フォルクスワーゲン Eos ターボFSI(FF/6MT)【海外試乗記】
作り込まれたオープンモデル 2006.05.30 試乗記 フォルクスワーゲン Eos ターボFSI(FF/6MT) 2005年のフランクフルトショーにVWが“目玉”として出展されたクーペカブリオレ「Eos」。後発であるがゆえか、ルーフの開閉機構と使い勝手、走りも含め「ポピュラーになる輸入車オープンの予感」がするという。ただ単に「Eos」なワケ
多くの日本人は、このクルマの車名を見てまず、カメラを思い浮かべるだろう。それでもフォルクスワーゲン(VW)は、同社初の電動開閉ハードトップに、あえて「Eos」を名乗らせた。ゴルフEosではなく、ただ単にEosである。
ヨーロッパはもちろん、日本でも知名度抜群のゴルフの名前を使わなかったのは、このクルマがゴルフとパサートの中間に位置するからだという。
Eosはゴルフ、パサートと共通のプラットフォームを使う。サスペンションは、フロントがゴルフ用、リアがパサート用だ。5種類あるエンジンのうち、日本へはガソリンの2リッター直列4気筒ターボと、3.2リッターV型6気筒が輸入される予定だが、これはゴルフにもパサートにもラインナップされる(パサートのV6はFSIという違いはあるが)。これだけでも、ゴルフ < Eos < パサートという位置関係が成り立つ。
もうひとつ、Eosがゴルフよりも“格上”である理由として、ゴルフクラスの4シーター電動開閉ハードトップ、つまり「プジョー307CC」、「ルノー・メガーヌ・グラスルーフカブリオレ(GC)」よりも、凝ったルーフ構造を持つことがあげられるかもしれない。
拡大
|
拡大
|
凝ったつくりと利便性
メガーヌGCは、先に登場した307CCに対抗して、ルーフをガラスにした。ところがEosはそのガラスをスライディングルーフにしてきたのである。さらに、所要時間約25秒というルーフの開閉も、シンプルな2つ折り方式ではない。スライディングルーフが後ろに、リアウィンドウ部分が前にせり上がった状態で、後ろにスライドするようにトランクに収まる。
この開閉方法のポイントは、ルーフ左右のアーチをリアシートの脇にうまく格納することにある。おかげでルーフを長く、フロントウィンドウの角度を立てることができた。プジョーやルノーでは、オープンにすると窓枠が顔にせまって気になるが、Eosではそういうことはなかった。目線を上にやるだけで、青空を見ることができるのだ。
フロントウィンドウが遠くにあると、風の巻き込みが気になるところだが、Eosはそれに対処して、窓枠の上にポップアップ式のデフレクターを備えている。リアシート上に固定するデフレクターとセットで使えば、100km/hまでならキャビンに風が巻き込むことはなかった。
しかもこのルーフ、2つ折り方式より薄くたためるので、オープンのときでもトランクがけっこう深い。容量は205リッターで、307CCより1リッター多いだけだが、実際に目にすると、天地方向の余裕を感じた。リアシートの広さは307やメガーヌと同レベルで、身長170センチの人間ならフル4シーターとして使える。
フィールは上質、走りは活発
今回乗ったのは2リッターターボ。日本仕様はV6を含めてDSGとなる予定だが、試乗車は3ペダルの6段MTだった。ゴルフGTIのパワートレインをそのまま載せたものと思えばいい。
車重は1.5tを越えるが、パワーは200psだから、フルスロットルではけっこう強力なダッシュをもたらす。それ以上にありがたかったのは、ターボならではのフレキシブルなトルクだ。ギアチェンジを多少さぼっても、思いどおりの加速を手に入れることができた。オープンカーにふさわしいこの「ゆとり」は、自然吸気の2リッターでは得られないものだろう。
ボディ剛性の高さはさすがVWで、クーペのときとオープンのときとで印象がほとんど変わらない。乗り心地はしっとりしなやか。ボディの重さもいい方向に味方して、ゴルフよりもむしろパサートを思わせる、上質なフィーリングを手に入れている。
ハンドリングはルーフの開閉で印象が違った。たたんだルーフをリアにしまうオープン時は、ノーズの軽さと重心の低さが印象的で、ゴルフやパサートより着座位置が低いこともあって、スポーティなキャラクターが強調される。一方、重量配分はリア寄りになり、パワーやトルクに余裕があるので、コーナーの立ち上がりでは前輪の接地感がもう少し欲しいと思うこともあった。しかし、クーペにすればその不満は消失。VWらしい安定性重視のハンドリングを手に入れることができる。
凝ったルーフ構造やターボエンジンなどでプジョーやルノーに差をつけながら、「2リッターターボで450万円ぐらい」といわれる予想価格は、BMWやアウディのカブリオレよりかなり安い。しかも後発モデルならではの完成度の高さが、随所に見受けられる。歴代ゴルフのカブリオレがそうだったように、輸入車のオープンカーでもっともポピュラーな存在になるのは間違いないだろう。
