プジョー 1007 1.6(2ペダル5MT)【ブリーフテスト】
プジョー 1007 1.6(2ペダル5MT) 2006.04.06 試乗記 ……249.0万円 総合評価……★★★★ 日本車が席巻する実用的コンパクトカーの分野に、機能性とファッション性で戦いを挑むのが「1007」。プジョーならではの乗り味は、そこでも貫かれているのだろうか。コンパクトカーの新風
日本車にも輸入車にも、実用的かつ機能的なコンパクトカーはたくさんある。競争の激しいコンパクトカーだからこそ機能性でも勝負……といったほうが正しいかもしれない。もちろん、買う立場としてはうれしいことなのだが。
そんな激戦区に生きるコンパクトカーだから、商品力の高さには目を見張るものがあるが、反面、クルマ好きを唸らせるような魅力が乏しかったのも事実だ。
その点、このプジョー1007は一頭地を抜く存在である。そもそもサイズからしてユニークで、1630mmの全高と1710mmの全幅(3ナンバーだ!)のおかげで真正面や真後ろから見るかぎりコンパクトとは思えないのに、横から見ると3730mmという数字相応の“寸詰まり”感。このギャップが面白い。そのうえ両サイドには大型のスライドドアが備わるから、見た目のインパクトも十分だ。
インテリアも、フレキシブルなシートアレンジがもたらす機能性もさることながら、「カメレオコンセプト」によるカスタマイズの楽しさが魅力的だ。
もちろん、それ以外にも注目すべきところはたくさんある。コンパクトカーのよさはわかっていても、いざ購入となるとそそられるモデルが見あたらない、という人は少なくないと思う。1007はそんな人にこそぜひ検討してほしいクルマなのである。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
プジョー初の4桁車名を与えられた4人乗りコンパクトワゴンで、2006年3月発売。ピニンファリーナとプジョーデザインセンターが手がけたボディは、両側電動スライドドアを備える。車内には、独立した4つのシートが置かれ、後席と助手席は折り畳むことができる。
インテリアを自由に交換できる「カメレオコンセプト」を採用し、18か所のパーツを好みの色にチェンジすることができる。
エンジンは1.4リッターSOHCユニットとDOHCの1.6リッターの2種類で、いずれも直4。組み合わされるトランスミッションは、2ペダル式「2トロニック」。サスペンション形式は前マクファーソンストラット、後トレーリングアーム。
(グレード概要)
108psを発生する1.6リッターエンジンを搭載したモデル。外装での1.4との相違点は、ドアプロテクションモールがボディ同色になり、15インチスチールホイールに代えて16インチアロイホイールが装着されることなど。また、雨滴感知式オートワイパー、オートエアコンなどの快適装備も標準となる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★★
鮮やかなボディカラーが豊富に揃うのも1007の特徴だが、さらにうれしいのはシートトリムやエアコンの吹き出し口カバー、ドアパネルカバーなどが簡単に交換できる「カメレオコンセプト」の採用である。
いままでは外装と内装を自由に組み合わせられないために、妥協を強いられる場合が少なくなかった。また、購入後に、「やはり別の色のインテリアがよかった」ということもある。しかし、カメレオコンセプトならその心配もない。
たとえばエーゲブルーの外装色が施された試乗車には標準で“ナテオ”と呼ばれる濃紺のカバーが組み合わされるが、アクセサリーパーツとして用意される12種類の「カメレオキット」の中から、他のカラーを選ぶことができる。交換には工具を必要とせず、また、18パーツ・1セットが3万1500円という手頃な価格もうれしい。
さらに、シートトリムは取り外してドライクリーニングが可能(カラーによってはできないものもある)で、また、キットに含まれるパーツは単品でも購入できたり、エアコンの吹き出し口カバーだけのセットが用意されるなど、細かい部分の配慮もうれしい。
(前席)……★★★
リモコンのスイッチを押すかドアハンドルを後ろに動かすことにより、幅1370mmの大型スライドドアがゆっくりと開く。そこから運転席に座るというのは、実に新鮮な感覚だ。
フロアは低いが、シートの座面がやや高めに設定されるおかげで乗り降りはラク。運転席に座ると、しっかりと身体を受け止めるクッションと張り出しの大きいサイドサポートによりややタイトな印象を受けた。運転席からノーズは見えないが、アイポイントが適度に高いために視界は良好である。
ダッシュボードにはスライドドアの開閉スイッチが用意されるが、最初のうちはパワーウインドーのスイッチと間違えることがあった。もちろん走行中に誤操作しても、微低速以外は開くことはないが、有料道路の料金所などで停車したときには開いてしまう。
まあこれは慣れの問題なのでいいとして、気になったのは窓を開けたままドアが開くこと。もちろんこの1007に限ったものではないが、子供が手や首を挟んだりしないか不安になる。試しに開こうとしているドアを、サッシュの内側から手で押してみたが、動作を止めるにはかなりの力が必要である。使い勝手は悪くなるが、窓が開いている状態ではドアが開かないような仕掛けが必要ではないだろうか?
