ポルシェ・カイエンS/カイエンターボ(6AT/6AT)【試乗記】
「あれはオンロード性能の高いSUVですよ」 2003.08.04 試乗記 ポルシェ・カイエンS/カイエンターボ(6AT/6AT) ……955.0万円/1323.0万円 2003年7月18日にFISCO(富士スピードウェイ)で開催されたポルシェ試乗会「Porsche High Performance Press Test Drive」。同社初のSUV「カイエンS」と「カイエンターボ」は、過酷なサーキット走行に耐えうるのか? 自動車ジャーナリストの笹目二朗が乗った。
拡大
|
拡大
|
不安が残る
高性能SUV、ポルシェ「カイエンS」と「カイエン・ターボ」に乗った。「SUVだからオフロード」では、あまりに普通過ぎる。ポルシェジャパンはノーマルタイヤのまま、FISCOを走らせてくれたのだ。
そもそも「なぜポルシェがSUVなのか?」という疑問もあるだろう。ポルシェはいま、年間約5万台を生産するスポーツカーメーカーであり、世界トップクラスの利益率を誇る。その優良企業が健全なる発展を目指すとき、スポーツカーだけに頼ってはいられない。かといって、セダンやトラックをつくるのはイメージにそぐわない。そこでSUVに目を付けたわけだが、タダのSUVをつくっても面白くない。まぁ、ポルシェが“タダのネズミ”であるはずもないが……。
だからポルシェの威信にかけて、カイエンをサーキットで走らせるという、ポルシェにしてみれば当然の説明会を開催したわけだ。
それにしても……、約2.5トンの巨体が266km/h(ターボ)で疾走するのは、まだ想像がつく。ポルシェの発表なら数値を信じてもいいだろう。しかし、サーキット走行という過酷な状況でブレーキがもつのだろうか? 重心高の高いボディはコーナーを転倒せずに曲がっていくのだろうか? ……不安が残る。
ブレーキは……
果して、前に乗った人が降りてくると、カイエンSからはブレーキパッドの焼ける匂いがプンプン、煙も上がり始めた。予感的中か?
とりあえず、ブレーキペダルに踏代があることを確かめて、すぐ走りだす。こういった場合は、風を当ててブレーキを冷却した方がいいのだ。ピットロードをソロソロと出て、第1コーナーに差しかかる前に軽くブレーキして確かめると、何事もなかったかのように踏代は確保され、エアーが入っているようなスポンジーな感覚もなく、カチッとしている。よかった、問題はなさそうだ。
1コーナーは2速でインに沿ってまわり、出口付近でフルスロットルを与えた。レッドゾーンは6600rpmからだが、最初は5000rpmで3速に送り、4速に入れてすぐ減速。次に控えるサントリーコーナーの左ターンは、高いカイエンのコクピットからは直角に曲がっているように見える。2速でパスして3速へ。そのまま100Rを抜け、ヘアピンへの進入でまた2速へ落とす。高い視点から、FISCOのヘアピン手前が「こんなに下りだった」ことがよくわかる。こういった体験も、カイエンならではか?
ヘアピン進入に備えてのフルブレーキングは、まったく問題ない。次のおおきなRの右ターンは、どのラインがいいのかわからず、とりあえずインにつき信号塔に向かって直進。このあたりの高速コーナーでも、ロールの恐怖感に襲われることはない。4-3-2と、ティプトロニックのシフトレバーを引いてシフトダウン。シケインを2速で通過し、5000rpmをリミットに3速、4速と上げていった。
タイトな切り返しでもロールが気にならないことから、高い重心高に対し、ロールセンターも充分に高いことを知る。最終コーナーはまだまだ存分に速度に乗せられないので、どのラインを通っていいかわからず、何となくインによせて、ストレートが見えてからアウトに。そして5、6速へ。
おそるべし
低めの回転数でシフトアップする“安全運転”をしたのは、ブレーキに対する不安が残っていたからだ。FISCOでハードブレーキを行うのは、シケイン手前が最後。最終コーナーは、減速するほどの速度に達しない。とすると、前の人はどこでブレーキを酷使したんだろう?
