「AT車の牽引について」
2002.12.27 クルマ生活Q&A トランスミッション「AT車の牽引について」
AT車を牽引しようとしたら、「トランスミッションを壊してしまうからダメだ」と言われました。本当なのですか? 理由を教えてください。(SYさん)
お答えします。AT(オートマチックトランスミッション)は、エンジンが停止しているとトランスミッション用のフルードポンプが働かないため、AT内部にオイルを送れなくなります。ギアの潤滑ができなくなるのです。したがって、エンジンがかかっていない停車中のAT車は、牽引してはいけないと言われるのです。
エンジンが不調で動かなくなったAT車を運ぶ一番良い方法は、修理屋さんやレッカー屋さんに頼んで、駆動輪を持ち上げて運搬することです。
しかしだからといって、すこしでも牽引すると即座に壊れるかというと、経験からいってそんなことはありません。できるだけトランスミッションに負担をかけないよう、発進させるときはゆっくりと引っぱり、30km/h以下で走行します。距離にして10kmぐらいまでなら、まず大丈夫でしょう。
牽引するときはにはセレクトレバーを「N」ポジション(ニュートラルレンジ)にします。FR(後輪駆動)のクルマの場合はプロペラシャフトを取り外せばATに負担をかけずに牽引できますが……。なにはともあれ、牽引のお世話にならないよう、定期的な整備を怠らないことですね。

松本 英雄
自動車テクノロジーライター。1992年~97年に当時のチームいすゞ(いすゞ自動車のワークスラリーチーム)テクニカル部門のアドバイザーとして、パリ・ダカール参加用車両の開発、製作にたずさわる。著書に『カー機能障害は治る』『通のツール箱』『クルマが長持ちする7つの習慣』(二玄社)がある。