マツダ・プレマシー23S(4AT)/ 20S(4AT)/ 20C(4AT) 【試乗速報】
Zoom-Zoom!なミニバンは「+One」? 2005.02.23 試乗記 マツダ・プレマシー23S(4AT)/20S(4AT)/20C(4AT) ……299万2500円/279万3000円 /239万4000円 マツダの新型「プレマシー」は、引き算の発想でミニバンのユーティリティを向上させようという野心作である。「7」から「6」へと座席を一つ減らすことで、自由な空間を得た。『NAVI』鈴木真人が速報する。
![]() |
![]() |
「センターオープンスペース」から発想
Zoom-Zoom-Zoom! 走る歓び
Zoom-Zoom-Zoom! 道は遥かに
Zoom-Zoom-Zoom! 退屈なんて
Zoom-Zoom-Zoom! 置き去りにして
マツダといえば「Zoom-Zoom」(子供の時に感じた動くことへの感動を意味する)であるが、ついに日本語歌詞がついてしまったのには驚いた。もう後戻りはできないのである。だから、ミニバンの「プレマシー」だって「Zoom-Zoom」が注入されているのだ。
それは具体的には何のこと? と問うと、「楽しいクルマ」という答えが返ってきた……もうちょっと気の利いた言い方がないもんだろうか。
ともあれ、新型プレマシーのいちばんのウリは、「6+One」と呼ばれる室内空間のパッケージングである。ミニバンは7人乗りが常識であるところをあえて6人乗りを基本とし、真ん中にウォークスルーの空間を置いたのだ。1999年にデビューした初代プレマシーが「5ナンバーサイズ」を最優先に開発されたのに対し、新型はこの「センターオープンスペース」から発想されている。だから、必然的に幅は広がって3ナンバーサイズとなった。
「カラクリ」でスペース拡大
7人乗りとはいっても、ミニバンの2列目センターのシートは大人が快適に過ごすには無理があった。そこでニュープレマシーは、2列目は通常2名乗車と割り切ってしまう。それによって1列目と2列目にはセンターに人が通り抜けることのできる空間が確保され、運転席から3列目まで車外に出ることなく行き来することができるというわけだ。1列目のシート幅が510mmなのに対し、2列目3列目でも500mmという数字である。
それでもどうしても7人乗りたい、という時のために用意されたのが、「+One」たる補助席である。なにやら小学校の遠足のバスを思い出させる言葉だが、これは2列目左側シートの下に隠されている。座面を跳ね上げると「カラクリ7thシート」を取り出すことができ、センターアームレストを背もたれとして使用することで7人目の乗員スペースが誕生するのだ。
右側シートの下には「カラクリ収納ボックス」があって、こちらをセットすれば物入れスペースが大幅に拡大する。無理して7人乗りであることをやめたので、使い勝手のいい空間が出現したわけだ。物を付加するのではなく、発想を逆転させるだけで自由度を高めたのだから、これは拍手ものである。
![]() |
![]() |
![]() |
運転席が特上席
初代に続いて開発担当主査を務めた福永賢一さんによると、2列目シートで母親が赤ちゃんのおむつを替えてゴミを処理し、そのまま運転席に戻ることもできるんだそうだ。わざわざ宣伝で取り上げたりはしないが、こういう実用性がミニバンのようなクルマでは大きな意味を持つのだろう。ちなみに、そんなカユいところに手の届くような配慮ができたのは、出産から間もない娘さんのアドバイスによるのだとか。思わぬところで親孝行をしたものである。
エンジンのバリエーションは2リッターと2.3リッターの2種類で、どちらも4段ATが組み合わされる。パワーでいえば20psの差なのだが、高速に乗って加速した時にはかなりの違いを感じた。2リッターでは結構もどかしいし、エンジン音も盛大だ。7人乗車ではもっとツラくなるだろう。
ただ、最近のミニバンではいつも感心させられることだが、後ろを振り向かないかぎりはセダンを運転していると錯覚してしまう身のこなしである。少なくとも、運転するのが苦痛というようなことは一切ないと言っていい。
特筆すべきなのは乗り心地だ。西湘バイパスのやたらに継ぎ目の多い路面を走っても、ドライバーに不快感を覚えさせることはない。実にしなやかに突き上げをいなしていく。気をよくして2列目を試してみたら、いきなりガツンと腰にショックがくるのには閉口した。明らかに運転席の乗り心地がひとクラス上なのだ。ミニバンがこれでいいんだろうかと思ったが、これでいいのだ。さすが「Zoom-Zoom」のマツダ、ミニバンといえどもドライバーズカーなのである。
