ダイハツ・ストーリア1300ツーリング(FF/4AT)【ブリーフテスト】
ダイハツ・ストーリア1300ツーリング(FF/4AT) 2002.03.06 試乗記 ……164.0万円総合評価……★★★
妥当な名前
「宇宙人もビックリ!!」の変貌をとげたのが、ダイハツ・ストーリア。いい具合に力の抜けたシンプルなスタイルが、いつの間にか(って2001年12月からなんだけど)すっかりコテコテの金襴緞子顔に……。
厚化粧に驚きながらドライバーズシートに腰かけると、ミニバン全盛の昨今、小型車としても久しぶりの低いシートポジションだ。ストーリアのデビューは1998年。ひるがえって2002年、いまや“ミニバンの居住性”が日本のクルマ全体を覆っている。ストーリアの乗降性はいまひとつだが、ダッシュボード上面やスカットルが低いので、視界は悪くない。ショルダーラインも低めだから、適度な開放感あり。これまた低く位置するステアリングホイールを握りながら「このポジション、なにかに似ている」と考えていたら、プジョー106でした。守旧派にはココロ落ち着く居住空間。小型車のそれとして好ましい。
テスト車は、最もホットな「ツーリング」。アシが多少硬められるが、外観のコスメにあわせる程度。乗り心地に不満なく、しかし「うーん、スポーティ!」と感心するほどでもない。チョビっと余裕のある動力性能。ロングツーリングに耐えうる小排気量車として、「ツーリング」のグレード名はいいトコロをついている。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
「新1000ccスタイル」をテーマに1998年2月にデビュー。2000年5月には1.3リッターモデルが加わり、「トヨタ・デュエット」としてのOEM供給も始まった。2001年12月にマイナーチェンジを受け、大きなグリルがフロントの高い位置に装備されるようになり、顔つきがまったく変わった。エンジンは、1リッター直3(64ps、9.6kgm)、1.3リッター直4(90ps、12.6kgm)、そのハイチューン版(110ps、12.8kgm)が用意され、それぞれ4段ATか5段MTが組み合わされる。FFのほか4WDあり。
(グレード概要)
ストーリアの1.3リッターモデルは、90psの「1.3CX」と、同じエンジンながら、ハイコンプレッション110psバージョンを心臓とする「ツーリング」の2種類。後者は、前後エアロバンパー、ハロゲンフォグランプなどを装着する。1インチ大きな14インチアルミホイールを履くほか、−15mmのローダウンサスペンション、強化されたスタビライザー、そしてクイックステアリングを装備。AT車は、ステアリングホイールのスポークにシフトボタンが付く「ステアシフト」を搭載する。
【車内&荷室空間】 乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
「白地に赤文字のメーター類」に合わせて革巻きステアリングホイールのステッチも赤。ATモデルには、左右スポークそれぞれにシフト「アップ」「ダウン」用のボタンを装備した「ステアシフト」機能が付く。インパネ全体の質感は値段相応。インパネの正面垂直部はごく小さなドットが打たれるが、ダッシュ上面は大きく低いシボなので、直射日光を受けると若干フロントスクリーンに反射する。中央部に小物入れあり。特筆すべきは、純正オーディオの操作しやすさ。大きいダイヤル式の音量調整、「MD」「CD」「AM/FM」と三分割されたモードボタンほか、古典的ながら迷うところがない。
(前席)……★★★
前席の居心地(?)はいい。Aピラーが立ち気味で、フロントスクリーンが顔面から離れているため、ボディサイズのわりに広く感じる。シートも、コンパクトカーながら特に短くない座面長に好感。ただし、座り心地は全体に平板。サイドサポートはソフトで頼りないが、シートバックそのものがわずかに湾曲しているため、ほどほどのホールド性をもつ。ATモデルはセンターアームレストあり。オプションで、レカロシートを選択することも可能だ。
(後席)……★★
こちらはコンパクトサイズを正直に反映したシート。座面は短く、クッションは薄い。低いショルダーラインと広いリアウィンドウのおかげで開放感は高い。頭まわりのスペースに不満はないが、なぜかヘッドレストを差す穴が閉じられ、ヘッドレストが省略されている。後部座席乗員の頸椎より、後方の視界確保を優先したためか。居住空間はともかく、走行中はけっこう「突き上げ」きます。
(荷室)……★★
床面最大幅118cm、奥行き70cm、パーセルシェルフまでの高さ40cm。左右のストラットバーの出っ張りがやや気になるが、日常的には使いやすそうなラゲッジルーム。ハッチを開けたときの開口部が大きいのがいい。リアシートは分割可倒式で、倒すと140cmまで奥行きが延びる。細かいことだが、パーセルシェルフをボディ側に差すのに、別体の小さなバーではなく、シェルフのヘリをカギ状に一体成形してコストを抑えている。親会社トヨタも一目置く、ダイハツ流コストダウンのひとつ。
【ドライブフィール】 運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
圧縮比を10.0から11.0に上げ、ピークパワー発生回転数を引き上げることで、ノーマル1.3リッターより20psアップの110ps/7000rpmを発生する。実際の走行時には、吸気側連続可変バルブタイミング機構「DVVT」の恩恵もあってか、フラットかつ厚いトルクが印象的。出足がいい一方、回してもさして盛り上がらない。AT車には、ステアシフトが装備されるが、シフターでギアを変える方が確かだし、楽。通常は「D」レンジに入れっぱなしで、なんら不満はない。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
