第252回:ついに「ポルシェケイマンS」試乗!見事オンネンふり払ってます!!
2006.02.07 小沢コージの勢いまかせ!第252回:ついに「ポルシェケイマンS」試乗!見事オンネンふり払ってます!!
■“長嶋茂雄”ははずせない
久々にポルシェの新型に乗って感動してしまいました。素晴らしい! 素晴らしくイイ! これぞ本当のポルシェ、リアルモダンポルシェだと!! やや舞い上がった表現でありますが。
でもね。マジな話、ポルシェAG様はもっと早くにこういうクルマを作りたかったんじゃないのかなぁ。こんなふうに普通に速く、楽しく、肩の力が抜けたマシンをであります。ようやく日の目を見れてよかったねぇ。
思い返せばここ数年は911でも結構ツラかった気がする。ビジネス面では世界的に大成功みたいだけど、996型から997型への変化なんてツライじゃない。どーみても“昔の名前で出ています”パターン。せっかくスタイルからして新しく生まれ変わったのに、顔だけ昔の付けて、「味、戻ってきてますよ〜」とアピール。川の水がキレイになって「鮭、戻ってきてますよ〜」じゃないんだからさ。
確かに996はそれ以前の空冷モノに比べて味薄かったけど、それでも普通のスポーツカーに比べりゃよっぽど速くてしっかり精密だったしね。
でもねぇ。実際、客の舌は正直で、どーせリアエンジンの2+2マシンを作るんなら、古臭くなければいけなかったのよね。要するにあれは過去の遺物だから。昔の味がなければ意味がない。つまりローマのコロシアムがピカピカだったらつまんないし、京都のお寺が白木で作られていたら興ざめだという。
具体的にいえばリアエンジンにすると、どうしてもマトモなハンドリングにするのに手間かかるし、前後バランス悪くて乗り心地キツくなる。
だから911はポルシェにとっての“長嶋茂雄”なんだよね。いまさら外せない、永遠のシンボルでありスーパースター。あるいはどんなにダメになっても使い続けなければならないというある種の“怨念”。911フォーマットは替えたくても替えられないのだ。
■お気楽で、イイ!
業界の人なら誰でも知ってるハズだけど、1977年に登場した V8&トランスアクスルの巨大スポーツカー「928」にしても、そのV8を半分にぶった切って作った「944」にしても、その永遠のスーパースターである 911を越えようとして越えられなかった無念の作。ある意味、原辰徳であり、清原和博的。ちょっと違うけど……。
ところがどっこい、新時代のスターは意外なところから現れた。ヤリ手の新社長、アメリカ育ちのヴェンデリン・ヴィーデキング博士の考えによって始まった“カジュアルポルシェ”路線。具体的には、アメリカ向けのバカっ速SUV「カイエン」、お手軽入門用ポルシェのオープンミドシップカー「ボクスター」が作られたわけだけど、このボクスターをブラッシュアップして次世代のスターが生まれつつあるのだ。
2軍であんまり期待してなかった選手の中からスターが生まれるような構図かな。ま、最初から期待してたかもしれないんだけどさ。実際はどうなんだろうね。
で、ケイマンのどこがいいって、とにかくお気楽なんだよね。まずはクラッチからしてほどよく軽いだけでなく、ボクスター用をベースにした3.4リッターフラット6が低回転からネバリにネバるから、発進時のエンストは全く危なげがない。これで発進失敗したら心の底から高笑いしてあげましょう。それか、もしや寝てた? って感じ。
走り出してもエンジンの素晴らしいこと。こなれてきたら高回転でもっと伸びる! っていう人もいるけど俺はこれで十分。なんつーか、とにかく超フレキシブルなのだ。ローギアでゆっくり6000回転まで引っ張ってもストレス感じないし、逆に3速で超低速域から6000回転まで引っ張っても息苦しくない。というか、3速固定ドライブはホントに素晴らしいね。まさしくオートマでいうDレンジみたいなもんで、10km/hからたぶん150km/hまで事足りる。そこまで引っ張ったことはないんだけどさ(笑)。
乗り心地も全く持っていい。その点は911と比べ物にならなくて、さすがにミッドシップで前後重量バランスがいいから、最適なセッティングができるんでしょう。ついでに6段MTについていうと、昔のポルシェほど繊細でもないけど、ほどよい切れと確実性があってちょうどいい。ボクスターと同じなんだけどね。
■ケイマンで十分
残るはステアリングフィールとブレーキのタッチよ。正直、911ほどガツンと剛性感があるかっていうとそうでもない。ただ、実はそれこそが911の呪縛であって、今までの911は逆にしっかりしすぎていたような気になってくる。ぶっ飛ばしてる時はちょうどいいけど、街乗りだと「もっと気楽に操作できんかな〜」と感じる時があって、今の俺の気分にはケイマンぐらいがちょうどいいのだ。飛ばして楽しく、ゆっくり走って楽チン。
