日産フェアレディZ バージョンST(FR/6MT)/ロードスター バージョンST(FR/5AT)【試乗記】
硬くって、柔らかい 2005.09.29 試乗記 日産フェアレディZ バージョンST(FR/6MT)/ロードスター バージョンST(FR/5AT) ……434万1750円/498万9600円 デビューから3年を経て、「日産フェアレディZ」がマイナーチェンジを受けた。MTモデルのエンジンがレブリミットを400回転引き上げられ、最高出力を294psまで向上させたことが話題のモデルである。 拡大 |
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「イヤーモデル」か「マイチェン」か
「フェアレディZ」は、毎年少しずつ細部の変更を受けている。いわゆる「イヤーモデル」という形をとっているわけで、今回発表されたのもCPS(チーフ・プロダクト・スペシャリスト)の湯川伸次郎さんからすれば、「06モデル」という位置づけになるのだ。しかし、3年という区切りで比較的大きな改変が行われたこともあり、販売促進の意味からも「マイナーチェンジ」という呼称がよかろうという判断になったらしい。
今回のチェンジで目玉となるのは、従来の280psから294psまで出力を向上させたエンジンだ。レブリミットが400回転引き上げられて7000回転まで回せるようになっているのだが、これはこの1月に限定で販売された「35th Anniversary」でも実現していた。ただその時は国内モデルは280psのままだったので、ファンからすれば待望のエンジン強化といえる。
ほんの二月ほど前まで、リポーターはNAVIの長期リポートカーとしてフェアレディZに毎日乗っていた。2002年の11月の導入だから、まったくの初期モデルである。発売当初のZはいくつかの弱点を抱えていた。ひとつはマニュアルトランスミッションで、ギアの入りが少々渋くて軽快なシフトを阻害する。ATモデルを選ぶことでこの問題は回避したのだが、もうひとつサスペンションに関しての不満には解決策がなかった。スポーツカーとしてコーナリングの性能は高いものの、日常の乗り心地の悪さにはいささか閉口したのだ。しかし、何度かの改良でトランスミッションもサスペンションも見違えるようなものになっている。新しいモデルに試乗する度に、自分の担当するZと比べての出来の良さに嫉妬を覚えたものだ。
変わったのは外観よりインテリア
これまでエクステリアの変更はなく、今回も基本デザインは変わらないものの、ヘッドランプとリアコンビネーションランプに手が加えられた。ヘッドランプはハイローともにキセノンとなり、リアは42個のLEDランプで構成される。目つきが変わっただけで、表情は一変する。より精悍さを増し、都会的な印象をもたらすようになった。
外観以上に変わったのはインテリアだ。まずモニターがむき出しになったことにすぐに気づく。初期モデルでは手動の安っぽいプラスチックのフタがついていて、うっかりすると壊しそうになったのを思い出した。そして、インストゥルメントパネルまわりに手を触れると、なんだか感触が柔らかい。しっとりしている。質感の向上は目覚ましいものがある。まあ、それは初期モデルの内装がお粗末であったということの裏返しでもあるのだが。ともかく、クッションのいいニーパッドが備えられたり本アルミの採用部位が増やされたりして、運転席での満足感がアップしたことはまことに喜ばしい。
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コーナーで気持ちいい
35th Anniversaryモデルは筑波サーキットで試乗したので、回転数アップの恩恵ははっきりと実感することができた。今回は公道での試乗であるため、どれほどメリットを感じられるか不安でもあったのだが、案に反して効果は如実に現れていた。時間にすればほんのコンマ数秒でしかないのだろうけれど、アクセルを長く踏み続けて息の長い加速を味わうというのは、スポーツカーにとって重要なアトラクションなのだ。
14psのアップというのはよほど注意深い人でないと感じるのは難しいだろうけれど、もっと明確に知覚できる改善点がある。コーナーでステアリングを切り込んだときに、ノーズがスッと内を向く様子が実に気持ちがいいのだ。初期型と比べると、明らかにダイレクトな反応なのである。サスペンションだけでなくステアリング機構も見直していて、かなり大きな変更が行われている。乗り心地に関しては、一時期よりも少し硬めになったように思ったが、初期型のようにバタつくわけではない。
ロードスターはAT仕様のモデルに乗った。ボディカラーは240ZGに採用された「グランプリマルーン」をアレンジしたもので、オールドファンにはこれもアピールする要素なのだろう。ATモデルではエンジンの出力に変更はなく、これまで通りの280psである。ATとの組み合わせを考えると、トルクを重視するべきだとの判断だ。もちろん速さに不足などあるはずもなく、快晴の空の下で屋根をおろしたZに乗る気持ちよさは特筆すべきものがある。ハイパワーもいいけれど、それはZの看板としておいて、実際に乗るのはオープンエアを楽に満喫できるATモデルというのがいい選択なのではないかと思う。
愚痴は言いたくないけれど、初期のZと比べると今のZは本当にいろいろなところが良くなっているのだ。だから、今回のチェンジはとても成功しているのだと言える。マイナーチェンジというより、イヤーモデルとして各部の向上が誠実に図られていることがうれしい。ということは、来年はもっと良くなっているはずだ、という予想が成り立ってしまうのだけれど。
(文=NAVI鈴木真人/写真=郡大二郎/2005年9月)

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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