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「日産ルークス」「三菱デリカミニ」の新型登場で軽スーパーハイトワゴン戦線に動きはあるか

2025.08.27 デイリーコラム 工藤 貴宏
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今や60万台市場の軽スーパーハイトワゴン

国内マーケットにはいくつか、ド競合同士がバチバチと……どころか炎上上等の一触即発レベルで鎬(しのぎ)を削るカテゴリーがある。例えばMクラスミニバン。トヨタの「ノア/ヴォクシー」に「日産セレナ」、そして「ホンダ・ステップワゴン」が三つどもえとなり、仁義なき戦いを繰り広げる様子から、一部では「ミニバン界の三国志」なんて呼ばれているとかいないとか。

それと同じくらい、いやマーケットの広さと競合車種の多さではそれ以上の激戦区といえるジャンルがある。軽スーパーハイトワゴンだ。

なにせモデルが多ければ、販売マーケットもけた違い。日本一売れている乗用車である「ホンダN-BOX」を筆頭に「スズキ・スペーシア」、クラスを切り開いた先駆者の「ダイハツ・タント」、それに「日産ルークス」や三菱の「デリカミニ」&「eKスペース」だってある。

Mクラスミニバンの2024年通年での市場規模は大体10万台だけど、軽スーパーハイトワゴンはそれどころじゃない。なんと約60万台。すごすぎる!

軽スーパーハイトワゴンは背が高いボディーにスライドドアを組み合わせているのが特徴で、軽自動車枠だけに全長と全幅はどれも同じ。背の高さも大体同じ。ついでにいうと居住性も大体同じ。つまり、性能や実用性というよりは、好みやイメージなどで選ばれている側面が強いといっていいだろう。

2024年まで10年連続で軽の新車販売台数1位に君臨し続けている「ホンダN-BOX」。今や不動の人気モデルだ。
2024年まで10年連続で軽の新車販売台数1位に君臨し続けている「ホンダN-BOX」。今や不動の人気モデルだ。拡大
軽スーパーハイトワゴン市場を創出した「ダイハツ・タント」。これは2022年に追加設定されたアウトドアテイストの「タント ファンクロス」。
軽スーパーハイトワゴン市場を創出した「ダイハツ・タント」。これは2022年に追加設定されたアウトドアテイストの「タント ファンクロス」。拡大
現行型「スズキ・スペーシア」は2023年11月に登場。標準&「カスタム」に加えて、アウトドアテイストの「スペーシア ギア」、商用の「スペーシア ベース」など充実のラインナップを誇る。
現行型「スズキ・スペーシア」は2023年11月に登場。標準&「カスタム」に加えて、アウトドアテイストの「スペーシア ギア」、商用の「スペーシア ベース」など充実のラインナップを誇る。拡大
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日産&三菱陣営が新型を投入

そんな激戦区の3台がもうすぐ新型に切り替わる。三菱のデリカミニ&eKスペース(参照)と日産ルークス(参照)だ。そのうち注目の2台、デリカミニとルークスが新型に変わることで、マーケットにどう影響を与えるか占ってみようというのが今回のテーマである。

クルマ好きの読者なら百も承知のこととは思うが、念のためにその2台についてあらためて説明しておくと、どちらも(eKスペースまで含めて)基本設計は共通で兄弟みたいな関係だ。デリカミニの前身は「eKクロス スペース」だったが、マイナーチェンジで顔つきを「デリカ」似に大胆整形(といっても最新の「デリカD:5」ではなくビッグマイナーチェンジ前の顔つきなのがポイント!)するとともに、名前をチェンジ。すると販売台数が急上昇してヒットモデルとなってしまったのだ。商品企画の大勝利であるし、筆者もこのコンセプトとデザインには激しく同意する。

いっぽうルークスは、今回のモデルでイメージを刷新。日産のファミリーフェイスである「Vモーショングリル」をやめて独自のデザインテーマとしたのだが……まさかそうくるとはと感じたのは筆者だけではあるまい。誰がどう見たってかつての人気車「キューブ」のイメージなのだから。

グリルも、ヘッドライトも、ホイールもそしてメーターだって四角。これはもう「キューブミニ」を名乗っていいと思う。日産が許さなくても筆者が許す(よく考えたらそんな権限持っていないけど)。当然、筆者の個人的な好みでいえば「これけっこうよくない?」だ。

2025年秋に発売される新型「三菱デリカミニ」。初代とそっくりながら、より大きくなったヘッドランプや抑揚のきいたボンネットを装備するなど、より洗練された印象に変わった。
2025年秋に発売される新型「三菱デリカミニ」。初代とそっくりながら、より大きくなったヘッドランプや抑揚のきいたボンネットを装備するなど、より洗練された印象に変わった。拡大
新型「日産ルークス」も2025年秋に発売予定。日産車に共通のV型グリルをやめ、2代目「キューブ」のようなフロントデザインを採用している。
新型「日産ルークス」も2025年秋に発売予定。日産車に共通のV型グリルをやめ、2代目「キューブ」のようなフロントデザインを採用している。拡大

