フォルクスワーゲン・ゴルフ 2.0FSI(6MT)【海外試乗記】
進化する小型車のスタンダード 2003.10.22 試乗記 フォルクスワーゲン・ゴルフ 2.0FSI(6MT) 2003年のフランクフルトショーで披露された新型「ゴルフ」。ボディサイズの拡大や、質感のアップで、“スタンダード”というよりむしろ“プレミアム”を目指す。5代目ゴルフに、生方聡がドイツ・ヴォルフスブルクで試乗した。パサートより立派!?
小型車のスタンダードとして誰もが認める存在である「ゴルフ」が、2003年8月にフルモデルチェンジし5代目に進化した。そのプレス試乗会が、フォルクスワーゲンの本拠地であるヴォルフスブルクで開催された。私も参加し、その仕上がりをチェックした。
フルモデルチェンジの“お約束”どおり、新型ゴルフもまたボディのサイズアップが図られた。ゴルフIVに比べて、全長、全幅、全高はそれぞれ55mm、24mm、41mm増しの4204×1759×1485mm。全幅と全高にかぎればパサートセダンよりも大きくなった! 日本で“小型車”と言うにはかなり抵抗があるサイズである。
しかし、前後を絞り込んだデザインで、むしろ旧型よりも小さく見えるから不思議である。ゴルフのアイデンティティといえる太いCピラーは健在。一方、これまでドアフレームがルーフまで伸びるデザインだったが、新型ではルーフまで伸びることなく、しかも、フレームをブラックアウトすることにより、サイドウインドーとの一体感を図った。そしてリアビューは、丸形ツインのテールライトが最新のVWデザインを表現している。どこから見てもゴルフだが、デザインは細部にいたるまで完全に新しい。
新しいサスペンションと新しいエンジン
フルモデルチェンジの話題といえば、リアのマルチリンクサスペンションだろう。これまで長らくトーションビームアクスル式を採用してきた歴代ゴルフ。しかし、乗り心地と操縦安定性のグレードアップにはマルチリンクが有利との結論に達し、4リンク(トレーリングアーム、アッパーアーム、ロワアーム×2)サスペンションを新たに開発した。ホイールにかかる力を前後、横の2方向に分けて管理できるため、乗り心地と操縦安定性の両立が図れるという。
そしてもう一つは、直噴ガソリンエンジン「FSI」。負荷が低く、回転数が低い領域で、希薄燃焼を行うことでエンジン効率を上げ、燃費を向上させるシステムである。
そのほかにも、電動パワーステアリングの採用やブレーキアシスト、最新型のESP(エレクトロニック・スタビリゼーション・プログラム)の搭載など、話題には事欠かないゴルフVである。
進化著しいシャシー
試乗したモデルは「2.0FSI」の6段MTモデル。最高出力150ps/6000rpm、最大トルク20.4kgm/3500rpmを誇るこのエンジンは、おそらく日本導入時には主力となるはずだ。必要十分なトルクを発揮し、エンジンからのノイズやバイブレーションもよく抑えられている。サイズ同様、ゴルフが一クラス上のクルマに思える。ただし、旧型ゴルフの2リッターエンジンに比べると、中低速域のピックアップやトルク感が足りず、燃費指向のしわよせがここに来ているように思えた。
一方、ボディとシャシーの進化は著しく、ちょっと運転しただけでも巌のようなボディ剛性を感じることができた。ゴルフIVに比べると乗り心地も洗練されていて、より快適になった。このあたりは高いボディ剛性と、新開発のマルチリンクサスペンションのおかげだろう。
アウトバーンでのスタビリティも文句のつけようがない。これに風切り音やロードノイズ、そしてエンジン音の小ささが貢献して、160km/hでの高速巡航が100km/h程度に思えるのだから大したものだ。
コーナリングのマナーについては、旧型がコーナリングの初期段階でグラっとロールする印象があったが、新型では重心が高くなっているにもかかわらず、挙動は安定していて、しかもアンダーステアが弱められているから、気持ちよくコーナーを抜けることができた。
というわけで、FSIエンジンに多少不満は残るものの、それを差し引いてもゴルフVは実に魅力あふれるクルマに仕上がっていた。日本のファンにとっては、6段オートマチックの組み合わせがどんな印象か、そして、旧型に比べて燃費はどれほど改善されるのかが気になるところだが、いまから日本上陸が楽しみである。
(文=生方聡/写真=フォルクスワーゲン/2003年10月)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
-
スズキ・エブリイJリミテッド(MR/CVT)【試乗記】 2025.10.18 「スズキ・エブリイ」にアウトドアテイストをグッと高めた特別仕様車「Jリミテッド」が登場。ボディーカラーとデカールで“フツーの軽バン”ではないことは伝わると思うが、果たしてその内部はどうなっているのだろうか。400km余りをドライブした印象をお届けする。
