スズキ・アルト ラパンターボ(FF/4AT)【試乗記】
ほぼ“そのまんまラパン” 2002.10.25 試乗記 スズキ・アルト ラパンターボ(FF/4AT) ……111.8万円 ウサギマークが可愛いスズキ「アルト ラパン」に、ターボモデルが追加された。その名も「アルト ラパンターボ」。神奈川県は大磯で開かれたプレス向け試乗会で、webCG記者が乗った。
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予想より売れた
スズキの軽乗用車「アルト ラパン」に、ターボモデルが追加された。その名もズバリ「アルト ラパンターボ」。日常で頻繁に使う中低速トルクを重視した「Mターボ」を搭載。4人乗車や荷物を載せてもスムーズに走れる力強さがウリだ。
2002年1月にデビューしたラパンは“ゆるい”をコンセプトに、角を丸めて柔らかさを出した四角いボディデザイン、家具を思わせる“癒し”のインテリア、フロントグリルにウサギマークを付けてカワイさをアピールし、女性をメインターゲットにするクルマである。
いまさらターボを追加するには、なにかワケがあるに違いない。オリジナルがデビューしてから、適当な時期に特別仕様車やニューモデルを投入し、話題性を持続させる戦略か? と思ったら、どうもそうではないらしい。
「われわれが考えていたより、ラパンが売れたからなんです」とおっしゃるのは、4輪商品企画グループの鈴木英仁係長。発表直後から予想を超えた注文を受け、一時は生産が間に合わずバックオーダーを抱えたという。1〜9月の累計販売台数は5万3853台、月割りすると平均で約6000台を販売した勢いは、現在も衰えていないようだ。思わぬ人気に後押しされ、ターボの追加で荷物を載せるとか、多人数乗車が多いといったニーズに応えることとなった。販売資料によれば、ユーザーの77%が女性。既婚男性は18%。「サイフを握るのは奥様」が世の常とすれば、女性主導率は9割を超える!? ラパンのコンセプトは“当たり”だったワケだ。
区別がつかない
試乗会場の、神奈川県は大磯のホテル駐車場に並ぶラパンターボを見たとき、NAモデルと区別がつかなかった。外観上の違いは、ボディ同色のストライプ型グリルを、黒のメッシュタイプに変更したことと、フロントバンパーに埋め込まれたフォグランプ。「ターボモデル」にありがちな、ボンネット上のエアインレットはなく、155/65R13のタイヤサイズもノーマルと同じである。ボディ後部のネームプレートに、“Turbo”の文字すら入らない。
インテリアも、エクステリアと同様に変更はシンプル。アプリコット内装の運転席に座っても、プレーンで清潔な雰囲気はそのまま。速度計右側に埋め込まれていた時計はタコメーターに置き換えられたが、控えめな大きさでデザインもシャレており、内装の統一感を損なうことはない。さらに、一体型だったリアシートのシートバックを、5:5に分割可倒できるセパレートタイプに変更。左右独立してリクライニングでき、荷室からのレバー操作でシートバックを前倒しできる。
一般的にターボモデルを追加した場合、サスペンションをややハードにするなどのチューニングが施され、“スポーティ”といった付加価値をつけることが多い。だが鈴木氏によると、ラパンターボはスプリングもダンパーもNAモデルと同じ。エンジン以外のメカニカルな違いは、フロントブレーキがベンチレーテッドに、径が1インチ拡大され13インチになったこと。増大したアウトプットに合わせ、トランスミッションの最終減速比は、5.482から4.897に高められた。見た目だけでなく、中身もほぼ“そのまんまラパン”である。
とっても静か
ラパンターボに搭載されるMターボエンジンは、NAより2.1kgm太い8.5kgmの最大トルクを、500rpm低い3000rpmで発生する。リポーターとカメラマン+撮影機材を積んでも、動き出してすぐに力強さが感じられた。西湘バイパスの大磯インターチェンジは、合流の加速区間が100m弱とかなり短い。短時間で加速しきれない非力なクルマだと緊張を強いられるが、ラパンターボは余裕あるトルクのおかげで気がラクだ。
もうひとつの特徴として、静粛性に優れることが挙げられる。低回転からトルキーなエンジンゆえ、アクセルペダルの踏み込み量が少ないことが大きな理由だろう。100km/h巡航時のエンジン回転数は4000rpm。普通車と比較すると、エンジン回転数がやや高めに思えるかもしれないが、後席で撮影する峰カメラマンと普通に会話できた。
電動パワステの感触はノーマルでもあまり良くなかったが、ターボになって高速走行がラクになった分、違和感が増したような気がする。軽すぎて路面の感触がつかみにくいのは、軽い操舵を女性が好みそうだということで譲歩しても、センター付近が曖昧なのは残念。せっかく高速巡航をラクにこなすパワーを手にいれたのに……。
ということでラパンターボは、当たり前だがエンジンに余裕のある「ラパン」だった。NAとの違いがエンジンのみ、といってもいいくらいだからかもしれないが、“ゆるい”とか“癒し”といった、ラパンの美点がそのままだったことが嬉しい。ちなみに、2002年9月3日に発表された特別仕様車「アルト ラパン モード」は、エクステリアにメッキグリル、インテリアにはウッドパネルや専用シート表皮を採用し、上級感と高い質感を備えたと謳われるモデルだ。「40〜50代のオジサン社員に、ラパンの評判が思いがけず良かった」(鈴木氏)ので、設定されたという。特別仕様車で異なるユーザー層を探りつつ、カタログモデルはターボがついてもコンセプトに忠実。想像以上にヒットしたモデルを育てる、手堅い戦略である。
(文=webCGオオサワ/写真=峰昌宏/2002年10月)

大澤 俊博
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