しばらく考えてピンときた。そうか、ピットレーンの減速シケインで攻めたのか、と。それなら、長い時間ブレーキを踏み続けることはない。事情が飲み込めてから、ブレーキフェードに対する不安は完全に払拭され、安心して第1コーナー手前の減速ができた。
2周目は6000回転をリミットに(ただし3速までだが)、遠慮なく走ることができた。こうしてたった2周ながら、カイエンSでサーキットを走った。感覚的には、2世代前のポルシェ911(964)と同じくらい速いのではないかと思えた。
それにしても、「カイエンおそるべし」である。視点の高さを除いて、これほど普通にサーキット走行をこなせるSUVがほかにあるだろうか。
まさに“スポーツカー”
続いて、カイエンターボに乗った。200km/h に達する地点がカイエンSより早いことを除いて、両車に大きな違いはなさそうに思えた。つまり、絶対的な動力性能以外、オンロード性能はどちらも高いレベルにあるということだ。計4ラップではいろいろ試せるチャンスはなかったが、ブレーキペダルを放した瞬間に感じるボディ慣性重量の大きさ、横Gがかかっている時にスロットルオフした時のタックインの大きさから、アンダーステアの度合いもやはりそれなりに強いと感じた。
ロールに関しては、一般道における低速時、グリップが充分ある状態では、スタビライザーなどで抑えている感が強い。しかし、サーキットではタイヤが適当にスリップするため、ロールはそれほど進行しない。
それにしても……、カイエンはまさに“スポーツカー”であった。外観こそSUVの形をしているが、重量級大型スポーツカーそのものの感触をもつ。
パリサロンの発表会で、「カイエンでパリダカに出場するのか?」と、どこかのジャーナリストが質問していたのを思い出した。その際の「あれはオンロード性能の高いSUVですよ」というポルシェの説明が、改めて実感できたのである。
(文=笹目二朗/写真=清水健太/2003年8月)

笹目 二朗
-
メルセデス・マイバッハSL680モノグラムシリーズ(4WD/9AT)【試乗記】 2026.3.4 メルセデス・マイバッハから「SL680モノグラムシリーズ」が登場。ただでさえ目立つワイド&ローなボディーに、マイバッハならではのあしらいをたっぷりと加えたオープントップモデルだ。身も心もとろける「マイバッハ」モードの乗り味をリポートする。
-
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】 2026.3.3 「GRヤリス」の新仕様として設定された「エアロパフォーマンスパッケージ」装着車に試乗。レースフィールドでの知見を交え開発したというエアロパーツの空力・冷却性能は、リアルワールドでも体感可能なのか。高速道路を経由し、郊外のワインディングロードを目指した。
-
ドゥカティ・モンスター(6MT)【海外試乗記】 2026.3.2 ドゥカティのネイキッドスポーツ「モンスター」が5代目にモデルチェンジ。無駄をそぎ、必要なものを突き詰めてきた歴代モデルの哲学は、この新型にも受け継がれているのか? 「パニガーレV2」ゆずりのエンジンで175kgの車体を走らせる、ピュアな一台の魅力に触れた。
-
フォルクスワーゲンID.4プロ(RWD)【試乗記】 2026.2.28 フォルクスワーゲンのミッドサイズ電気自動車(BEV)「ID.4」の一部仕様変更モデルが上陸。初期導入モデルのオーナーでもあるリポーターは、その改良メニューをマイナーチェンジに匹敵するほどの内容と評価する。果たしてアップデートされた走りやいかに。
-
スズキ・キャリイKX(4WD/5MT)【試乗記】 2026.2.27 今日も日本の津々浦々で活躍する軽トラック「スズキ・キャリイ」。私たちにとって、最も身近な“働くクルマ”は、実際にはどれほどの実力を秘めているのか? タフが身上の5段MT+4WD仕様を借り出し、そのパフォーマンスを解き放ってみた。
-
NEW
BYDシーライオン6(FF)
2026.3.6JAIA輸入車試乗会2026“中国の新興ブランド”BYDにあこがれは抱かずとも、高コスパの評判が気になる人は多いだろう。では、日本に初導入されたプラグインハイブリッド車のデキは? 初めて触れたwebCGスタッフがリポートする。 -
NEW
実に3年半ぶりのカムバック 「ホンダCR-V」はなぜ日本で復活を果たしたのか?
2026.3.6デイリーコラム5代目の販売終了から3年半のブランクを経て、日本での販売が開始された6代目「ホンダCR-V」。世界的なホンダの基幹車種は、なぜこのタイミングで日本復活を果たしたのか? CR-Vを再販に至らしめたユーザーの声と、複雑なメーカーの事情をリポートする。 -
NEW
「ジープ・アベンジャー4xeハイブリッド」発表会の会場から
2026.3.5画像・写真ジープブランドのコンパクトSUV「アベンジャー」に、4WDのハイブリッドバージョン「アベンジャー4xeハイブリッド」が追加された。その発表会(2026年3月5日開催)の場に展示された同モデルの外装・内装を写真で紹介する。 -
NEW
スバル・トレイルシーカーET-HS プロトタイプ(4WD)【試乗記】
2026.3.5試乗記スバルから本格的な電気自動車の第2弾となる「トレイルシーカー」が登場。前後のモーターから繰り出すシステム最高出力はドーンと380PS。ただし、それをひけらかすような設定にはしていないのがスバルらしいところだ。スノードライブの印象をお届けする。 -
NEW
ホンダ・インサイト
2026.3.5画像・写真4代目はまさかの電気自動車(BEV)! ハイブリッドからBEVへ、4ドアセダンからSUVへと変身して、「ホンダ・インサイト」が復活を遂げた。ドアトリム/ダッシュボードヒーターにアロマディフューザーと、新たな快適装備を満載したその姿を、写真で紹介する。 -
BYDシーライオン7 AWD(4WD)
2026.3.5JAIA輸入車試乗会2026堂々たるスタイルにライバルの上をいくパワーと一充電走行距離、そしてざっくり2割はお得なプライスを武器とする電気自動車「BYDシーライオン7」。日本市場への上陸から1年がたち、少しずつ存在感が増してきた電動クーペSUVの走りやいかに。

































