アウディTTクーペ 2.0TFSI(FF/2ペダル6MT)/3.2クワトロ(4WD/2ペダル6MT)【試乗速報】
もう「TTを着る」とはいえない 2006.10.21 試乗記 アウディTTクーペ 2.0TFSI(FF/2ペダル6MT)/3.2クワトロ(4WD/2ペダル6MT) ……508.0万円/607.0万円 約8年を経て2代目に生まれ変わったアウディのスポーティモデル「TTクーペ」が日本上陸。乗り心地、ハンドリングの進化は実感したが……。新型の印象を報告する。室内空間の拡大は前席のみ
初めてのモデルチェンジを受けたアウディTTクーペを見て、「ポルシェ911」が空冷から水冷に切り替わった頃を思い出した。
旧型TTはエクステリアにしてもインテリアにしても、凝縮感こそが魅力のひとつだったと思う。だから「BMW・MINI」のように、サイズを変えない進化という手法もあったはずだ。しかしドイツの自動車メーカーは、モデルチェンジのたびに車体を大きくしなければ許されないらしい。
全長は120mm、全幅は75mm、全高は50mm、そしてホイールベースは40mm、旧型より拡大している。そのためフロントマスク、Bピラーから後ろのサイドビュー、リアエンドパネルなどに、間延び感があることは否めない。キャビンも同じ。旧型では「TTを着る」という表現が似合いそうなほどタイトだったそこは、インパネ中央の円形ルーバーが2個から3個に増えたことでわかるように、かなり余裕がもたらされた。
ただしそれは前席まわりだけで、後席はサイズアップの恩恵は受けられず、首を深く折り曲げても頭はルーフにつき、足は入らない。完全なプラス2だ。前席は腰まわりのサポートはタイトだが、上体のホールド性はルーズという最近のドイツ車によくみられる形状。身長170センチ、体重60キロという自分より、かなり体格のいい人を想定しているようだ。
拡大
|
拡大
|
乗り心地で選ぶならターボモデル
仕上げは相変わらずいい。アウディのアイデンティティーといえるアルミには、ルーバーやドアオープナーはバフ仕上げ、センターコンソールはサテン仕上げと、異なった表面処理を施している。試乗車の中には、黒をベースにボディカラーを取り入れた2トーンのコーディネイトもあり、クーペらしいスペシャルな空間を作り出していた。
ペダルに対して、ステアリングが遠く上のほうにあるドライビングポジションに体を合わせ、クルマをスタートさせる。今回は2種類の日本仕様、2.0TFSI(直噴ターボ)と3.2クワトロの両方に乗れた。トランスミッションはどちらもSトロニック。つまりフォルクスワーゲン「ゴルフGTI」「R32」のDSG仕様と基本的に同じパワートレインを持つ。
TFSIユニットは、ゴルフGTIよりもなめらかな吹け上がり。踏み込むとフォーンといういい音を聞かせてくれる。V6は自然吸気ならではのレスポンスと、ターボ以上の速さが印象的だ。DSGとの組み合わせは、4WDということもあり、獲物に飛びかかるような瞬発力をもたらす。こちらのサウンドは聞きほれるような種類ではないものの、緻密な音質がアウディらしい。
2.0の乗り心地は硬めながらストローク感があり、快適。ボディの剛性感はもうしぶんない。スポーツ系アウディによくみられる細かい上下動も、うまくシャットアウトされている。3.2クワトロはこれよりハードになる。乗り心地で選ぶなら2.0だ。
69%アルミ製の軽さを実感
新型TTクーペはボディの大部分、重量でいえば69%をアルミ製とした。車両重量は、事実上同じパワートレインを積むゴルフGTI/R32より120kgも軽い。スティールで残されているのは、フロアパネル後部とドア、リアゲートぐらい。つまり前半分を集中的に軽量化している。ロック・トゥ・ロック3回転弱の、自然な手応えの電動パワーステアリングを切ると、その瞬間の鼻の動きで前の軽さを実感する。
とくにノーズが軽い2.0の動きはかなり鋭い。もすこし落ち着きがほしいと思えるほどだ。しかし接地感不足にはならず、立ち上がりでアクセルを踏み込めばその力を加速に結びつけてくれる。3.2クワトロはパワートレインが重いぶん、フロントの落ち着き感が増しており、重量バランスがとれている感じがした。ロードホールディング性能やトラクション性能の高さはさすが4WDだ。
乗り心地やハンドリングについては、旧型よりもあきらかにレベルアップしている新型TTクーペ。それだけに、エクステリアやインテリアから受けるルーズフィット(?)な感触は、最後まで気になった。しかし、水冷の911もデビュー当初はサイズアップに非難が浴びせられたが、いまではそのような声は聞かれない。新型TTクーペもあと5年ぐらいすると、印象が変わるのかもしれない。
