でもメーカーとしての生き残りを考えると、小さなクルマは不可欠である。そんなわけで、「サターン」の各モデルや「クライスラー・ネオン」が生み出されてきたが、結果はご存じのとおり。日本車やヨーロッパ車に似せようとした結果、アメ車の欠点が目立つようになってしまった。
そういういきさつを考えると、「PTクルーザー」は“うまいトコロ”をついていると思う。このクルマには、アメリカにしかできないデザインがあり、それが細かい欠点を忘れさせる。主役にはなれないかもしれないが、そんなことはメーカーもわかっているだろう。だから、アメリカンコンパクトはこれでイイ。
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【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
「PTクルーザー」のルーツは、1997年のデトロイトショーに出品されたコンセプトカー「プロント」だ。2ボックス5ドアのプロントに、大きな逆三角形のフロントグリルを据えることで、個性を表現していた。これが翌98年、レトロな雰囲気を加えた「プロント・クルーザー」に発展したあと、99年にPTクルーザーになる。この時点ではまだコンセプトカーだったが、多くのユーザーから市販化の要望が殺到し、2000年に発売された。
プラットフォームは、小型セダン「ネオン」のものを流用。前輪を駆動する2リッター直列4気筒DOHC16バルブエンジンも共通だが、ATが3段から4段になるなど、進化した部分もある。アメリカでは、2.4リッターや2.4ターボ仕様も存在する。
(グレード概要)
日本仕様は当初、ベーシックな「クラシック」と上級「リミテッド」の2本立てだったが、2003年モデルから中間グレード「ツーリング」が加わった。ツーリングは、エクステリアやインテリアの各部にクロームメッキをあしらったドレスアップ仕様。ホイールは15インチのキャップつきスチールから16インチのクロームメッキになる。
リミテッドもクロームメッキホイールを履くが、こちらはギラつきを控えめにした代わり(?)に、レザーシート、シートヒーター、ガラスサンルーフ、クルーズコントロールなどを装着。最上級グレードにふさわしい内容になっている。テスト車はこのリミテッドだった。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
背が高いボディのわりに、室内がタイトに感じられるのは、高めのダッシュボードと丈の短いウインドスクリーンのせい。とはいえ、インテリアは、とにかく雰囲気づくりがうまい。クオリティはそれほど高くないが、塗装仕上げのパネルをはめ込んだり、個性的なステアリングを与え、“アメリカンフィーリング”をうまく表現している。スイッチの配置はよく整理されていて、かつてのアメリカ車のような大ざっぱさはまったくない。
(前席)……★★★★
本革シートを装備したリミテッド。サイズはそれほど余裕があるわけではないが、座面には厚みがあって快適だ。しかも、腰を下ろしたときの感じは、日本車やヨーロッパ車とはあきらかに違う。アメリカ車だけのおおらかな感触だ。立体的な形状のおかげで、サポート性も満足できる。
(後席)……★★★
ヒップポイントが高めで、足を下ろした行儀の良い姿勢で座れる。ただし、座面は平板で、サポート性はあまり期待できない。リアに向けて高くなるルーフのおかげで、身長170cmの人が前後に座ると、ひざの前には15cm、頭上には5cmの空間が残る。
(荷室)……★★★★★
狭く感じるこのクルマの「裏技」といえるのが、パッケージングのすばらしさ。とくに荷室は、同じようにレトロなデザインをまとった新型「MINI」や、「ニュービートル」とは対照的に、しっかり使えるものだ。フロアは低くて奥行きがあり、壁はほとんど出っ張りがないく使いやすい。6:4分割可倒式のリアシートは、折り畳むだけでなく取り外しも可能。ラゲッジカバーは2段階にセットできるなど、工夫に富む。アメリカ製「ルノー・セニック」といっていいほどの内容だ。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
車輌重量が1460kgと、2リッターとしては重いこともあって、加速はほどほど。高速道路や山道では、モアパワーを望みたくなる。現在の2リッターとして静かとはいえず、とくに後席は排気音やロードノイズが耳につく。それでもさほど不満を感じないのは、低中回転のトルクに的を絞った、いさぎよいチューニングのためだろう。
ATは4段だが、このエンジンとの組み合わせでは不満をあまり感じない。個人的には、いかにもアメリカンなシフトレバーのデザインに免じて、許してあげようという気になる。「オートスティック」と呼ばれるレバーを左右に振ることでシフト可能なマニュアルモードは、皮肉にもワイドレシオなギア比を実感させることになる。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
初期のPTクルーザーの乗り心地は、チューニングカーを思わせる荒っぽい硬さがあった。しかし、その後改良が行われたようで、今回の試乗車は街なかでも不快に感じない。硬めではあるが、段差などのショックをうまくいなすようになったのだ。一方、高速クルージングは、もうすこしフラット感がほしいところである。
ハンドリングは、直進安定性の高さとクイックなステアリングレスポンス、さらに、太いタイヤに頼った感触のロードホールディングが印象的。つまり小さな前輪駆動車であっても、アメリカ車そのものだ。
(写真=峰昌宏)
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【テストデータ】
報告者:森口将之
テスト日:2003年8月7日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2003年型
テスト車の走行距離:9866km
タイヤ:(前)205/55R16(後)同じ(いずれもグッドイヤー EAGLE NCT5)
オプション装備:--
形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3):高速道路(3):山岳路(4)
テスト距離:264.8km
使用燃料:47.6リッター
参考燃費:5.6km/リッター

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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