15mm車高を落とし、前後ダンパーに専用チューンを施した足まわり。ノーマルモデル同様、横方向の抵抗を低減したオフセットスプリングが採用される。アンチロールバーは、フロントのものが大径化され、また、リアにも追加された。乗り心地は悪くないが、「スポーティ」を謳うにはダンピングがもう一歩足りない。峠ではアオって、アゴを出しがち。15%クイックなステアリングギアも「ツーリング」の特徴のひとつだが、肝心の接地感や、路面からの情報伝達がいまひとつ。“シャープなハンドリング”とはいいかねる。名前の通り、高速巡航の方が得意。
(写真=河野敦樹)
【テストデータ】
報告者:webCG青木禎之
テスト日:2002年1月28日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2001年型
テスト車の走行距離:1754km
タイヤ:(前)175/60R14 79H/(後)同じ
オプション装備:サイドエアバッグ(3.5万円)/床下防錆仕様(0.2万円)/ナビゲーションシステム(15.5万円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3):高速道路(6):山岳路(1)
テスト距離:624.7km
使用燃料:57.8リッター
参考燃費:10.8km/リッター

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
-
ヤマハ・トレーサー9 GT+ Y-AMT ABS(6AT)【レビュー】 2025.9.20 日本のモーターサイクルのなかでも、屈指のハイテクマシンである「ヤマハ・トレーサー9 GT+ Y-AMT」に試乗。高度な運転支援システムに、電子制御トランスミッション「Y-AMT」まで備えた先進のスポーツツアラーは、ライダーを旅へといざなう一台に仕上がっていた。
-
プジョー408 GTハイブリッド(FF/6AT)【試乗記】 2025.9.19 プジョーのクーペSUV「408」に1.2リッター直3ターボエンジンを核とするマイルドハイブリッド車(MHEV)が追加された。ステランティスが搭載を推進する最新のパワーユニットと、スタイリッシュなフレンチクロスオーバーが織りなす走りを確かめた。
-
アウディSQ6 e-tron(4WD)【試乗記】 2025.9.17 最高出力517PSの、電気で走るハイパフォーマンスSUV「アウディSQ6 e-tron」に試乗。電気自動車(BEV)版のアウディSモデルは、どのようなマシンに仕上がっており、また既存のSとはどう違うのか? 電動時代の高性能スポーツモデルの在り方に思いをはせた。
-
トヨタ・ハリアーZ“レザーパッケージ・ナイトシェード”(4WD/CVT)【試乗記】 2025.9.16 人気SUVの「トヨタ・ハリアー」が改良でさらなる進化を遂げた。そもそも人気なのにライバル車との差を広げようというのだから、その貪欲さにはまことに頭が下がる思いだ。それはともかく特別仕様車「Z“レザーパッケージ・ナイトシェード”」を試す。
-
BMW M235 xDriveグランクーペ(4WD/7AT)【試乗記】 2025.9.15 フルモデルチェンジによってF74の開発コードを得た新型「BMW 2シリーズ グランクーペ」。ラインナップのなかでハイパフォーマンスモデルに位置づけられる「M235 xDrive」を郊外に連れ出し、アップデートされた第2世代の仕上がりと、その走りを確かめた。
-
NEW
“いいシート”はどう選べばいい?
2025.9.23あの多田哲哉のクルマQ&A運転している間、座り続けることになるシートは、ドライバーの快適性や操縦性を左右する重要な装備のひとつ。では“いいシート”を選ぶにはどうしたらいいのか? 自身がその開発に苦労したという、元トヨタの多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
マクラーレン750Sスパイダー(MR/7AT)/アルトゥーラ(MR/8AT)/GTS(MR/7AT)【試乗記】
2025.9.23試乗記晩夏の軽井沢でマクラーレンの高性能スポーツモデル「750S」「アルトゥーラ」「GTS」に一挙試乗。乗ればキャラクターの違いがわかる、ていねいなつくり分けに感嘆するとともに、変革の時を迎えたブランドの未来に思いをはせた。 -
プジョー3008 GTアルカンターラパッケージ ハイブリッド(FF/6AT)【試乗記】
2025.9.22試乗記世界130カ国で累計132万台を売り上げたプジョーのベストセラーSUV「3008」がフルモデルチェンジ。見た目はキープコンセプトながら、シャシーやパワートレインが刷新され、採用技術のほぼすべてが新しい。その進化した走りやいかに。 -
第319回:かわいい奥さんを泣かせるな
2025.9.22カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。夜の首都高で「BMW M235 xDriveグランクーペ」に試乗した。ビシッと安定したその走りは、いかにもな“BMWらしさ”に満ちていた。これはひょっとするとカーマニア憧れの「R32 GT-R」を超えている? -
世界中で人気上昇中! 名車を生かしたクルマ趣味「レストモッド」の今を知る
2025.9.22デイリーコラム名車として知られるクラシックカーを、現代的に進化させつつ再生する「レストモッド」。それが今、世界的に流行しているのはなぜか? アメリカの自動車イベントで盛況を目にした西川 淳が、思いを語る。 -
ランボルギーニ・ウルスSE(前編)
2025.9.21思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「ランボルギーニ・ウルスSE」に試乗。時代の要請を受け、ブランド史上最大のヒットモデルをプラグインハイブリッド車に仕立て直した最新モデルだ。箱根のワインディングロードでの印象を聞いた。