(後席)……★★★
スライドドアを採用したことで、3ドアでありながら狭い場所でも容易に乗り降りができるのが魅力の1007。さらに開口部が広いので、後席へのアクセスは一般的な3ドアよりも格段に便利だ。
ただ、後席のスペースそのものに余裕はなく、大人でもなんとか座れるが、長時間過ごすには足元が窮屈。子供のためのスペースと考えた方がいい。
(荷室)……★★★
後席を最も後ろにスライドさせた状態では、奥行きが40cmほどのラゲッジスペースだが、後席を左右別々にスライドしたり折り畳んだりできるので、乗車人数が少なければ大きな荷物を積み込むこともできる。また、助手席を前に倒せば、約2mの長尺物を載せることも可能だ。バックドアは一般的な跳ね上げ式となるが、オープン用のスイッチはモデル名の“0”の部分には隠されていないので、念のため。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
1007には1.4リッターSOHCと1.6リッターDOHCの2つのエンジンが用意されるが、組み合わされるトランスミッションはともに「2トロニック」と呼ばれるマニュアルギアボックスがベースのオートマチックだ。
今回は1.6リッターを積むモデルを試したが、最高出力108ps/5750rpm、最大トルク15.0kgm/4000rpmのエンジンは必要十分な性能を備えており、発進の瞬間やシフトアップのときには2ペダルマニュアル特有のタイムラグを感じるが、走り出してしまうとフラットなトルク特性を持つパワーユニットのおかげで力不足を感じる場面は少ない。高速道路では、100km/h巡航を5速で3000rpmでこなすが、エンジン音はさほど気にならないレベルに抑えられていた。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
背が高く、ホイールベースが短い1007だから、派手なロールや、あるいはピッチングの目立つ落ち着きのない乗り心地を覚悟していたが、うれしいことにその予想は見事に裏切られた。
装着される195/50R16のタイヤはやや硬いが、乗り心地そのものはおおむね快適。それでいてコーナーリングや高速道路でのレーンチェンジでロールは小さく、背が高いことを意識させられることはない。さらに高速ではピッチングが抑えられていて、プジョーの名に恥じないフラットな乗り心地を提供してくれた。直進安定性も高く、長距離の移動も苦にならないのはさすがといえる。
(写真=郡大二郎)
|
【テストデータ】
報告者:生方聡
テスト日:2006年3月13日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2006年型
テスト車の走行距離:2398km
タイヤ:(前)195/50R16(後)同じ(いずれもダンロップSP SPORT 01)
オプション装備:--
形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3):高速道路(7)
テスト距離:--
使用燃料:--
参考燃費:--

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
-
アストンマーティン・ヴァンキッシュ ヴォランテ(FR/8AT)【試乗記】 2026.3.14 英国の名門、アストンマーティンの旗艦車種「ヴァンキッシュ」に、待望の「ヴォランテ」が登場。5.2リッターV12エンジンを搭載した最上級コンバーチブルは、妥協のないパフォーマンスと爽快なオープンエアのドライブ体験を、完璧に両立した一台となっていた。
-