それにその安全マージンというか、全体の余裕はほかにないレベルだと思う。いわゆるミドシップスポーツカーってのは、タイヤが滑り出すと止まらないとか、限界が高い分怖いとかよくいわれるけど、それをあまり感じない。もっともこれはサーキットで走ってみないと本当のとこはわからないんだけど、個人的な予感として限界高すぎず、それでいてステアリングフィールもビシバシあるから、あまり怖いことにならないような気がする。まさしく良質のミドシップであって、乗ってて前後左右にほぼ均等に余裕がある感じ。それに比べると今の911の方がよっぽど怖いし、ヤバくてツライ。ムリしてるイメージ。
ついでに日頃964型911に乗ってて、リアシートに人が乗ることはほとんどない上、これだけ前後に荷物が乗るんだから、ケイマンで本当に十分だよね。
後はお金の問題です。車両価格で消費税入れて777.0万円(6MT)か〜。諸経費入れたら800万円超えちゃうわけだ。うーん、確かにケイマンSは素晴らしい! だけど、これだったら中古の「ボクスターS」のが安いし、捨てがたいなぁ。走りのキレは若干落ちるけど、オープンはキモチいいし、カッコは基本的に同じだしさ……。
と最後にちょっと日和ってしまった俺でした(笑)。(文と写真=小沢コージ/2006年2月)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
-
第454回:ヤマダ電機にIKEAも顔負けのクルマ屋? ノルかソルかの新商法「ガリバーWOW!TOWN」 2012.8.27 中古車買い取りのガリバーが新ビジネス「WOW!TOWN」を開始。これは“クルマ選びのテーマパーク”だ!
-
第453回:今後のメルセデスはますますデザインに走る!? 「CLSシューティングブレーク」発表会&新型「Aクラス」欧州試乗! 2012.7.27 小沢コージが、最新のメルセデス・ベンツである「CLSシューティングブレーク」と新型「Aクラス」をチェック! その見どころは?
-
第452回:これじゃメルセデスには追いつけないぜ! “無意識インプレッション”のススメ 2012.6.22 自動車開発のカギを握る、テストドライブ。それが限られた道路環境で行われている日本の現状に、小沢コージが物申す!?
-
第451回:日本も学べる(?)中国自動車事情 新婚さん、“すてきなカーライフに”いらっしゃ〜い!? 2012.6.11 自動車熱が高まる中国には「新婚夫婦を対象にした自動車メディア」があるのだとか……? 現地で話を聞いてきた、小沢コージのリポート。
-
NEW
クルマの乗り味の“味”って何だ?
2026.1.20あの多田哲哉のクルマQ&A「乗り味」という言葉があるように、クルマの運転感覚は“味”で表現されることがある。では、車両開発者はその味をどう解釈して、どんなプロセスで理想を実現しているのか? 元トヨタのエンジニア、多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
プジョー208 GTハイブリッド(FF/6AT)【試乗記】
2026.1.20試乗記「プジョー208」にマイルドハイブリッド車の「GTハイブリッド」が登場。仕組みとしては先に上陸を果たしたステランティス グループの各車と同じだが、小さなボディーに合わせてパワーが絞られているのが興味深いところだ。果たしてその乗り味は? -
ベントレー・コンチネンタルGTアズール(4WD/8AT)【試乗記】
2026.1.19試乗記ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」のなかでも、ウェルビーイングにこだわったという「アズール」に試乗。控えめ(?)な680PSのハイブリッドがかなえる走りは、快適で満ち足りていて、ラグジュアリーカーの本分を感じさせるものだった。 -
第327回:髪もクルマもナイスファイト!
2026.1.19カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。日産の新型「ルークス」で夜の首都高に出撃した。しっかりしたシャシーとターボエンジンのパワフルな走りに感心していると、前方にスーパーカーの姿を発見。今夜の獲物は「フェラーリ・ローマ」だ! -
日本で売れるクルマはあるのか!? 最新の“アメリカ産ニホンシャ”を清水草一が検証する!
2026.1.19デイリーコラムアメリカからの外圧による制度変更で、北米生産モデルの国内導入を決めたトヨタ。同様に、今後日本での販売が期待できる「海外生産の日本車」には、どんなものがあるだろうか? 清水草一が検証してみた。 -
フェラーリ12チリンドリ(後編)
2026.1.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「フェラーリ12チリンドリ」に試乗。前編では伝家の宝刀であるV12エンジンを絶賛した山野。後編ではコンビを組むシャシーの印象を余すところなく聞いてみた。
