ホンダ・シビック タイプR【ブリーフテスト】
ホンダ・シビック タイプR(6MT) 2001.11.15 試乗記 ……220.0万円 総合評価……★★★★ミズスマシ
英国からの輸入車となった2代目シビック「タイプR」。サーキットはインテRにまかせ、こちらは峠スペシャルとしてウリ出される。動力性能向上とスペシャルエンジンの数を減らすため、先代の1.6リッターから2リッターとなったパワーソースは、基本的にインテグラと同じもの。鈴鹿工場でつくられ、海を往復して帰ってくる。
「Dangan Hot Hatch」を謳う3ドアボディに乗り込むと、おなじみの赤いレカロがお出迎え。「お帰り、タイプR!!」。ミニバンのように広いダッシュ上面、直径360mmの小径ステアリングホイール、そして“ジョイスティック”ことインパネシフトに初めはとまどうが、すぐにニューRに魅了される。
欧州モデルより硬められた、ということで心配された乗り心地は、フラットで滑らか。ノーマルモデルのやや突っ張った感のあるそれより、むしろいい、と感じた。エンジンは夢のよう。旧型より26%軽い鍛造クロモリフライホイールの恩恵で、羽根のように軽く回り、まばたきの間に回転が落ちる。シフトダウンが楽しい! テスト車は、量産一歩前のプリプロダクトモデルだという。願わくば、市販モデルも同じフィールでありますように。
電動パワステは、低速域ではいまひとつ自然さを欠くが、タイプRにふさわしい速度に達すると、俄然、リニアリティを増す。センター付近でクイックな可変レシオのステアリングギアを採用、タイプRは、ミズスマシのように俊敏だ。惜しむらくは舵角が大きくなったときのステアリングの戻りが悪いこと。キャスターアクションの助けを期待すると、冷や汗をかく。リポーターは、「ちょっとコワい」と思いました。
先代の破天荒さは薄れて、全体に上品になった英国産シビック タイプR。ワッハッハ……と笑い出すというより、アルミ削りだしのシフトノブを操作しながら、ニンマリするタイプ。峠で蝶のように舞いたいアナタに。
【概要】 どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2000年9月に登場した7代目シビック。ミニバン風に変身した5ドアハッチと、保守的な4ドアセダン「フェリオ」がまずデビュー。MM思想(マン・マキシマム、メカ・ミニマム)を継承したという「スマートコンパクト」が開発テーマ。1.5リッターVTEC「リーンバーン」ユニット(105ps)をメインに据え、1.5VTEC(115ps)、1.5SOHC(105ps)、1.7VTEC(130ps)と、4種類のエンジンをラインナップ。トランスミッションは、5ドアに4ATかCVT、フェリオにはさらに5MTが用意される。FFのほか、4WDもある。2001年12月6日から、イギリス製タイプR(2リッター+6MT)の日本での販売が始まった。
(グレード概要)
タイプRの2代目は輸入車となった。英国はウィルシャー州スウィンドンにある「HUM(Honda of the U.K.Manufacturing)」第2工場で生産される3ドアシビックに、日本製のエンジンとギアボックスを載せたもの。旧型より「曲げ」で20%「ねじり」で80%剛性を上げたボディに、リッター100psオーバーの「2リッター“215ps”ユニット+6段MT」を搭載。タイヤは205/45R17。素のモデルは220.0万円ながら、エアコン、パワーウィンドウ、ディスチャージヘッドライトなどを付けた「Cパッケージ」が事実上の市販モデルとなろう。33.0万円高の253.0万円。
【車内&荷室空間】 乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
シンプルな造形が好ましいインパネまわり。3眼ホワイトメーターがタイプRの証。プジョー806などに誘発されたのだろう、インパネから生えるシフトノブは、ステアリングホイールから近くてスポーティ。目新しくて、利点がわかりやすい。3本スポークの革巻きステアリングホイールは、MOMO製だ。
(前席)……★★★★
RECAROの深いスポーツバケット。普段はやんわり、いざとなるとシッカリ体を支えてくれる。座面が後ろ下がりなのが、個人的には気になった。足が短いもので……。フロアコンソールの深さ18cmの物入れは便利。小さなプレートにシリアルナンバーが振られるのも、オーナーには嬉しかろう。
(後席)……★★
着座位置を低めに設定して、ヘッドクリアランスを稼いだリアシート。足もとのスペースには不満がないが、少々不自然な姿勢を強いられる。また、なぜかまったくヘッドレストがないため、“走り屋”系グルマの後席としては座るのがいささかためらわれる。センタートンネルがないフロアはフラットで広々感があっていいのだが、荷物を置いておくと、コーナーのたびに左右に滑って大変。峠モデルとして裏目に出た感じ。
(荷室)……★★
床面最大幅125cm、奥行き76cm。カタログ値313リッター(VDA法)のラゲッジスペース。初代同様、荷物を隠蔽するには、濃いティンテッドグラスに頼るか(Cパッケージ)、オプションのリアシェルフ(1万2000円)を購入する必要がある。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★★
カムを物理的に切り替える「VTEC」に加え可変バルブタイミング機能「VTC」も搭載する2リッター「i-VTEC」。排気量アップがトルク増大に直結し、高速カムに切り替わるまでもなく、新型タイプRは速い。街なかで楽。一方、6000rpm以降のドラマはちょっとおとなしくなった。最高出力215ps。欧州仕様より15psアップは、より太いインテイクマニフォルドとデュアルエグゾーストマニフォルドのおかげ。インテRより5ps低いのは、容量で劣るサイレンサーのせい。環境面では「平成12年基準排出ガス50%低減」を実現した。マルチコーンシンクロ(1&2速はトリプル、3から6速はダブル)を採用したクロスレシオ6段MTは、いわゆる“手首でコクコク決まる”タイプ。目新しいインパネシフトとあわせ、操作そのものが楽しい。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
欧州モデルよりスプリング、ダンパーを強化する一方、フロントのアンチロールバーを弱く、リアを強くして、“曲がりやすさ”を重視したセッティングを施した日本仕様。乗り心地にも考慮され、スポーツモデルとはいえ乗員がワサワサ揺すられるようなことはない。フラットな乗り心地だ。S2000タイプVで初採用されたVGR(バリアブルギアレシオ)のステアリングギアを採り入れ、初期の回頭性をよくしたのもウリ。フロントにトルク感応型ヘリカルLSDを組み込んで、ハードコーナリング時のトラクション確保を狙った。新型タイプRは、全体にスムーズなコーナリングマシンだが、それにしてもステアリングを切り込んでいったときの戻りの悪さは何とかならんのか。
(写真=高橋信宏)
【テストデータ】
報告者:webCG青木禎之
テスト日:2001年11月2日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2001年型
テスト車の走行距離:1407km
タイヤ:(前)205/45R17 84W/(後)同じ(いずれもブリヂストン Potenza RE040)
オプション装備:--
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(7):山岳路(3)
テスト距離:−−
使用燃料:−−
参考燃費:−−

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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