ダイハツ・タントRS(FF/4AT)【ブリーフテスト】
ダイハツ・タントRS(FF/4AT) 2004.02.03 試乗記 ……135.0万円 総合評価……★★★★ タントのファニーなエクステリアに好感を抱いた自動車ジャーナリストの森口将之。ターボエンジンを積む「RS」に乗って……。
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旧型ムーヴの正常進化
このクルマが初めて姿を見せた、第37回東京モーターショーでは、忙しさにかまけてチェックすることができなかった。「ダイハツ・タント」と初対面したのは、今回の取材のすこし前に行われた、プレス向け試乗会のことである。“マジカル”といってもいいキャビンの広さには度肝を抜かれたが、それ以上に印象に残ったのがデザインだった。
僕は現行型の「ムーヴ」が出たときに、ガッカリしたひとりである。イタルデザインがフォルムを描いた旧型は、すばらしい造形だった。それだけに、「保守的」という言葉をカタチにしたような現行型には、さびしさを感じた。インテリアも、上級車のそれをそのまま縮小したようなデザインで、21世紀のスモールカーはこうあるべきだという主張はあまり感じられなかった。それで売れたのだから、自分も大きなことはいえないが……。
その点、タントの形には提案がある。ショルダー部分にアクセントを入れるなどして、スクエアなボディに独自の魅力を与えようという気持ちが感じられる。
インテリアはスモールカーらしい「さわやかさ」「軽やかさ」にあふれている。ブランニューというより、僕には旧型ムーヴの正常進化型に感じられた。もちろんこれは、ほめ言葉だ。
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【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
ダイハツの軽乗用車の主力「ムーヴ」よりもさらに室内空間を広くとった「スーパースペースワゴン」として登場。まず市販予定車として、2003年10月25日から開かれた「第37回東京モーターショー」に姿を見せたあと、11月27日に正式発表された。
ボディはムーヴより95mm高い1725mmの全高と、50mm長い2440mmのホイールベースを持つ4ドアワゴン。ノーズを短く、キャビンをスクエアに仕立てることで、室内長は“2リッターセダン並”を謳う2000mmをマークする。エンジンは、0.66リッター直列3気筒DOHC12バルブで、自然吸気とターボを用意。トランスミッションはオートマチックのみ。駆動方式は前輪駆動と4輪駆動だ。
(グレード概要)
グレードは、自然吸気エンジンが「L」「X」「Xリミテッド」の3種類、ターボが「R」と「RS」の2種類。前輪駆動/4輪駆動を問わず、この5グレードが用意される。XリミテッドとRSは、XあるいはRをベースに、エアロパーツなどを装着する、という成り立ちだ。ATは自然吸気エンジンの4WDが3段となるほかは、すべて4段式。試乗車は、RSの2WDだった。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
いままでのダイハツの軽乗用車のインパネは、小型車のそれをそのままスケールダウンしたようなデザインが多かった。「高級感を求めるユーザーに合わせた」とダイハツは説明していたが、個人的にはかえって貧しく感じられた。
そんな声が届いたわけじゃないだろうが、タントはスモールカーらしい、シンプルでカジュアルタッチのインパネを備える。明るいベージュ基調のカラーコーディネイトもさわやか。センターメーターは大きくて見やすく、スイッチ類はセンターに集められていて使いやすい。ムーヴ譲りの収納スペースはどれも大きくて、こちらも便利そう。センターパネルの出っ張りがほとんどないので、左右のウォークスルーがしやすいのもメリットだ。
(前席)……★★★★
クッション部分がベンチ、シートバックはセパレートという、最近の軽自動車によく見られる形状。クッションは大きく、厚み感もあって、なかなか好印象だった。シートバックは左右がゆるやかに張り出しているので、カーブでのサポート性は予想以上である。
着座位置はそれほど高くないので、頭上空間は圧倒的に広い。立ち気味のウインドスクリーンも、顔からかなり遠くにある。乗用車というよりバス風の空間だ。助手席に乗り込んできた人に「両替はできないですよ」といいたくなってしまう(?)
(後席)……★★★★
左右別々にスライドとリクライニング、折り畳みができるが、なんといっても驚きなのは、スライドをいちばん後ろにしたときのスペースだ。足元の空間は、クッションがもうひとつ入りそうなほど広い。シートバックがドアの開口部よりさらに後ろにあるのは、「ロールスロイス・ファントム」を思わせる。おかげで座った状態では、ドアオープナーに手が届きにくいという、うれしい悩みも生じた。残念なのは、クッションの傾きがほとんどなく、平板で、厚み感があまりないこと。シートバックもフラットで、サポート性能は期待しにくい。前席と同じシートがついていれば、文句ナシなのだが。
(荷室)……★★★★★
後席同様、こちらも驚き。後席をいちばん後ろにセットしても、軽自動車としては不満のないスペースが得られる。後席スライドを一番前にすれば、奥行きはリッターカーレベルだ。
折り畳み方法は、シートバックを前に倒したあと、全体を後席レッグスペースに落とし込むようにして収納するので、完全にフラットになる。サスペンションの出っ張りも少なめ。広いだけでなく、使いやすそうな空間だ。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
軽自動車のターボエンジンというと、途中からロケットが点火したような、ピーキーな性格を想像する人がいるかもしれない。ダイハツのターボユニットもかつてはそうだったが、現行型のムーヴ以降は、64psのピークパワーをキープしながら、だいぶ扱いやすくなった。それでも、アクセルを踏んでからターボが効くまでの時間差を感じるシーンがないわけではない。ライバルメーカーが擁する低圧ターボ(Mターボ)が、タントにはもっとも似合うように思えた……というのは、ちょっと皮肉にすぎるだろうか。ターボでは電子制御式となる、4速ATのマナーは不満なし。ステアリングの左から生えたシフトレバーも扱いやすかった。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
自然吸気モデルの乗り心地は、いまどきまれに見るほどソフトで、自分がかつて所有していた「シトロエン2CV」を思わせるほどだった。ターボエンジンを積むRSは、そこまで柔らかくはないが、現在の軽自動車ではかなりマイルドなのは間違いない。ただし、今回、箱根のワインディングロードをそれなりのペースで走ったら、足まわりの剛性不足のためか、ゴツゴツした乗り心地に感じられた。外観から受ける印象どおり、おとなしく走るのが似合うクルマだ。
ハンドリングは大きめのロールのために、それほど攻め込もうという気にさせないが、クルマの性格を考えると、これは欠点ではないだろう。タイヤサイズはおとなしいが、前輪がターボパワーをうまく路面に伝えてくれる。ただし、コーナリング時にアクセルを急に閉じると、リアが滑ることもあった。
(写真=市健治)
【テストデータ】
報告者:森口将之
テスト日:2003年12月11日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2003年型
テスト車の走行距離:1668km
タイヤ:(前)155/65R14 75S(後)同じ(いずれもファルケン シンセラ SN-816)
オプション装備:--
形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3):高速道路(4):山岳路(3)
テスト距離:460km
使用燃料:--
参考燃費:--

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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