ブサかわデザインをブラッシュアップ

で、結論からいえばデリカミニに関しては「市場をかき乱す」とまではいかないだろう。すでに従来モデルが予想外のヒットを決めており、見どころはその状況をキープできるかどうかである。聡明(そうめい)な読者諸兄なら、こういうキャラクターの強いモデルは2世代続けてヒットさせるのがなかなか難しいことをご存じだろう。新型はそこが試されることになるのだ。

もちろん、三菱だってそんなことは百も承知だからそれなりの対策をとっている。例えばデザイン。実は新型のデザイン(先代が発売されるころには並行して新型の開発も進んでいた)はもっと武骨な雰囲気に決まりかけていたそうだが、先代のヒットを受けて「ブサかわ(ブサイクでかわいい)顔」を世の中が求めていると判断。急きょ、先代のイメージを強く受け次ぐデザインへと変更したという。

また従来モデルに備わっていたマイルドハイブリッドと電動スライドドアのハンズフリー機能、パドルシフトなどは新型には搭載されないが、これは価格上昇を抑えるため。

そのおかげで同名グレード同士で比べると新型の価格アップは10万円にも満たない幅で収まっているとのこと。このクラスを選ぶ顧客は価格にシビアであり、人気を継承するべく涙ぐましい努力をしているというわけである(ここだけの話、そもそもデリカミニはほかより少し高めの価格設定だったけれど……)。

「デリカミニ」「eKスペース」「ルークス」とも開発は日産主導だが、デリカミニの4WDモデルは「デリカD:5」のスタッフが三菱のコースで開発したとされている。
「デリカミニ」「eKスペース」「ルークス」とも開発は日産主導だが、デリカミニの4WDモデルは「デリカD:5」のスタッフが三菱のコースで開発したとされている。拡大
新型「デリカミニ」のインテリア。Googleのインフォテインメントシステムなどの高価な装備を採用しているが、その代償(?)としてパドルシフトやマイルドハイブリッドなどが省かれている。
新型「デリカミニ」のインテリア。Googleのインフォテインメントシステムなどの高価な装備を採用しているが、その代償(?)としてパドルシフトやマイルドハイブリッドなどが省かれている。拡大
これが新型「eKスペース」。ちょっと「デリカミニ」の陰に隠れがちだが、三菱党でなおかつ「あまり派手なのはちょっと……」という層からの支持を集めそうだ。
これが新型「eKスペース」。ちょっと「デリカミニ」の陰に隠れがちだが、三菱党でなおかつ「あまり派手なのはちょっと……」という層からの支持を集めそうだ。拡大

自然体かつ個性的な新型ルークス

いっぽうルークスは、もしかすると台風の目になる可能性がある。なぜなら先代は本来ならばクラストップを争うべきポジションなのに、販売実績はN-BOXやスペーシアに比べるとパッとしなかった。そのぶん、大胆にイメチェンした新型はキャラ変した雰囲気が受け入れられれば、大幅に販売台数を伸ばせるポテンシャルを持っているからだ。キューブのような自然体でありながら個性を狙ったオシャレな軽自動車って、「これよくない?」と思うのは筆者だけではあるまい。

というわけで、デリカミニは現状キープでも大成功。もしかするとキューブミニ……じゃなくてルークスは「大幅躍進の可能性あり」というのが筆者の予想。日産に対するイメージ的な逆風だけが、唯一の懸念事項である。

果たして筆者の読みは当たるのか? 答えは半年後くらいに分かるだろう。まあ、そのころは筆者の予想なんて誰も覚えていないだろうけれど。

(文=工藤貴宏/写真=本田技研工業、ダイハツ工業、スズキ、三菱自動車、日産自動車/編集=藤沢 勝)

新型「ルークス」は「かどまる四角」のデザインコンセプトを採用。ヘッドランプなどを角を丸めた四角形としている。
新型「ルークス」は「かどまる四角」のデザインコンセプトを採用。ヘッドランプなどを角を丸めた四角形としている。拡大
内装の基本デザインは三菱も日産も変わらないが、日産のほうが明るさを重視したさわやかな仕上がりだ。
内装の基本デザインは三菱も日産も変わらないが、日産のほうが明るさを重視したさわやかな仕上がりだ。拡大
工藤 貴宏

工藤 貴宏

物心ついた頃からクルマ好きとなり、小学生の頃には自動車雑誌を読み始め、大学在学中に自動車雑誌編集部でアルバイトを開始。その後、バイト先の編集部に就職したのち編集プロダクションを経て、気が付けばフリーランスの自動車ライターに。別の言い方をすればプロのクルマ好きってとこでしょうか。現在の所有車両は「スズキ・ソリオ」「マツダCX-60」、そして「ホンダS660」。実用車からスポーツカーまで幅広く大好きです。

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