日産フェアレディZ バージョンS(6MT)【試乗記】
現代のスポーツカー 2002.08.30 試乗記 日産フェアレディZ バージョンS(6MT) ……364.0万円 世界中のクルマ好きの期待を集めて発表されたフェアレディZ。280psを発生する3.5リッターV6をフロントミドに搭載した日産の新世代スポーツカーは、どうなのか? webCG記者が、山梨県は小淵沢でステアリングホイールを握った。最も魅力的に見えるのは?
日産フェアレディZが2002年7月30日に発表されて1ヶ月。新世代“ズィーカー”の受注状況が発表された。販売店の夏休みを考慮すると、実質2週間で5000台弱の注文を得たという。オートマ天国のわが国においてMT比率が45%と高いのは、ファナティックなゼットファンがディーラーに駆け込んだためだろう。“純粋二人乗り”のクルマがこのまま売れ続けるとは思えないが、「スポーツカーはご祝儀と思って買うもの」という舘内端さんの名言もある。まずはめでたい滑り出しである。
山梨県は小淵沢でプレス向け試乗会が開催された。「スパークリングシルバー」と呼ばれる、濃いめの銀色にペイントされたバージョンSに乗る。18インチホイールを履き、ブレンボ製ブレーキシステムが奢られた、しかしファブリック内装の、いわば一番“硬派”モデルである。パーキングエリアに並ぶ新型フェアレディを前に、ほおがゆるむ。「カッコいいじゃないか!」
新しいフェアレディは、初代Zたる「S30」のウィンドウグラフィック、先代「Z32」のルーフラインなどを上手に採り入れる一方、ごく短い前後オーバーハング、「コーンケイブボディセクション」と名付けられたウェストラインでグッと張り出した車体側面、強調されたフェンダー部、そしてやわらかい面と曲線的なパーツを組み合わせて緊張感を出すといった、デザイン上のモダンな試みが随所に見られる。ちょっと皮肉な言い方をすると、実物もイイけれど、雑誌やテレビ、ウェブサイトなど、メディアに載ったときに最も魅力的に見えるところが、非常に現代的だと思う。ヴァーチャルワールドが実世界に食い込み始めた時代に登場したスポーツカーだから、というのは、あまりにうがった見方だろうか。
ボディサイズは、全長×全幅×全高=4310×1815×1315mm。ミドサイズながら同じ2シータースポーツ「ポルシェ・ボクスター」より10mm短く、35mm幅広い。2650mmと長いホイールベースが印象的。ギュッと詰まった塊感がある。
インテリアの質感とデザイン
ドアハンドルを引くと、BMWのように「シュッ!」と窓ガラスがわずかに下がるドアを開けて、あたりの柔らかいファブリックシートに座る。ソフトにスポーティだ。座面、背もたれのサイドから盛り上がったサポートにやんわり抱かれる感じ。シートポジションは低めだが、たとえばホンダNSXのような、ペタッと地面にシリをつくような絶対的な低さはない。高めのショルダーライン(サイドウィンドウ下端)とインストゥルメントパネル上面が、適度な囲まれ感を演出し、ドライバーをして実際以上に低く感じさせる。視界はいいが、ボディの見切りは悪い。
細かいシボが付けられた黒いドア内張が、視界の隅に無愛想に広がる。それはともかく、5代目ゼットのインテリアが、240Zの3連メーターを引用しながらも、回顧方向へ流れることなくまとめられたのはリッパだ。「ボクスターSを仮想敵として開発した」というメーカーの主張を真正面から受けると、「ベーシックモデル300万円から」というコストの制限からくる質感をデザインの力で打ち破る……ほどの迫力は、個人的には感じられなかった。けれども、「リーズナブルな価格で高性能とスタイリッシュなスポーツカーを手に入れる」というズィーカーのコンセプトに立ち返って考えるなら、いわゆる高級感より、たとえば身長146cmのヒトから最適なドライビングポジションが取れる「228mmのロングスライドシート」と「大きなステアリングホイールのチルト(上下)量」という万民向けな機能をこそ評価するべきだろう。「速度計」「回転計」などを収納した3連メーターが、先行して発売されたスカイライン同様、ステアリングの上下に連動して動く、といった使い勝手の面を。
キーをひねって、3.5リッターV6「VQ」ユニットを目覚めさせる。日産ジマンの「VQ」ユニットが、ようやくZに搭載された。「先代は、最後まで『VG』型だったものなァ……」と一瞬、感傷が訪れる。
