トヨタ・プリウスG(CVT)【ブリーフテスト】
トヨタ・プリウスG(CVT) 2001.09.27 試乗記 ……245.7万円 総合評価……★★★★首席で合格
プリウスの実物を初めて見たとき(なかに座ったりもした)、「こんどのカローラは素晴らしいクルマになる」と確信したことをよくおぼえている。私の体験したかぎりにおいて「こんどのカローラ」はそれほど素晴らしいクルマではなかったけれど、それだけにいまプリウスの素晴らしさはさらに輝きを増している。運転したのは今回が初めてだったけれど、乗ってもプリウスはヨカッタ。欧州市場への輸出を視野に入れたマイチェン後仕様、ということも効いているのか。
仮にハイブリッド云々の話をまったく抜きにしたとしても、これは文句なしに“いいクルマ”である。260万円とかのイプサムをヒトに進める気にはちょっとなれないが、228.0万円(試乗車はオプション込みで245.7万円)のプリウスは積極的に推薦したい。間違いなくお買い得。現状、カローラ級でそういえる日本車はこれしかない。少なくとも、私はほかに知らない。もしもあったら、誰か教えてください。
これはあくまで私見だが、トヨタのクルマは、トヨタが何らかの理由で「窮地に追い込まれたり」「一念発起したり」あるいは「前例のないところへ謙虚な態度でチャレンジしたとき」ぐらいしかホントの意味で“買い”だといえるモノが出てこない。逆に、そうでない状況のもとで開発されたトヨタ車はけっこう凡庸。お客をナメている。あるいは、つくり手順のテンションの低さがハッキリ見えてしまうことが多い。
ここ20年でいうと、バリバリの本気が見えたトヨタ車は、たとえば最初のソアラ。初代FFコロナ。AW11の(ということはやっぱり最初の)MR2。マニアックなセンとして後半〜末期の二代目MR2、初代セルシオ。大エスティマ(ミドシップの先代)。乗ると少々アレだがヴィッツ。まあ入れてやってもいいかな、のアルテッツァ。
で、プリウスは議論の余地なく首席で合格。同車の開発はある意味自動車会社の存続をかけた戦いでもあったわけで、背水の陣を敷くシチュエーションとして最高だったのだろう。実際、開発スタッフも上からのツルの一声で精鋭が集められたときく。同じくツルの一声で、外野からのさまざまな雑音もシャットアウト。さしずめロッキードのスカンクワークスよろしく仕事がすすめられたようだ。背中にピン!と一本スジの通ったようなクルマはそうでないとつくれないのかもしれない。
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【概要】 どんなクルマ?
(シリーズ概要)
1998年に登場した世界初の量産ハイブリッド乗用車。1.5リッター直4DOHC16バルブ「1NZ-FXE」ユニットと永久磁石式電気モーターが組み合わされて、走行条件に応じて互いに補いながら前輪を駆動する。発進時や低速走行時、あるいは坂を降りる時などのエンジンの効率が悪い状況では電気モーターで、通常走行時はエンジンをメインに電気モーターが補助する、という具合である。
2000年5月にマイナーチェンジを受け、エンジンとモーターの出力が、それぞれ「14psと1.3kgm」「3psと4.6kgm」向上。モーターのみの走行可能範囲が45km/hから65km/hまでに拡大された。また、リアバルクヘッド後部に置かれるニッケル水素バッテリーが小型化され、そのぶん荷室容量が拡大したほか、トランクスルーが可能となったのも新しい。ステアリングのラック&ピニオンはバリアブルギア化され、パワステのチューニングと合わせて、自然なステアリングフィールが図られた。
(グレード概要)
2000年のマイナーチェンジで、プリウスは、ベーシックな「S」(218.0万円)と「G」(228.0万円)の2グレードとなった。「G」は、3本スポークのステアリングホイールとシフトノブが革巻きとなり、シートのファブリック表皮およびドアトリムが「ラグジュアリータイプ」となる。また、オーディオ類では、「G」にインダッシュ式CDチェンジャーが奢られる。機関面の違いは、クルーズコントロールの有無にすぎない(Sでは2.6万円のオプション装備)。
【車内&荷室空間】 乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
いかにも「自動車の未来をカタチにしました」といわんばかりの色づかいや“デザイン”はサテおくとして、まず全体の「高さ」や「カタチ」や「質量感」が人間にとって心地よい。ピラーの位置や角度もいいのか、そのためボンネットが見えなくとも前方の車両感覚はつかみやすい。そこがカローラとはいささか違う。スイッチ類の使い勝手も戸惑うことなし。
ただ、衝突対策なのか奥まった配置のナビ(英語圏ではsat naviなどと呼んでいる)画面は、シート前後位置によっては右側がケラレる。つまり見えなくなる。私の場合はケラレた。ケラレるといえばオーディオの音量調節ツマミは運転席からまったく見えない位置にあるが、一度わかればあとは手さぐりでイケる。
(前席)……★★★
カローラと違って、座面の角度が「シート全体をいちばん下まで下げてもまだ前下りすぎて不自然」ということがない。違和感のないドライビングポジションを得られるというのは、それだけでも非常にありがたい。座面はサイズもたっぷりしていてイイ。ただ、「背もたれが腰椎にあたる部分のフィット感」や「お尻に対する表皮の伸縮性」および「クッションのたわみの優しさ」は、まるでジャンル違いだが、例えばスズキ・エスクードと較べると負ける。
(後席)……★★★★
座って心地よい環境を、着座姿勢やシート本体はもちろん周囲の空間のカタチまで緻密に考えてつくりあげた形跡がある。「座面が床から高くてあと天井も高けりゃ文句ないでしょ」レベルのお仕事とはモノが違う。サーブ9-5のような感涙モノの居心地のよさはさすがにないが、それはまあ、許す。カローラ級だし。それと、左右の壁というかガラスのたおれこみが軽微であることの気持ちよさ!!
