ポルシェ911カレラ4/カレラ4S【海外試乗記(前編)】
ある意味“理想的”(前編) 2005.06.28 試乗記 ポルシェ911カレラ4/カレラ4S RRレイアウトを40年以上採り続け、それを美点とプレミアムに昇華した「ポルシェ911」。ある意味“異端児”の4WD版「カレラ4」シリーズだが、最新997型カレラ4を、自動車ジャーナリストの河村康彦は……。RRを引き立てる4WD化
リアのオーバーハング上に低くマウントされたフラット6エンジン。それによりリアヘビーの重量と後輪駆動のバランスが生み出す圧倒的なトラクションの高さとブレーキング時の優れた制動力配分。今や世界でも“孤高の存在”と言える「RRレイアウトの美点をさらに強調するための4WD化」――ポルシェは911シリーズにおける4WDモデル「カレラ4」「カレラ4S」の存在意義をそのように説明する。
ハイパワーエンジン搭載によるトラクション能力の不足を補う目的で、本来は“被駆動輪”である2輪にも駆動メカを加えるというのは――そもそも駆動輪と操舵輪を兼用し、特に加速時には荷重が“被駆動輪”側へと移動してしまう――前輪駆動モデルの場合にはありがちの手法だ。が、前述のように基本的に非常に高いトラクション能力を備えるRRレイアウト車となると「それだけ」のため方策とは考え難い。911の4WD化の背景には「それ以上」の目的が秘められていると考える方がむしろ自然だろう。
911には、リアヘビーという重量バランスゆえの操縦安定性のナーバスさがつきまとっていた。具体的には相対的に前輪荷重が不足気味となるため、タイトターンを中心としたアンダーステアや、逆に高速高横G時のリア側イナーシャによるリバースステアの発生などである。先に挙げた「RRレイアウトの美点」というフレーズを「RRレイアウトの弱点を補完するため」と読み換えさせるのが、911の4WD化であると思う。
50%以上がヨンク
というわけで、そろそろ日本の街でも見掛ける機会の増えてきた997型に、予想通りに加えられた新しいカレラ4とカレラ4S。“カレラ4”は964型からラインナップされ、すでに認知度も高いが、RRレイアウトが金看板たる911だけに、「4WDの911」と耳にしただけで、まだ“異端児”扱いするピューリタンがいるかもしれない。しかし、996型での実績では「ターボ」を加えたシリーズ全体での4WD比率は「今や生産台数の半数を超える」という事実に、認識を新たにする人も少なくないはずだ。
997型カレラ4シリーズひとつのトピックは、カレラ4も4Sも同じ専用ワイドボディを採用した点にある。新しいカレラ4Sが標準装着する305/30サイズ、後輪駆動モデルよりもファットな19インチシューズを収めるべくリアフェンダーまわりがリ・デザインされ、後輪駆動モデルに較べて左右に22mmずつボリュームアップした。1852mmという全幅は「これ以上成長しないで!」と叫びたくなる数値ではあるけれど、そのぶんより迫力を増しさらにグラマラスなルックスを手に入れたこともまた確かだ。
996型とのメカニカルな違いは、後輪外径が増し前後輪のタイヤ周長が異なることをアジャストするため、フロントアクスルには従来型とは異なるギアレシオのファイナルギアを採用したこと。4WDシステムの要は従来通りビスカスカプリングである。複数の板とオイルの粘性を利用して、入出力軸間の回転数差によって自動的にトルク・ディストリビューションを行う……というプロセスについては、ここで詳細を述べるまでもない。(後編に続く)
(文=河村康彦/写真=ポルシェ・ジャパン/2006年6月)
・ポルシェ911カレラ4/カレラ4S(後編)
http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/000016870.html

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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