クラッチをつないで走り始めた。新生「Z」のショーカーが披露されたのは、2001年1月のデトロイトショー。ようやく市販モデルのステアリングホイールを握ることができた。
エンジンとギアボックス
「Z33」フェアレディに乗って最初に気づくのは、乗り心地のよさだ。ゴツゴツした路面を低速で走っても、4輪マルチリンクのアシがしなやかに動いて入力をキレイに吸収する。あたかもラグジュアリーサルーンのように。前225/45R18、後245/45R18(いずれもブリヂストン・ポテンザRE040)という薄く大きなハイグリップタイヤを履いているにもかかわらず。
「スカイライン350GT-8」のパワーユニットをベースに、吸排気系のファインチューン、点火時期の見直しなど手が入れられた3.5リッターV6フォーカム24バルブは、350GT-8より2000rpm高い6200rpmで8psアップの最高出力280ps、同じ4800rpmで1kgm太い37.0kgmの最大トルクを発生する。スロットルペダルを踏み込むと、まだ走行距離5000kmにも満たないまっさらな新車ということもあろう、ゴロゴロとやや大時代的な回転フィールをともなって実直にアウトプットを紡ぎ出す。軽々しく回転数を上げない、トルキーで力強い、男くさいエンジンだ。
新型フェアレディは、「アルミボンネット」「カーボン製プロペラシャフト」「バンパーの内部部材のアルミ化」といった軽量化策が施され、厳しくなる一方の衝突安全性を確保しつつ、先代より100kgほど軽い1440kgの車両重量を実現した。速い!! 大排気量NAユニットの恩恵で、直線的に何気なく伸びるスピードゆえ、うっかりしているとカーブ手前で慌てる速度に達していたりする。
タコメーターのレッドゾーンは6500rpm。シフトアップインジケーターの小さな赤いランプを気にしながらフルスケール回して加速すると、ロウで約60km/h、セカンドでは約100km/hまでをカバーする。「あえてショートすぎないストロークにした」(広報資料)という6段ギアは、これもまだじゅうぶん馴染んでないせいだろう、多少カサついた感じで、ついついスティックに手が伸びる……という楽しさは見いだせなかった。
|
オトナな部分
駐車場を出て、街乗りを模してノンビリ走っているうちは、「少々大味かなァ」と第一印象をまとめていたが、カーブが続く山道にステージが移ると、「世界中の誰もがスポーツドライビングを楽しめる」ことを狙ったニューZのキャラクターの一端を見ることができた。
ハンドリングは、「ピリピリしたシャープさ」ではなく、情報をしっかり伝えつつもおおらかなもの。ドライバーはリラックスして“スポーツ”に向き合うことも可能だ。
「こりゃいい!」と感心したのがスロットルとリアタイヤの関係で、駆動輪がペダル操作にキレイにリンクするから、コーナー出口でちょっと後輪を鳴らして、FR(後輪駆動)っぽい“粋な走り”をしている気になれる。目を三角にして、息を詰めてトバさなくてもいい。新しいフェアレディZの“オトナな部分”である。
現行「V35」スカイライン以来、日産の“スポーティな走り”は、「ドライバーの目線が動かないフラットライド」と定義される。エンジニアの方に、「耐久レースでは、それが一番大事なんです」と説明されても、ヘソ曲がりなリポーターなどは、「現代では、レーシングカーとスポーツカーは違う」と考えていた。いまでも「ある種の破綻こそがスポーツカーの命」と意固地に信じているが、なるほど、新しい日産フェアレディZは、21世紀初頭のグローバルスポーツカーだ。自動車全体が「労力いらず」、を通り越して「運転いらず」に向かっているなか、トレンドに逆らうことなく、しかしドライビングプレジャーはしっかり実現した。反社会的になることなく。大人の判断で。万人向けのリーズナブルな価格で。
(文=webCGアオキ/写真=清水健太/2002年8月)

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
-