(文=森口将之/フォルクスワーゲン グループ ジャパン/2006年5月)

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
-
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】 2026.3.3 「GRヤリス」の新仕様として設定された「エアロパフォーマンスパッケージ」装着車に試乗。レースフィールドでの知見を交え開発したというエアロパーツの空力・冷却性能は、リアルワールドでも体感可能なのか。高速道路を経由し、郊外のワインディングロードを目指した。
-
ドゥカティ・モンスター(6MT)【海外試乗記】 2026.3.2 ドゥカティのネイキッドスポーツ「モンスター」が5代目にモデルチェンジ。無駄をそぎ、必要なものを突き詰めてきた歴代モデルの哲学は、この新型にも受け継がれているのか? 「パニガーレV2」ゆずりのエンジンで175kgの車体を走らせる、ピュアな一台の魅力に触れた。
-
フォルクスワーゲンID.4プロ(RWD)【試乗記】 2026.2.28 フォルクスワーゲンのミッドサイズ電気自動車(BEV)「ID.4」の一部仕様変更モデルが上陸。初期導入モデルのオーナーでもあるリポーターは、その改良メニューをマイナーチェンジに匹敵するほどの内容と評価する。果たしてアップデートされた走りやいかに。
-
スズキ・キャリイKX(4WD/5MT)【試乗記】 2026.2.27 今日も日本の津々浦々で活躍する軽トラック「スズキ・キャリイ」。私たちにとって、最も身近な“働くクルマ”は、実際にはどれほどの実力を秘めているのか? タフが身上の5段MT+4WD仕様を借り出し、そのパフォーマンスを解き放ってみた。
-
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(4WD)【試乗記】 2026.2.26 日本で久々の復活を遂げた「ホンダCR-V」の新型に、北海道のテストコースで試乗。雪上・氷上での“ひとクラス上”の振る舞いに感嘆しつつも、筆者がドン! と太鼓判を押せなかった理由とは? デビューから30年をむかえたCR-Vの、実力と課題を報告する。
-
NEW
BYDシーライオン7 AWD(4WD)
2026.3.5JAIA輸入車試乗会2026堂々たるスタイルにライバルの上をいくパワーと一充電走行距離、そしてざっくり2割はお得なプライスを武器とする電気自動車「BYDシーライオン7」。日本市場への上陸から1年がたち、少しずつ存在感が増してきた電動クーペSUVの走りやいかに。 -
NEW
ついにハードウエアの更新も実現 進化した「スバルアップグレードサービス」の特徴を探る
2026.3.5デイリーコラムスバルが車両の機能や性能の向上を目的とした「スバルアップグレードサービス」の第3弾を開始する。初めてハードウエアの更新も組み込まれた最新サービスの特徴や内容を、スバル車に乗る玉川ニコがオーナー目線で解説する。 -
NEW
第951回:日本が誇る名車を再解釈 「ホンダNSXトリビュートby Italdesign」の開発担当者に聞く
2026.3.5マッキナ あらモーダ!2026年の「東京オートサロン」で来場者の目をくぎ付けにした「ホンダNSXトリビュートby Italdesign」。イタルデザインの手になる「ホンダNSX」の“再解釈”モデルは、いかにして誕生したのか? イタリア在住の大矢アキオが、開発関係者の熱い思いを聞いた。 -
メルセデス・マイバッハSL680モノグラムシリーズ(4WD/9AT)【試乗記】
2026.3.4試乗記メルセデス・マイバッハから「SL680モノグラムシリーズ」が登場。ただでさえ目立つワイド&ローなボディーに、マイバッハならではのあしらいをたっぷりと加えたオープントップモデルだ。身も心もとろける「マイバッハ」モードの乗り味をリポートする。 -
始まりはジウジアーロデザイン、終着点は広島ベンツ? 二転三転した日本版「ルーチェ」の道のり
2026.3.4デイリーコラムフェラーリ初の電気自動車が「ルーチェ」と名乗ることが発表された。それはそれで楽しみな新型車だが、日本のファンにとってルーチェといえばマツダに決まっている。デザインが二転三転した孤高のフラッグシップモデルのストーリーをお届けする。 -
第863回:3モーター式4WDの実力やいかに!? 「ランボルギーニ・テメラリオ」で雪道を目指す
2026.3.3エディターから一言電動化に向けて大きく舵を切ったランボルギーニは、「ウラカン」の後継たる「テメラリオ」をプラグインハイブリッド車としてリリースした。前に2基、リアに1基のモーターを積む4WDシステムの実力を試すべく、北の大地へと向かったのだが……。

























