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【スペック】全長×全幅×全高=3995×1695×1445mm/ホイールベース=2550mm/車重=1110kg/駆動方式=FF/1.5リッター直4DOHC16バルブ(74ps/4800rpm、11.3kgm/3600-4400rpm)+交流同期電動機(61ps、17.2kgm)/価格=185万円(テスト車=221万150円)

トヨタ・アクアG(FF/CVT)【試乗記】

燃費も売りです 2012.07.10 試乗記 鈴木 真人 トヨタ・アクアG(FF/CVT)
……221万150円
2011年12月26日に発売されたコンパクトハイブリッドカー「アクア」。2012年上半期の販売台数は12万8000台を超え、2位にランクインした。アクアの魅力はどこにあるのか? 最上級グレードにあらためて試乗した。
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デザインの力

低く構えたフォルムを見て、ほれぼれする。若々しいポップさをまとっているかと思えば、リアから見た姿はどっしりと腰を落とした頼もしさを感じさせる。横にまわれば、ウィンドウのシェイプが引き締まった表情を作っていて、スポーツカー然とした空気が漂う。傍らに立つと、上からルーフをのぞき込むような形になる。

「アクア」は「プリウス」のショート版、ぐらいに考えていたので、劇的なまでのローダウンぶりにたじろいだ。しかし、スペックを見る前にプリウスと並べてみたら、大して変わらないではないか。45mmの差だからかなり低くなっているとは言えるのだが、見た目の変わりようはもっと大きなものがある。これがデザインの力なのだろう。

ハイブリッドカーの代名詞として、プリウスは広範なユーザーを相手にするオールマイティーな性格を持つ必要がある。それに対し、アクアはスタイリッシュさや運転の楽しさを前面に出し、パーソナルユースに寄った立ち位置だ。デザインにもくっきりとした性格付けが表れている。

しかし、室内をのぞくと、印象は一変した。なんともシックというのか、落ち着いた配色なのだ。外見と内装では、対象年齢が20歳ぐらい違うように見える。試乗車は「G」という最上級グレードで、内装色はアースブラウンのみの設定である。子育てを終えた中高年にはプリウスでは大きすぎると考える層が一定数存在するようで、アクアは恰好のモデルだ。その人たちに向けてのぜいたく仕様なのだろう。


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テスト車はオプションのツーリングパッケージ装着モデル。センターオーナメント付きのアルミホイールと195/50R16タイヤが備わる。
テスト車はオプションのツーリングパッケージ装着モデル。センターオーナメント付きのアルミホイールと195/50R16タイヤが備わる。 拡大
「プリウス」(写真左)と「アクア」。アクアはプリウスと比べて、全幅で50mm狭く、全高で45mm低くなっている。カモメ形状のルーフはプリウスと同じ。
「プリウス」(写真左)と「アクア」。アクアはプリウスと比べて、全幅で50mm狭く、全高で45mm低くなっている。カモメ形状のルーフはプリウスと同じ。 拡大
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ジャッジされるエコ

あんなに低く見えたのに、中に入れば思いがけずも十分な空間がある。視界も開けていて、開放的だ。ウィンドウのすぐ下に水平なメーターパネルがあり、とても見やすい。外観に劣らず、内装のデザイナーも頑張っている。

システムを起動させてモーターだけで静かに発進する感覚は、プリウスで慣れ親しんだものと変わらない。今更言うまでもなく、モーターからエンジンへの切り替えもスムーズそのものだ。ボディーが小さいだけあって、剛性感はプリウスを上回る。交差点を曲がるだけでも、動きの機敏さが伝わってくる。ハンドリングや乗り味は、外見の若々しさに見合ったものにしているようだ。

乗り心地に関しては絶賛を受けなかったプリウスだが、アクアもいくらかそれを継承してしまった。目地段差での突き上げはコツンと響く感じで、コンパクトなボディー全体で正直に受け止めている感じだ。スポーティーさを求めたことの代償かとも思ったが、それだけではなかった。
試乗車には「ツーリングパッケージ」のオプションが付けられており、標準より大きな16インチのアルミホイールが装備されている。しかも、サスペンションも専用のものだ。アースブラウンの内装を選ぶような人ならば、このオプションは避けたほうがいいかもしれない。

燃費の良さは、やはりアクアに求められる大きな要素だろう。エコカーの通例にならい、このクルマもモニターにさまざまな情報が表示される。平均燃費や瞬間燃費はもちろんのこと、「エコジャッジ」なる機能が新しく設けられた。マツダにも「i-DM(インテリジェント・ドライブ・マスター)」という似たような運転評価システムがあるが、「コーチング機能」という言葉を使っていた。コーチなのか、ジャッジなのか、メーカーによって考え方が違うのが面白い。