(文=NAVI鈴木真人/写真=荒川正幸/2005年2月)

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
-
メルセデス・ベンツGLE450d 4MATICスポーツ コア(ISG)(4WD/9AT)【試乗記】 2025.10.1 「メルセデス・ベンツGLE」の3リッターディーゼルモデルに、仕様を吟味して価格を抑えた新グレード「GLE450d 4MATICスポーツ コア」が登場。お値段1379万円の“お値打ち仕様”に納得感はあるか? 実車に触れ、他のグレードと比較して考えた。
-
MINIカントリーマンD(FF/7AT)【試乗記】 2025.9.30 大きなボディーと伝統の名称復活に違和感を覚えつつも、モダンで機能的なファミリーカーとしてみればその実力は申し分ない「MINIカントリーマン」。ラインナップでひときわ注目されるディーゼルエンジン搭載モデルに試乗し、人気の秘密を探った。
-
BMW 220dグランクーペMスポーツ(FF/7AT)【試乗記】 2025.9.29 「BMW 2シリーズ グランクーペ」がフルモデルチェンジ。新型を端的に表現するならば「正常進化」がふさわしい。絶妙なボディーサイズはそのままに、最新の装備類によって機能面では大幅なステップアップを果たしている。2リッターディーゼルモデルを試す。
-
ビモータKB4RC(6MT)【レビュー】 2025.9.27 イタリアに居を構えるハンドメイドのバイクメーカー、ビモータ。彼らの手になるネイキッドスポーツが「KB4RC」だ。ミドル級の軽量コンパクトな車体に、リッタークラスのエンジンを積んだ一台は、刺激的な走りと独創の美を併せ持つマシンに仕上がっていた。
-
アウディRS e-tron GTパフォーマンス(4WD)【試乗記】 2025.9.26 大幅な改良を受けた「アウディe-tron GT」のなかでも、とくに高い性能を誇る「RS e-tron GTパフォーマンス」に試乗。アウディとポルシェの合作であるハイパフォーマンスな電気自動車は、さらにアグレッシブに、かつ洗練されたモデルに進化していた。
-
NEW
BMW R12 G/S GSスポーツ(6MT)【試乗記】
2025.10.4試乗記ビッグオフのパイオニアであるBMWが世に問うた、フラットツインの新型オフローダー「R12 G/S」。ファンを泣かせるレトロデザインで話題を集める一台だが、いざ走らせれば、オンロードで爽快で、オフロードでは最高に楽しいマシンに仕上がっていた。 -
第848回:全国を巡回中のピンクの「ジープ・ラングラー」 茨城県つくば市でその姿を見た
2025.10.3エディターから一言頭上にアヒルを載せたピンクの「ジープ・ラングラー」が全国を巡る「ピンクラングラーキャラバン 見て、走って、体感しよう!」が2025年12月24日まで開催されている。茨城県つくば市のディーラーにやってきたときの模様をリポートする。 -
ブリヂストンの交通安全啓発イベント「ファミリー交通安全パーク」の会場から
2025.10.3画像・写真ブリヂストンが2025年9月27日、千葉県内のショッピングモールで、交通安全を啓発するイベント「ファミリー交通安全パーク」を開催した。多様な催しでオープン直後からにぎわいをみせた、同イベントの様子を写真で紹介する。 -
「eビターラ」の発表会で技術統括を直撃! スズキが考えるSDVの機能と未来
2025.10.3デイリーコラムスズキ初の量産電気自動車で、SDVの第1号でもある「eビターラ」がいよいよ登場。彼らは、アフォーダブルで「ちょうどいい」ことを是とする「SDVライト」で、どんな機能を実現しようとしているのか? 発表会の会場で、加藤勝弘技術統括に話を聞いた。 -
第847回:走りにも妥協なし ミシュランのオールシーズンタイヤ「クロスクライメート3」を試す
2025.10.3エディターから一言2025年9月に登場したミシュランのオールシーズンタイヤ「クロスクライメート3」と「クロスクライメート3スポーツ」。本格的なウインターシーズンを前に、ウエット路面や雪道での走行性能を引き上げたという全天候型タイヤの実力をクローズドコースで試した。 -
思考するドライバー 山野哲也の“目”――スバル・クロストレック プレミアムS:HEV EX編
2025.10.2webCG Movies山野哲也が今回試乗したのは「スバル・クロストレック プレミアムS:HEV EX」。ブランド初となるフルハイブリッド搭載モデルの走りを、スバルをよく知るレーシングドライバーはどう評価するのか?