プジョーE-3008 GTアルカンターラパッケージ(FWD)【試乗記】 2026.3.11 「プジョー3008」の電気自動車版、その名も「E-3008」が日本に上陸。新しいプラットフォームに未来感あふれるボディーをかぶせた意欲作だが、その乗り味はこれまでのプジョーとは明らかに違う。ステランティスのような大所帯で個性を発揮するのは大変だ。
-
ジープ・アベンジャー アップランド4xeハイブリッド スタイルパック装着車(4WD/6AT)【試乗記】 2026.3.10 「ジープ・アベンジャー」のラインナップに、待望の「4xeハイブリッド」が登場。既存の電気自動車バージョンから、パワートレインもリアの足まわりも置き換えられたハイブリッド四駆の新顔は、悪路でもジープの名に恥じないタフネスを披露してくれた。
-
三菱デリカD:5 P(4WD/8AT)【試乗記】 2026.3.9 デビュー19年目を迎えた三菱のオフロードミニバン「デリカD:5」がまたもマイナーチェンジを敢行。お化粧直しに加えて機能装備も強化し、次の10年を見据えた(?)基礎体力の底上げを図っている。スノードライブを目的に冬の信州を目指した。
-
ホンダCB1000F SE(6MT)【レビュー】 2026.3.7 ホンダから満を持して登場した、リッタークラスの4気筒マシン「CB1000F」。往年のCBをほうふつさせるスタイルと、モダンなパフォーマンスを併せ持つネイキッドスポーツは、先行するライバルを追い落とすことができるのか? ホンダ渾身(こんしん)の一台の実力に触れた。
-
NEW
トヨタRAV4 Z(4WD/CVT)/RAV4アドベンチャー(4WD/CVT)【試乗記】
2026.3.17試乗記「トヨタRAV4」が6代目へと進化。パワートレインやシャシーの進化を図ったほか、新たな開発環境を採用してクルマづくりのあり方から変えようとした意欲作である。ハイブリッドの「Z」と「アドベンチャー」を試す。 -
NEW
クルマの内装から「物理スイッチ」が消えてタッチパネルばかりになるのはどうしてか?
2026.3.17あの多田哲哉のクルマQ&A近年、多くのクルマの車内では、物理的なスイッチが電気式のタッチパネルに置き換えられている。それはなぜなのか? トヨタでさまざまなクルマを開発してきた多田哲哉さんに理由を聞いた。 -
いまこそ、かき回したい! 新車で買えるおすすめMT車はこれだ!
2026.3.16デイリーコラム改良型「トヨタ・ヤリス」に、新たに6段MTモデルが設定された。現実的にMT車はレアであり、消滅する可能性もある時代だが……。これを機に、いま新車で買えるMT車のなかで、特におすすめできるモデルをピックアップしてみよう。 -
第331回:デカいぞ「ルークス」
2026.3.16カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。首都高で新型「日産ルークス」の自然吸気モデルに試乗した。今、新車で購入される軽ハイトワゴンの8割はターボじゃないほうだと聞く。同じターボなしの愛車「ダイハツ・タント」と比較しつつ、カーマニア目線でチェックした。 -
ポルシェ・タイカンGTS(後編)
2026.3.15思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「ポルシェ・タイカン」に試乗。後編ではコーナリングマシンとしての評価を聞く。山野は最新の「GTS」に、普通のクルマとはだいぶ違う特性を感じているようだ。 -
アストンマーティン・ヴァンキッシュ ヴォランテ(FR/8AT)【試乗記】
2026.3.14試乗記英国の名門、アストンマーティンの旗艦車種「ヴァンキッシュ」に、待望の「ヴォランテ」が登場。5.2リッターV12エンジンを搭載した最上級コンバーチブルは、妥協のないパフォーマンスと爽快なオープンエアのドライブ体験を、完璧に両立した一台となっていた。