内装色アースブラウンのインテリア。本革巻きステアリングホイールとフロントドアのパワーウィンドウスイッチベースにはシルバー塗装が施される。装着される「プレミアムナビ G-BOOK mX」はディーラーオプション(26万7225円)。
内装色アースブラウンのインテリア。本革巻きステアリングホイールとフロントドアのパワーウィンドウスイッチベースにはシルバー塗装が施される。装着される「プレミアムナビ G-BOOK mX」はディーラーオプション(26万7225円)。 拡大
フロントシートは、奥行き490mm、シートバック635mmと、従来のコンパクトカーに比べて一回り大きなサイズ。シート表皮はスエード調ファブリック。
フロントシートは、奥行き490mm、シートバック635mmと、従来のコンパクトカーに比べて一回り大きなサイズ。シート表皮はスエード調ファブリック。 拡大
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見えるお得感

エコジャッジでは、「エコ発進」「安定走行」「エコ停止」の3つの観点から5段階でリアルタイムに評価を表示する。さらに、運転終了後に100点満点で採点した総合評価を発表するのだ。システムインジケーターは出力や回生のレベルをグラフィカルに表示するので、それを意識していれば自然にエコ運転ができることになる。電気じかけのクルマでは、メーターでクルマと対話しながら走るのだ。

試してみた結果、エコ発進は比較的簡単に最高評価を得ることができるのだが、エコ停止はなかなか難しかった。評価が低かったから言い訳をするのではないが、ブレーキはコントロールしやすいとは言いがたいものがあった。制動力に問題はないが、微速になって最後に停止するぎりぎりのところの塩梅(あんばい)がどうもうまくないのだ。

エコ発進はゆっくりペダルを踏めばいいだけのことで、高得点を得るのは簡単だ。しかし、信号待ちからのスタートでメーターとにらめっこしながらアクセルを調節していたら、どうにも加速がかったるい。自分ひとりなら我慢すればいいが、明らかに後ろのクルマに迷惑をかけてしまっている。点取りに徹するのは途中でやめた。このジャッジは現実的ではない。

「エコウォレット」という機能もある。こちらのエコは、どちらかというとエコロジーというよりエコノミーの意味だ。比較車の燃費とガソリンの値段を設定しておくと、どれだけガソリン代で得したのかを教えてくれる。今回は400km強のドライブで高速道路と市街地を半々で走り、燃費は24.6km/リッターだった。ガソリン代を1リッター130円、比較車の燃費を12km/リッターと設定して、エコウォレットでは2310円得したと表示された。確かに、これは励みになるのかもしれない。

ただ、ハイブリッド車がこれだけ普通になってくると、燃費は魅力の一部分でしかない。アクアは、スポーティーさとスペース効率が売りだ。ハイブリッドを選ぶのではなく、ハイブリッドの中から選ぶユーザーに、十分にアピールできる実力がある。

(文=鈴木真人/写真=峰昌宏)

ダッシュボードの中央に配置された「TFTマルチインフォメーションディスプレイ」。エコ運転レベルをリアルタイムで表示する「エコジャッジ」や走行距離に応じて消費したガソリン価格を表示する「エコウォレット」などの機能を備える。(写真をクリックすると表示内容が見られます)
ダッシュボードの中央に配置された「TFTマルチインフォメーションディスプレイ」。エコ運転レベルをリアルタイムで表示する「エコジャッジ」や走行距離に応じて消費したガソリン価格を表示する「エコウォレット」などの機能を備える。(写真をクリックすると表示内容が見られます)
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60:40分割可倒式のリアシート。ハイブリッドシステムのバッテリーはこの下に搭載される。
60:40分割可倒式のリアシート。ハイブリッドシステムのバッテリーはこの下に搭載される。 拡大

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【テスト車のオプション装備】
ボディーカラー(ライムホワイトパールクリスタルシャイン)=3万1500円/ツーリンパッケージ=11万250円/スマートエントリーパッケージ=5万3550円/アドバンストディスプレイパッケージ&ナビレディーパッケージ=7万4550円/ビューティーパッケージ&運転席・助手席シートヒーター&排気熱回収器=4万8300円/SRSサイドエアバッグ&SRSカーテンシールドエアバッグ=4万2000円
【テスト車のオプション装備】
ボディーカラー(ライムホワイトパールクリスタルシャイン)=3万1500円/ツーリンパッケージ=11万250円/スマートエントリーパッケージ=5万3550円/アドバンストディスプレイパッケージ&ナビレディーパッケージ=7万4550円/ビューティーパッケージ&運転席・助手席シートヒーター&排気熱回収器=4万8300円/SRSサイドエアバッグ&SRSカーテンシールドエアバッグ=4万2000円 拡大
鈴木 真人

鈴木 真人

名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。

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