(文=森口将之/写真=郡大二郎/2006年10月)

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
-
トヨタbZ4X Z(FWD)【試乗記】 2026.2.14 トヨタの電気自動車「bZ4X」が大きく進化した。デザインのブラッシュアップと装備の拡充に加えて、電池とモーターの刷新によって航続可能距離が大幅に伸長。それでいながら価格は下がっているのだから見逃せない。上位グレード「Z」のFWDモデルを試す。
-
日産リーフB7 G(FWD)【試乗記】 2026.2.11 フルモデルチェンジで3代目となった日産の電気自動車(BEV)「リーフ」に公道で初試乗。大きく生まれ変わった内外装の仕上がりと、BEV専用プラットフォーム「CMF-EV」や一体型電動パワートレインの採用で刷新された走りを、BEVオーナーの目線を交えて報告する。
-
ホンダN-ONE RS(FF/6MT)【試乗記】 2026.2.10 多くのカーマニアが軽自動車で唯一の“ホットハッチ”と支持する「ホンダN-ONE RS」。デビューから5年目に登場した一部改良モデルでは、いかなる改良・改善がおこなわれたのか。開発陣がこだわったというアップデートメニューと、進化・熟成した走りをリポートする。
-
日産キャラバン グランドプレミアムGX MYROOM(FR/7AT)【試乗記】 2026.2.9 「日産キャラバン」がマイナーチェンジでアダプティブクルーズコントロールを搭載。こうした先進運転支援システムとは無縁だった商用ワンボックスへの採用だけに、これは事件だ。キャンパー仕様の「MYROOM」でその性能をチェックした。
-
無限N-ONE e:/シビック タイプR Gr.B/シビック タイプR Gr.A/プレリュード【試乗記】 2026.2.7 モータースポーツのフィールドで培った技術やノウハウを、カスタマイズパーツに注ぎ込むM-TEC。無限ブランドで知られる同社が手がけた最新のコンプリートカーやカスタマイズカーのステアリングを握り、磨き込まれた刺激的でスポーティーな走りを味わった。
-
NEW
レクサスRZ350e“バージョンL”(FWD)【試乗記】
2026.2.16試乗記「レクサスRZ」のエントリーグレードがマイナーチェンジで「RZ300e」から「RZ350e」へと進化。パワーも一充電走行距離もググっとアップし、電気自動車としてのユーザビリティーが大幅に強化されている。300km余りのドライブで仕上がりをチェックした。 -
NEW
イタリアの跳ね馬はiPhoneになる!? フェラーリはなぜ初BEVのデザインを“社外の組織”に任せたか?
2026.2.16デイリーコラムフェラーリが初の電動モデル「ルーチェ」の内装を公開した。手がけたのは、これまで同社と縁のなかったクリエイティブカンパニー。この意外な選択の真意とは? 主要メンバーにコンタクトした西川 淳がリポートする。 -
NEW
第329回:没落貴族再建計画
2026.2.16カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。JAIA(日本自動車輸入組合)が主催する報道関係者向け試乗会に参加し、最新の「マセラティ・グレカーレ」に試乗した。大貴族号こと18年落ち「クアトロポルテ」のオーナーとして、気になるマセラティの今を報告する。 -
トヨタ・カローラ クロス“GRスポーツ”(後編)
2026.2.15思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「トヨタ・カローラ クロス“GRスポーツ”」に試乗。ハイブリッドシステムを1.8リッターから2リッターに積み替え、シャシーも専用に鍛え上げたスポーティーモデルだ。後編ではハンドリングなどの印象を聞く。 -
トヨタbZ4X Z(FWD)【試乗記】
2026.2.14試乗記トヨタの電気自動車「bZ4X」が大きく進化した。デザインのブラッシュアップと装備の拡充に加えて、電池とモーターの刷新によって航続可能距離が大幅に伸長。それでいながら価格は下がっているのだから見逃せない。上位グレード「Z」のFWDモデルを試す。 -
核はやはり「技術による先進」 アウディのCEOがF1世界選手権に挑戦する意義を語る
2026.2.13デイリーコラムいよいよF1世界選手権に参戦するアウディ。そのローンチイベントで、アウディCEO兼アウディモータースポーツ会長のゲルノート・デルナー氏と、F1プロジェクトを統括するマッティア・ビノット氏を直撃。今、世界最高峰のレースに挑む理由と、内に秘めた野望を聞いた。






