スバル・トレイルシーカーET-HS プロトタイプ(4WD)【試乗記】 2026.3.5 スバルから本格的な電気自動車の第2弾となる「トレイルシーカー」が登場。前後のモーターから繰り出すシステム最高出力はドーンと380PS。ただし、それをひけらかすような設定にはしていないのがスバルらしいところだ。スノードライブの印象をお届けする。
-
メルセデス・マイバッハSL680モノグラムシリーズ(4WD/9AT)【試乗記】 2026.3.4 メルセデス・マイバッハから「SL680モノグラムシリーズ」が登場。ただでさえ目立つワイド&ローなボディーに、マイバッハならではのあしらいをたっぷりと加えたオープントップモデルだ。身も心もとろける「マイバッハ」モードの乗り味をリポートする。
-
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】 2026.3.3 「GRヤリス」の新仕様として設定された「エアロパフォーマンスパッケージ」装着車に試乗。レースフィールドでの知見を交え開発したというエアロパーツの空力・冷却性能は、リアルワールドでも体感可能なのか。高速道路を経由し、郊外のワインディングロードを目指した。
-
ドゥカティ・モンスター(6MT)【海外試乗記】 2026.3.2 ドゥカティのネイキッドスポーツ「モンスター」が5代目にモデルチェンジ。無駄をそぎ、必要なものを突き詰めてきた歴代モデルの哲学は、この新型にも受け継がれているのか? 「パニガーレV2」ゆずりのエンジンで175kgの車体を走らせる、ピュアな一台の魅力に触れた。
-
フォルクスワーゲンID.4プロ(RWD)【試乗記】 2026.2.28 フォルクスワーゲンのミッドサイズ電気自動車(BEV)「ID.4」の一部仕様変更モデルが上陸。初期導入モデルのオーナーでもあるリポーターは、その改良メニューをマイナーチェンジに匹敵するほどの内容と評価する。果たしてアップデートされた走りやいかに。
-
NEW
その魅力はパリサロンを超えた? 大矢アキオの「レトロモビル2026」
2026.3.7画像・写真フランスで催されるヒストリックカーの祭典「レトロモビル」を大矢アキオが写真でリポート! 欧州の自動車史を飾る歴代の名車や、めったに見られない往年のコンセプトモデル、併催されたスーパーカーショーのきらびやかなラグジュアリーカーを一挙紹介する。 -
NEW
ホンダCB1000F SE(6MT)【レビュー】
2026.3.7試乗記ホンダから満を持して登場した、リッタークラスの4気筒マシン「CB1000F」。往年のCBをほうふつさせるスタイルと、モダンなパフォーマンスを併せ持つネイキッドスポーツは、先行するライバルを追い落とすことができるのか? ホンダ渾身(こんしん)の一台の実力に触れた。 -
実力検証! SUV向けプレミアムタイヤ「ブリヂストンALENZA LX200」を試す
2026.3.62026 Spring webCGタイヤセレクション<AD>目指したのは、人気車種となっているSUVとのベストマッチ。ブリヂストンが開発した新プレミアムタイヤ「ALENZA(アレンザ)LX200」は、どんな乗り味をもたらすのか? モータージャーナリスト石井昌道が試乗を通して確かめた。 -
BYDシーライオン6(FF)
2026.3.6JAIA輸入車試乗会2026“中国の新興ブランド”BYDにあこがれは抱かずとも、高コスパの評判が気になる人は多いだろう。では、日本に初導入されたプラグインハイブリッド車のデキは? 初めて触れたwebCGスタッフがリポートする。 -
実に3年半ぶりのカムバック 「ホンダCR-V」はなぜ日本で復活を果たしたのか?
2026.3.6デイリーコラム5代目の販売終了から3年半のブランクを経て、日本での販売が開始された6代目「ホンダCR-V」。世界的なホンダの基幹車種は、なぜこのタイミングで日本復活を果たしたのか? CR-Vを再販に至らしめたユーザーの声と、複雑なメーカーの事情をリポートする。 -
「ジープ・アベンジャー4xeハイブリッド」発表会の会場から
2026.3.5画像・写真ジープブランドのコンパクトSUV「アベンジャー」に、4WDのハイブリッドバージョン「アベンジャー4xeハイブリッド」が追加された。その発表会(2026年3月5日開催)の場に展示された同モデルの外装・内装を写真で紹介する。


































