レクサスLS460L“エグゼクティブパッケージ(4人乗り)”(FR/8AT)【試乗記】
アイデンティティーを思い出せ 2012.12.19 試乗記 レクサスLS460L“エグゼクティブパッケージ(4人乗り)”(FR/8AT)……1399万1250円
世界のライバルと競うべく、大幅なマイナーチェンジを遂げた「レクサスLS」。4.6リッターV8モデルのショーファードリブン仕様「LS460L“エグゼクティブパッケージ”」に試乗し、新型の進化の度合いを検証した。
ひたすらに静かで滑らか
2012年秋のマイナーチェンジで、6000の主要構成部品の半数を新しくするという大がかりな変更を受けた「レクサスLS460L」に試乗した。モデル名末尾の“L”とは、後席スペース拡大のためにホイールベースと全長を120mmストレッチしたロングボディー仕様。しかも助手席側後席に電動オットマンを備えるなど、後席に座るやんごとなき方々へのおもてなしに満ちた「エグゼクティブパッケージ」であるからして、まずは後席を試してみる。
webCG編集部の期待の若手(というほど若くはないけれど)新人、ホッタ記者をショーファーに任命、後部座席で足を組んでみる。後席からコックピットを眺めると、その景色がすっきりモダンになっていることに気付く。
すっきりモダンに感じる主たる理由は、インストゥルメントパネルが水平方向に延びるデザインへと変更されたから。マウス感覚でカーナビなどを操作できるリモートタッチを装備したことや、「レクサスGS」でレクサスとして初めて採用したアナログ時計をLSにも用いたこともトピックだ。
いざ走りだしての印象は、ひたすら静かで、滑らか。どれくらい静かかといえば、「う〜ん、こりゃいいな」とか「あっ(信号が)赤になる〜」というホッタ記者のひとりごとがはっきりと聞こえるぐらい。レクサスLSの後席に座る政治家や経営者の方は、あまりひとりごとを言わない運転手さんを雇ったほうがいい。
静かさの要因のひとつが、このマイチェンより採用されたノイズリダクションアルミホイール。この仕組みが面白い。ホイールリムの空洞部分に小さな共振・共鳴用の穴をうがち、タイヤの細かい振動で空気の摩擦を発生させる。この音波が熱エネルギーに変換されてノイズを減らすというのだ。米粒に文字を書くような、こうした気配りを極めると個性的な日本車が生まれるのではないか。
ロング版である“L”仕様の後席ドアの窓ガラスが、ノーマルボディー仕様とは異なり遮音仕様となっていることも高い静粛性の理由のひとつだ。
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お尻と手のひらで感じるクルマの一体感
もちろん路面の凸凹を乗り越えれば、そのショックは後部座席に接したお尻にも伝わってくる。けれど、それでも滑らかだと感じるのは、クルマ全体が一丸となって難局を乗り越えようとしているように感じるからだ。ボディーとタイヤとサスペンションがばらばらの方向を向いて仕事をしているのではなく、ひとつの目標に向けて意思の統一が図られている。
すでに報道されているように、レクサスLSのマイナーチェンジにあたっては溶接の方法や接着剤の使い方などが改められている。ボディーがしっかりしたことは操縦フィーリングとともに、快適性も引き上げているようだ。
エグゼクティブパッケージの4人乗り仕様は左右の後席の間に大きなセンターコンソールがあり、触り心地のいい木製の立派なテーブルが格納されている。そのテーブルを引っ張り出せば、静かに滑るように走る車内でひと仕事、ふた仕事ぐらいできそうだ。
けれども悲しいかな後席に座ることに慣れていないので、そろそろステアリングホイールを握りたくなる。言い訳をすれば、これからのエグゼクティブは後席にふんぞり返る人ではなく、自らステアリングホイールを握って飛び回るような人であってほしいと思うのだ。
高速道路のサービスエリアでホッタ記者からステアリングホイールを奪い、本線に飛び出して何度か車線変更を行う。すると、後席で感じたことがよりくっきりとステアリングホイールを通して伝わってくる。
ボディー全体にひとつのカタマリ感があり、ステアリング操作が遅れなしに車体の動きに反映されるのだ。ステアリングホイールとタイヤとの距離が近づいたかのようだ。お尻よりも手のひらのほうが、はるかに繊細な感覚を持っている。
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熟成は進んだものの……
4.6リッターのV8エンジンは、抵抗の低減などで最高出力が7ps上がっているけれど、マイチェン前からの劇的な変化はない。すっとさりげなくトルクを伝える手応えや、4000rpmから上での控え目ながら気持ちのいい乾いた音もそのままだ。
モーターのように精密に回転を積み重ねるフィーリングと、8段ATの丁寧な仕事っぷりとの連携は、さらに熟成されている印象だ。
というわけで、乗り心地、操縦性、パワートレインがすべて熟成されてめでたし、めでたし……、とは全然思わない。
レクサスの、特に旗艦モデルであるLSの魅力は、隣に欧米の列強が並んだ時に「まだそういう古いタイプに乗ってるんですか?」と思えるような先進性にあったはず。
従来のモデルでいえば、LEDを使いこなしたインテリアの繊細な照明や滑らかなハイブリッドシステム、「どけどけ〜!」という押し出しの強さではなくインテリジェンスを感じさせるエクステリアデザインなどで、いままでとは違う高級車像を提案したところが魅力だった。それがフロントマスクが「どけどけ〜!」系のスピンドルグリルになり、ハイブリッドシステムも珍しくなくなったいま、レクサスLSならではの個性が薄まったように思える。
というわけで、乗り心地や操縦性が練りに練られていることは理解したうえで書かせていただくと、レクサスLSに熟成は似合わない。先進性でぶっちぎってほしい。
これまでのプレミアム市場に一石を投じるトンガったコンセプトで勝負するはずが、世の高級車を買う層は保守的だった、みたいなことかもしれない。でも、それでもがんばれ! チャレンジャーとして、だれも走ったことのない道を突き進んでほしいと、外野は勝手に思うわけです。
(文=サトータケシ/写真=河野敦樹)
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サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
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