-
ホンダN-ONE e:L(FWD)【試乗記】 2025.10.17 「N-VAN e:」に続き登場したホンダのフル電動軽自動車「N-ONE e:」。ガソリン車の「N-ONE」をベースにしつつも電気自動車ならではのクリーンなイメージを強調した内外装や、ライバルをしのぐ295kmの一充電走行距離が特徴だ。その走りやいかに。
-
スバル・ソルテラET-HS プロトタイプ(4WD)/ソルテラET-SS プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2025.10.15 スバルとトヨタの協業によって生まれた電気自動車「ソルテラ」と「bZ4X」が、デビューから3年を機に大幅改良。スバル版であるソルテラに試乗し、パワーにドライバビリティー、快適性……と、全方位的に進化したという走りを確かめた。
-
トヨタ・スープラRZ(FR/6MT)【試乗記】 2025.10.14 2019年の熱狂がつい先日のことのようだが、5代目「トヨタ・スープラ」が間もなく生産終了を迎える。寂しさはあるものの、最後の最後まできっちり改良の手を入れ、“完成形”に仕上げて送り出すのが今のトヨタらしいところだ。「RZ」の6段MTモデルを試す。
-
BMW R1300GS(6MT)/F900GS(6MT)【試乗記】 2025.10.13 BMWが擁するビッグオフローダー「R1300GS」と「F900GS」に、本領であるオフロードコースで試乗。豪快なジャンプを繰り返し、テールスライドで土ぼこりを巻き上げ、大型アドベンチャーバイクのパイオニアである、BMWの本気に感じ入った。
-
NEW
2025-2026 Winter webCGタイヤセレクション
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2025-2026 Winterシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。一年を通して履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけ、より進化したスタッドレスタイヤか。最新ラインナップを詳しく紹介する。 -
NEW
進化したオールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2」の走りを体感
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>欧州・北米に続き、ネクセンの最新オールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2(エヌブルー4シーズン2)」が日本にも上陸。進化したその性能は、いかなるものなのか。「ルノー・カングー」に装着したオーナーのロングドライブに同行し、リアルな評価を聞いた。 -
NEW
ウインターライフが変わる・広がる ダンロップ「シンクロウェザー」の真価
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>あらゆる路面にシンクロし、四季を通して高い性能を発揮する、ダンロップのオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」。そのウインター性能はどれほどのものか? 横浜、河口湖、八ヶ岳の3拠点生活を送る自動車ヘビーユーザーが、冬の八ヶ岳でその真価に触れた。 -
NEW
第321回:私の名前を覚えていますか
2025.10.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。24年ぶりに復活したホンダの新型「プレリュード」がリバイバルヒットを飛ばすなか、その陰でひっそりと消えていく2ドアクーペがある。今回はスペシャリティークーペについて、カーマニア的に考察した。 -
NEW
トヨタ車はすべて“この顔”に!? 新定番「ハンマーヘッドデザイン」を考える
2025.10.20デイリーコラム“ハンマーヘッド”と呼ばれる特徴的なフロントデザインのトヨタ車が増えている。どうしてこのカタチが選ばれたのか? いずれはトヨタの全車種がこの顔になってしまうのか? 衝撃を受けた識者が、新たな定番デザインについて語る! -
NEW
BMW 525LiエクスクルーシブMスポーツ(FR/8AT)【試乗記】
2025.10.20試乗記「BMW 525LiエクスクルーシブMスポーツ」と聞いて「ほほう」と思われた方はかなりのカーマニアに違いない。その正体は「5シリーズ セダン」のロングホイールベースモデル。ニッチなこと極まりない商品なのだ。期待と不安の両方を胸にドライブした。