(荷室)……★★★★
床面最大幅135cm、奥行き90cm、高さ55cm。奥は15cmほど持ち上がるが、先頃のマイナーチェンジで電池の出っ張りがだいぶ減った。おかげでトランクスルーが可能になった。容積はこれなら文句なく実用的。基本的には、正しい実用車パッケージングの結果として得られる正しいトランクである。
【ドライブフィール】 運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★★
厳密にいえば、プリウスに変速機はない。機械としてはたった1セットの遊星歯車が内燃機関と電気モーター(とあと充電関係)のマネージメントを巧妙にこなしており、これはまさに天才的な設計というほかない。ちなみに、まず間違いなく特定の個人の発案によるものであるはずだ。
回転を始めた瞬間から最大トルクを発揮できる利点を生かし、発進は電気モーターの担当。この発進がナンともキモチイイ。当然ながらデキの悪いトルコンによるイヤ味は皆無だし、また丁寧な運転との相性がきわめてイイ。速度が上がって内燃機関が介入するところのつながりもキレイ。やはり当然ながら、イヤなキックダウンもまったくない。(なくてもちゃんと加速する)。全体として、これほどスムーズに運転できる日本車パワートレインはちょっとない(逆に、パンパン乱暴に乗りたいムキにはハッキリ不向き)。それと、圧縮行程<膨張行程の「アトキンソンサイクル」ゆえか、実感できる力のわりにエンジンが静か。電気モーターが静かなのもさることながら。
あと、乗ってみて驚いたのは涼しいこと。エンジン、というか動力機関が大気中に放出する熱の量がきわめて少ない(=冷却損失が小さい)のだろう。おかげで、晴天の真夏の真昼にエアコンをオフにしても、車内の暑苦しさはさほどでもない。トーボード越しに、あるいは開けた窓からモワーッとくるあのうっとうしい熱気が「ない」といいたくなるくらい気にならない。スゴイ。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
“フランス車”風というよりは“フォードKa”風か。ただし、トバしても平気の平左でついてくる……わけではないところがKaとは全然違う。「ファーム系」か「ソフト系」かでわければ間違いなくソフト系。峠を攻めて楽しい種類のクルマではまったくない。最近は、いわゆるミニバン系でもっと不安なくバンバンいけるクルマはたくさんある。しかし、そんなことはこの際問題でもナンでもない。走行抵抗低減を第一義としたアシのジオメトリーのせいか、はたまた同じようなコンセプトでつくられたタイヤのせいか、ビシッとした感じが希薄ではあるが、普通の道をごくごく普通に走っているだけでプリウスは楽しい。
乗り心地も悪くない。いわゆるジャーナリストの「箱根暴走対策」と「首都高段差対策」の両方を同時に、しかも貧相なアシのバードウェアでもってやらねばならないという安モノ日本車の呪縛から自由なところでつくられたおかげか。動力方面の印象も含めて、すくなくとも私が乗ったほかのどの現行カローラ系モデルよりも“走り”は、いや走りすらもマトモだった。
(写真=河野敦樹)
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【テストデータ】
報告者:森 慶太
テスト日:2001年8月1日から2日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2001年型
テスト車の走行距離:1820km
タイヤ:(前)165/65R15 81S/(後)同じ(いずれもブリヂストン B391)
オプション装備:MD一体AM/FMラジオ+CDオートチェンジャー&4スピーカー(1.7万円)/DVDナビゲーションシステム(13.0万円)/特別ボディカラー(3.0万円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4):高速道路(5):山岳路(1)
テスト距離:172.4km
使用燃料:13.3リッター
参考燃費:13.0km/リッター

森 慶太
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